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王子、うるさい!  作者: 大木戸いずみ
37/117

37.

 色々と案内されて分かったけど、魔法学園はとてつもなく広い。

 こんなとこ一人で入っていたら完全に迷子になっていただろうな。それぐらい迷路みたいな造りをしている。

 道理でルイスがヒロインに会えないわけだ。

「こっから先は平民の教室がある」

 王子はそう言って、長い渡り廊下を指差す。彼の指をたどり、奥の校舎の方へと目を向ける。

 一体ここにはいくつ校舎があるんだよ。

「行きたいか?」

「え? なんで?」

「そういう顔をしてたから」

 ルイスがあそこにいるのかなって考えていたとは言えない。

「いえ、他の場所へ行きましょう」

 そう言って、出来るだけ早くその場を離れる。

 こんなところでルイスに出くわして、昨日の話をされたら大変だ。


「王子~、ここでは魔法以外のことも学ぶんですか?」

「ああ、まぁ、経済のこととか色々学ぶな」

「楽しいですか?」

「なんだ、学びたいのか?」

『キャシーが学問に興味あるとは思えない』

 おい。酷いよ、王子。

 まぁ、実際そうだから言い返せないけど。というか、実際に声に出していない時点で言い返せないけど。

「いえ、聞いてみただけです」

『一体なんなんだ。こいつの考えていることはよく分からない』

 その点、王子の考えていることはよく分かりますよ。なんたって、心の声が聞こえていますからね。


「アダム! 丁度いい所にいた!」

 赤い髪を揺らしながらエディがこっちの方へ走って来る。

 エディだけ? 攻略対象者だからって、皆がいつも一緒にいるとは限らないんだ。

「やっぱり、キャシーもいたんだ」

 意味が分からず軽く首を傾げる。それに気付き、エディは説明し始める。

「キャシー様を見たって、学園内でかなり噂になっていたんだよ。しかも横には別に嫌がっている様子もない王子がいるってな」

 エディ、割と失礼だな。

『……確かに、前までは一緒にいるのも嫌だったが、今は会話していて楽しい』

 王子、あんたも失礼だね。

「私も誰かに女として見てもらいたいわ」

 思わず本音をそのまま声に出てしまった。

 二人ともきょとんとした表情をして私を見つめる。

 やってしまった。どうにか数秒前に戻れないかな。……無理か。

「けど、キャシーはアダムの婚約者じゃないか」

 何故かエディにフォローされる。

 ヘレナとアダムが相思相愛なの知っててよくその台詞が言えたな。

「何言ってんの、王子にはヘレナがいるでしょ」

「そういや、俺になんの用事だ?」

 私の言葉を無視するように王子はエディに話しかける。

「あ、ああ、ここをチェックして欲しくて」

 エディが王子に書類を渡す。

 王子は確かこの学園の生徒会長だったっけ? 本当に完璧なんだな……。

 私、本当にいつかこの人の役に立てることなんて出来るのかな。急に自信がなくなってきたわ。

 彼が書類に目を通している間、私は何をすればいいのだろう。

 ちょっとその辺、ぶらついてもいいかな。そんなことを思いながら私は足を進めた。

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