28.新たな出会い
「あんた、貴族のお嬢様か? ……いや、でも馬にまたがってるしな」
「貴族に見える?」
「ああ、まぁ。ヴァイオリン持ってるし、何よりその恰好が」
私の服をじろじろ見ながら彼は答える。
まぁ、確かにドレスを着ている平民なんていないか。
町に行くのなら、出来るだけ目立ちたくない。平民に紛れて楽しみたいから、着替えないと……どこで?
平民の友達なんて一人もいないし、勿論私も普通の服を持っていない。
この世界には爵位的なものはない。そんなものよりももっと単純で分かりやすい。上級貴族、中級貴族、下級貴族の三つに分かれている。まぁ、それぞれの貴族の中でもヒエラルキー的なものはあるけど、今はそれを置いておこう。
私の家は上級貴族。その中でも割と上の方だ。王子の婚約者になるぐらいだからね。
「私、普通の服に着替えたい」
「ああ、じゃあ、妹の服を使えばいい」
「……そう言えば、名前はなんていうの? 私の名前はキャシー。ただのキャシー」
「家の名前は言いたくないのか、別にいいけど。俺は ルイス・レオモンド」
ルイス・レオモンド……。どっかで聞いたような。
あっ! あああぁぁ! 町人その1だ! 彼の家に行って、ヒロインが妹の病気を治すんだ。勿論魔法で。ヒロインが得意な治癒魔法で。
それから、その噂が広がり、色々な人の病気とか直して、町ではヘレナ・パーカーが有名になって、皆から尊敬されるんだ。彼女の人柄にも皆惚れて、そんな子を虐めている私に町人からも冷たくされる。
それに、ルイスはキャシーに怒鳴るんだよね、「もう二度と町に来るな」って。
ルイス自体が町の中心的な人物で、子どもに好かれているヒーロー的存在だから……。
つまり、私にとったら滅茶苦茶厄介な人間だ。
「どうかしたのか?」
「なんで、あんたに出会うかなああぁぁ」
「失礼だな。俺、お前とどっかで会ったことあるか?」
「今日が初めて」
だよな、とルイスは眉間に皺を寄せながら相槌を打つ。
一体、なんで私は町に来ないかって言われたんだろう。ゲームと正反対の台詞だ。
「俺の妹さ、実は病気なんだ」
知ってます。
「なんの?」
「それが原因不明なんだ。……それで、お前のそのヴァイオリンを聞かせてあげて欲しいんだ」
これでようやく疑問が解決した。
「お金なら払う。キャシーにとったら少ないかもしれないけど」
「いや、別にいいよ。お金に困ってないし」
我ながら思う、一言余計だなって。
「いいのか?」
「逆に断る理由が見つからないしね」
「お前、良い奴だな」
残念なことに、私は後に君が惚れる女の子を虐めていた女です。
そんな風に言われると心が痛くなる。




