24.
ああ、なんだか頭が痛い。……寝不足が続いたせいかな。
足元がふらつき、視界が歪む。
「やばッ」
後、まだ大広間の掃除が残っている。それから、夕食のテーブルの準備と……なんだっけ。
頭が上手く回転しない。睡眠は大事なんだと思い知らされる。
寝る子は育つって言葉本当だったんだ。私が身をもって検証したよ。寝る子は確かに育つわ。寝ないと、思考力が低下する。
けど、後少し。まだ頑張れる。最後まで出来たって王子に胸張って言いたいもんね。
よろめきながら大広間の床をほうきで掃除する。
「大丈夫か?」
なんか王子の声が聞こえる。……幻聴?
「お前ふらふらだぞ」
その言葉と同時に私はふっと一瞬意識を失った。
痛ッ、って床に倒れて言うつもりだったのに、どこも痛くない。痛覚により目が覚めてまた働こうとする計画が失敗だ。
『顔色が悪い』
私はゆっくり目を開く。
ちっっか!! 顔ちっか!
王子の顔があまりにも近すぎる驚きで逆に目が覚めるわ。
てか、いつのまにこんなにホールドされてるんだ、私。
倒れる前に支えてくるとか、本当の王子様みたいだ。……いや、本当の王子か。
「えっと、有難うございます。掃除の続きをしたいので、離してもらってもいいですか?」
私の言葉に王子は眉をひそめる。
『こいつは馬鹿なのか? それともよっぽど掃除が好きなのか?』
どっちも否定させて欲しい。
女子高校生が掃除大好きとかいうハッシュタグ使ってたら気持ち悪いだろ。まぁ、一概には言えないけど。
「私ならもう大丈夫なので」
「だめだ」
「ヴァイオリン分働かせてください。てか、働きます」
「言うことを聞け」
「嫌です」
「お前」
王子が私をギッと睨む。
うわ、怖っ。聞き分けない子どもだと思われてそう。
「本当に大丈夫なんで離してください」
『可愛くないやつだな』
分かってるわい!
てか、今王子に甘えて私になんのメリットがあるのよ。
『そう思ったら、ヘレナはいつも素直だな』
他の女と比べんな、王子!
声に出してなくても心の声が聞こえてんだよ。……そう思ったら、王子まじで気の毒。
悪役令嬢なんかに自分の考えていること全部バレてるとか絶対に嫌だ。
「放っておけない」
そう言って、私を両手で軽々と抱き上げる。
何これ、お姫様抱っこ!? 生まれて初めてされたわ。滅茶苦茶恥ずかし過ぎない?
罰ゲームだ。
王子がそのまま余裕そうな顔で足を進める。
暴れても意味なさそうだし、これは大人しく我慢するしかなさそうだ。
「あの、素直になってもいいですか?」
「何だ?」
「これ、超嫌ですね」
超を強調しながらそう言った。王子は目を丸くする。
『……そんなこと言われたのは初めてだな』
「散々ヘレナに嫌がらせしてきたんだ。これぐらい我慢しろ」
「その言い方はずるくないですか?」
「もう黙れ」
王子は静かにそう言って、私を部屋まで運んでくれた。




