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王子、うるさい!  作者: 大木戸いずみ
14/117

14.

「お父様!」

 バンッと音をたてて父の部屋の扉を開ける。彼はその音にびっくりしてビクッと反応する。

「キャシー? そんなに慌てて一体どうしたんだい?」

「私、ヴァイオリンが欲しいです」

 息を切らしながら、力強い目で父を見る。

 父は私に甘いから何でもすぐに買い与える、というのを狙って父に頼み事をする。母なら私が絶対に続くわけないと反対するに決まっているからだ。

 彼は目を見開いて私を見た後に、すぐに真剣な表情になった。

「……ダメだ」

 まじかよ。まさかの父が反対するなんて。

 何か事情があるのとか? 今までそんな話一言も聞いたことがないけど。

「何故です?」

「ヴァイオリンだけはだめだ」

 さっきより強い口調で父はそう言った。

 もしかして、父も私と同様何かヴァイオリンにトラウマでも抱えてるの?

「他に何でも買ってあげるよ。フルートでもピアノでも」

「ピアノは家にあるでしょ」

「じゃあ、何が良い?」

「ヴァイオリン」

 これだけはやっぱり譲れない。

「それはだめだ」

「だめならだめな理由を教えてください!」

「いい加減にしなさい! だめだと言ったらだめだ! 今までキャシーが欲しいと言って買わなかったものはないだろ! 今回だけは諦めてくれ!」

 父に初めて大声で怒鳴られた。

 一体どんなトラウマがあるんだよ。両親をヴァイオリンで殺されたとか?

 ……祖父母は健在だ。

「分かりました。自分でお金を貯めて買います」

 そう言い捨てて部屋を出た。

 何ともまた我儘な悪役令嬢に戻ったような気がするけど、しょうがないよね。

 父よ、すまん。

 

 ソファに座りながら色々な職業の本を机に並べる。

 お金貯めるなんて大口叩いちゃったけど、どうやってお金稼げばいいんだろう。

 お小遣いをこっそりと貯めるとかだと、自分で買ったことにならないし。これから父も私にお小遣いはくれないような気もする……。

 バイトしたい!! 

 高校の頃にコンビニとラーメン屋でバイトしたことあるけど、この世界じゃそんなものないもんね。

 そうだ、どっかの貴族のメイドとして働こうかな。……母にバレたら死刑確定だ。

 なんか求人募集してる仕事ないの!?


「お嬢様、アダム様がお見えになっています」

 職業の本をペラペラと眺めていると、エミーが突然私の前に現れた。

 ……なんで、アダム王子? 私の家にはもう用がないんじゃないの?

 そもそも今日はうちでお茶会の日でもない。

「えっと、会わないとだめ?」

「アダム様はお嬢様の婚約者ですから、お会いになった方がよろしいかと」

 もう、今は王子に構っている暇はないのに! 

 とっとと用事を済ませて帰ってもらおう。それから、稼ぐ方法をもう一度考え直そう。

「今行くわ」

 深く息を吐き、背筋を伸ばして王子の元へ足を進めた。

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