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なんてタイミングが良いのだろう。
噂をすれば登場なんて、ヘレナのヒロインパワーは強力過ぎない?
私とオスカーは駆け寄って来るヘレナを見つめる。無邪気なヘレナが攻略対象達に人気があるのがよく分かる。
あんな風に笑顔で来られたらイチコロだよね~。
彼女はサラサラの金髪を揺らしながら私達の前に立つ。オスカーがキャシーを見つめる目にはもう恋愛感情はなかった。
「キャシー! どうしてこんなところにいるの? いや、いてほしくないって意味じゃないよ! むしろずっといて欲しいぐらいだし!」
ヘレナが一気に話す。
よく息継ぎしないでそんなに喋れるな……。どうしてヒロインっていつでも元気なんだろう。
「いつも元気だね」
「キャシーに会ったからだよ!」
アイドルの発言じゃん!
『私もキャシーみたいに黒髪にしようかな~』
え、ヒロインのアイデンティティは?
ヘレナには金髪が似合っている。というか、普通立場的に私がヘレナの金髪を見て憧れるんだよ。
「ヘレナ一人?」
「私だけじゃ不満なの?」
私の質問に彼女は不服そうな表情を浮かべる。
「うん」
「えええ!! 嘘!!」
「嘘だよ」
ヘレナの大声に内心驚きながら、落ち着いた声でそう言った。
「君たち、仲良いんだね」
オスカーの言葉にヘレナは満面の笑みで「そう見える?」と彼の方に振り向く。
「私達最強に仲良く見える?」
ヘレナの圧力に負けて、少し困惑した表情を浮かべながらオスカーは「え、う、うん」と答える。
少し前までお互い顔を合わせるだけで空気が悪くなっていたのに、凄い違いだ。……ヘレナのこの根っから明るい性格に感謝だ。
私は両手でヘレナに向かって拝む。
「え、なに? なんで私拝まれてるの?」
「さぁ?」とオスカーも首を傾げる。
私も顔を上げて「なんでだろうね」と、不思議とこの環境が居心地よく、心の底から笑みがこぼれた。
『やっばい、可愛い!! 無理! 眼福!』
ヘレナは右手で口を覆いながら、目をキラキラさせている。
「まじか」と、オスカーも少し動揺している。
私は攻略対象者じゃないけど、ヘレナにこんなに好かれちゃって大丈夫?
『私がこの顔に拝みたいぐらいだよ!』
いや、拝み合うのはやめとこうね。
「なんかキャシーって本当に丸くなったよな」
え、と私は両手でお腹を反射的にお腹を抑える。
「いや、太ったんじゃなくて、性格の方」
「あ、そっちか!」
「なんでそっちだと思わないんだよ」
「私もキャシーがぽっちゃりしたって意味だと思ったよ。太ってもキャシーは可愛いけどね!」
ヘレナは私に向かってウインクをする。
なにそのサービス精神! ヒロインからウインク貰っちゃった。
「君たち二人ともおかしいよ」
げっそりした様子でオスカーは頭を抱えながらそう呟いた。




