114 オスカーの恋の行方
これ以上魔法学園にいても意味がないので、校門へと足を進めた。
……なんでわざわざ私を魔法学園に呼んだのだろう。直接家に来て「俺が学園長、よろしくな!」って言いに来るだけで良かったのに。
あ、でも作戦の話もしないといけなかったのか。
確かにディランの仕事は私が想像する以上に忙しいだろうから、暇な私を呼んだ方が効率が良かったんだろうけど。
それにしても……、囮作戦って何? 鼠を捕まえる時のチーズの役割的な存在だよね?
詳しい内容を全然聞かなかったけど、私、本当にヴァイオリン演奏するだけでオッケー?
踊りながらパフォーマンスしてくれって言われたらどうしよう……。ディランなら言いかねないよね。
もしそんな無茶ぶりされたら、ソーラン節でも踊ってやる!
あ、でもあれっていきなり踊ったら足が筋肉痛になるから、やっぱり盆踊りにしておこう。
ディランの作戦について眉間に皺を寄せながら必死に考えており、後ろから呼びかけられている声に全く気付かなかった。
「キャシー」
肩を誰かにポンと叩かれる。振り向くと、息を切らしたオスカーがいた。
「ずっと呼んでいたのに、なんで気付かないんだよ~」と、口を少し尖らせる。
やっぱり少しチャラい。けど、チャラいのはモテるんだよね。
オスカーは女たらしって皆に知られていても、人気がある。それぐらい人当たりが良いのだろう。
「ごめん、考えごとしてたら聴覚死んでた」
「どんな仕組みなんだよ」
「……どうしたの?」
「それはこっちの台詞だ」
オスカーはどこか呆れた様子で私を見つめる。なんだか久しぶりに会った気がする。
……学園長に呼び出されたことは言わない方が良いよね。
「迷子になって……」
「迷子で魔法学園に来るなんてありえないだろ」
「だよね~」と、笑顔で返す。
私がここにいることに対して、彼は深く言及してこなかった。
出会ったのがオスカーで良かったよ。オスカー万歳!
「そう言えば、ヘレナとはどうなったの?」
話題を逸らす為にそう聞いたが、実際彼らの関係がどうなったのか気になっていた。
彼は少し考えて、口を開いた。
「振られた」
その笑顔に私は「やっぱりか~」と彼の方をポンポンと叩き慰める。
我ながら素早い反応だったと思う。
前世なんて恋愛して失恋しての繰り返しだったな……。
「約束通りその胸で泣かせてくれる?」
「思ったより落ち込んでないから無理」と、私は口角を上げながら答える。
チェッとオスカーはわざとらしい舌打ちをする。
彼の表情は本当に振られたとは思えないぐらいケロッとしていた。今まで沢山の女の子に囲まれてきた中で本気で好きになったヘレナに対して失恋したんだよね?
失恋は時間が解決してくれるって言うけど、そんなに時間経ってないよ。
メンタル、コンクリート製?




