108 ジノ
朝遅くに目が覚め、ジノの様子を見に彼がいる部屋へと向かった。
昨日は今までの人生で一番体力を使ったと言っても過言ではないぐらい疲れた。王子が家を出てからさっきまでずっと眠っていた。
冬眠する勢いで寝ていた。熊もビックリだ。
思い切りあくびをしながら廊下を歩く。足を進めながら段々目が冴えてくる。
あまりにも非日常的だった昨日のことを思い出す。
まるで映画の中に入り込んだみたいだった。あんな感じなんだね、ハリウッドって。
もう二度と暴力団には関わりたくないが、あの山賊一家にはまた会いに行こっと。
新しい友達が出来た! ズッ友だ!
……貴族が山賊を友達って呼んでいいのか分からないけど、友達に身分は関係ないから良いよね。
意図してじゃないけれど、私ってヘレナを除けば男の友達しかいない。
リリーは友達って言うより妹だし。
女の子の友達欲しいな。気軽に恋愛相談とかしたいもん。
もっと積極的にお茶会に参加した方がいいのかな?
皆きっと以前のキャシーしか知らないから、来てほしくないだろうけど。
それでも、私は恋バナ友達が欲しい。レッツゴーお茶会!
たまには、最近、婚約者とどうなのよ~みたいな会話をしたい。
……もう最近私の中では婚約者は彼氏と一緒の感覚だ。ということは、王子は元カレ?
もう一度婚約したら、復縁したことになるんだよね。いや、でも前回は別に両想いってわけじゃない。こういうのってなんて言うんだろう。
一人で悶々と歩いていると、いつの間にかジノの部屋の前へと来ていた。
彼の部屋からエミーが出てくる。彼女は私を見るなり「おはようございます」とお辞儀をする。
「おはよう」
「よく眠れましたか?」
「死人のように眠れたわ」
「本当に死ななくて良かったです」
「エミー」と、思わず抱きついてしまう。
キャシーって言って抱き返してくれてもいいのに、彼女は無反応だ。どんな表情をしているのか私からは見えない。
ツンデレってことにしておこう! 自分に都合の悪いことは考えない!
「……ジノ様はもう起きていらっしゃいます。どうぞ」
エミーは私の腕を離して、ジノの部屋を開けようとする。
私はエミーに従って、部屋の中へ入る。気を遣ってくれたのか、彼女は部屋の外で待機してくれるようだった。
ジノはベッドの上で座りながら植物図鑑を読んでいた。私が入って来たことに気付き、図鑑をベッドの上に置く。
彼の姿は、体の節々と頭を包帯で巻かれており痛々しかった。
こんな小さな子に容赦なく暴力を振るう大人は地獄を見ればいい。
もうすでに王子達が暴力団をコテンパンにやっつけてくれたと分かっていても、腸が煮えくり返る。
「元気? じゃないよね」
「元気だよ。まだちょっと痛いけど、なんとか歩けるし……」
ゆっくりとジノは言葉を発する。
こういう時ってなんて声を掛けてあげるのが一番良いんだろう。
何か言わなきゃと思い、とりあえず思いつくままに声を出す。
「歩けるなら、すぐに仕事復帰できるね!」
そう言ってから一瞬で後悔した。
ジノの好きな植物に触れ合うことが出来るって言いたかったのに、頭の中が混乱して物凄い馬鹿なことを言ってしまった。
もっとましな励まし方があったでしょ! キャシーの馬鹿!
こんにちは、大木戸いずみです!
皆様、いつも読んでいただき本当にありがとうございます(;_:)
誠に勝手ながら、題名を短くした方が作品名呼びやすいなって思ってしまい『王子、うるさい!』に変更いたしました。
突然で本当に申し訳ございません。
どうかよろしくお願い致します(>_<)




