表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子、うるさい!  作者: 大木戸いずみ
10/117

10.

「私を認めてくれる素敵な人達と一緒に居れて幸せだもの」

『純粋無垢で……可愛い』

 メロメロだ。ああ、世の男はこれにやられるわけか。

 周りの貴族たちもみんなヘレナを見る目がトロンとしている。好意、憧れ、尊敬などの眼差しを彼女に向ける。

「尼さんか何かなの?」

「へ?」

 屁と尼って字は若干にてるけどさ。……こんなこと言ったら尼さんに八つ裂きにされる。黙ろう。

「なんて優しい心の持ち主なんだって思って」

『何故だろう、棒読みに感じるのは俺だけか?』

 勘のいい王子は嫌いだよ。

 私のこの罪を謝罪だけで許してくれるなんてまるで聖人様かなと思ってしまう。だって、ヘレナは私と同級生だよ。十六歳の子どもだよ。

 高校一年生なんて、もっとギンギンに自己中心的じゃない? 

 私が太陽だ、世界の中心だ、オンリーワンじゃなくてナンバーワンなんて思っている人間山ほどいるよ。

 ヘレナは死にかけのおばあさんか何かなの? 悟り開いてるの?

「あの、なんか別に罵ってくれてもいいよ? 私に言いたいこと溜まってるだろうし」

 私がそう言うと、ヘレナはきょとんして顔をする。

 なんじゃ、その顔は。

 ここで面と向かって何か言えないってことは……実はこの世界にもSNSが存在していて、裏垢とかで私の悪口呟きまくっているとか?

 可愛くて純粋でアイドルみたいな子ほど闇が深いって言うもんね。

 ……って私、ひねくれ過ぎか。ここは乙女ゲームだ。ヒロインは本当に純粋無垢の聖女みたいな存在なんだろう。

『自ら罵って欲しいとか、マゾなのか?』

 マゾじゃねえし、ただあまりにも簡単に許してもらえて疑ってしまうんだし。

「えっと、じゃあ、私と友達になって下さらない?」

 あ、無理だ。私こういうタイプの子と友達になれん。

 今の今まで自分のことを虐めてきた人間に許すどころか友達になりたいなんて病院に行った方が良い。父に頼んで良い脳外科医を紹介するよ。

「えっと」

「遠慮せずに友達になりなよ」

 女たらしのオスカーがニヤッと笑いながらそう言う。

 その笑みは何か企んでいる笑みなのかそうでないのか、よく分からない。

 というか、遠慮なんて一ミリもしていない。出来るだけヒロインとは関わりたくない。

 ヘレナはそんな私の心にはお構いなしに手をすっと差し出す。

 ……握手しろってこと?

 なんだろう、この周りからの期待の眼差しは……。こういう圧力に押されると、応えるしかない。

「よろしくお願いします」

 そう言って、私は彼女の手を取った。それと同時にヘレナは嬉しそうに笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 小公女セーラの最終回を思い出したw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ