第一話 転生
「パンパパーン
おめでとうございまーす!!」
と陽気な声とともに目が覚めると俺は真っ白で果ての見えない世界にいた。
目の前には嬉しそうに微笑みながらこちらを見ている美しい女性がいた。明るい金髪のロングヘアーに芸術品のように整った顔立ちで、白いドレスに見事にマッチしている。
「ふふっ、ありがとう」
!「 驚いた。思考が読みとれるのか」
「まあ、私は異世界の神だからね」
なるほど。とするとこの状況はもしかすると俗にいう異世界転生というものか?
「そのとおり!私は世界セラの創造神メルセレーナ。君には転生してセラに来てもらうことになったわ。」
「質問、してもいいか?」
状況はわかったがまだまだ分からないことが多すぎる。
「ええ、もちろんです」
よし。
「なら、最初の質問だ。なぜ俺が転生することになった?」
「地球の神と話してね。面白そうってことになったんだよ。」
なるほど。神の気まぐれってやつか。
「まあ、そうだね。巻き込んで申し訳ないとは思っているよ」
とさほど思ってなさそうに言う。
「ひどっ」
「別に怒ってないしいいよ。それより次の質問だ。拒否は出来るのか?」
「出来ないよ。厳密には出来るけど元の世界には戻れない。そうなるとここで魂のまま彷徨うことになるけど、嫌でしょ?」
「嫌だな。なるほど選択肢な残されてないってわけだ」
「そのかわり!度が過ぎたものは無理だけどチート、記憶ありで転生させてあげるから、それで手打ちってことで...ね?」
と上目遣いで聞いてくる。
「別に転生自体は嫌じゃないんでな。むしろ元の世界では少し飽きてきていたんだよ。」
ていうか記憶なしで転生とか説明知らないじゃねーか
「そう…ならよかった」
「さて、次だ。セタについて教えてくれ」
「わかったわ。セタはまあ、異世界のイメージ通りのスキルあり、魔法ありの魔物がいる世界よ。スキルは一定の動作を行うと得られるものと才能の高さや神からの恩恵で最初から持っているものもいるわね。あと、エクストラスキルっていう超希少かつ強力なスキルがあって、神からもらうスキルは全部それね。エクストラスキル以外のスキルはレベルがあってレベル10まで上げると上位スキルへと進化するようになってるわ」
なるほど。努力や才能、神の存在が目に見えるわけか。
「そうね。魔法を使うのに必要な魔力値やスキルはステータスと念じると見えるようにしといてあげるわ。魔力は子供の時に使うと伸びやすいわね。本当は魔道具を通さないと見えないからあまり知られてないんだけど。」
おおっ!!それはありがたい!子供のときは喋れないかもしれないしな!
「もう質問はいいのかしら?」
おっと、そうだった。
「亜人とか、魔族、魔王とかはいないのか?」
「いるわよ。亜人も魔族もそれを統べる魔王も。亜人と呼ばれる種族にはエルフや獣人、ドワーフなどがいるわね。魔族や魔王も昔は人族とよく対立してたけど少し前に協定で相互不可侵を決めてからは大人しくなってるわよ」
こんなものでいいだろう。あとはわからない事があれば現地で聞けばいい。
「そう。わかったわ。じゃあスキルをプレゼントするから好きなの選んで!強くしすぎるのは面白くないから4つまでね!」
そう言って目の前に光る窓のようなものを出現させる。俺のリアクションが薄いことに不満そうな顔をしていたが、ゲームのようでそこまで驚けないのだ。すまん。
まだ不満そうだ。
スキルの数はかなり量があるのでとりあえずスクロールして最後まで見る。
目に止まったのはまず目に止まったのは「強靭な体」。説明には病気や怪我をしにくくなり、「物理耐性」、「魔法耐性」のスキルを獲得する。また身体能力に補正がつく。病気にならないとか分かりやすくチートだろう。確実に必須だ。
再びスクロールしていき、「超成長」の説明を見る。これは魔力、身体能力の成長、スキルの獲得やレベルアップに大幅に補正がかかるというものらしい。必須というほどではないが保留だろうか。
ーー他にも神の加護が受けやすくなる「善行の道」やトラブルや女性との出会いが多くなる「主人公補正」などがあるが微妙だ。というか「主人公補正」とか完全に地雷だろ...アホしか選ばねえぞ。
最終的に「強靭な体」、「超成長」、「限界超越」、最後に「主人公補正」を選....ばずに、何気に気になっていた「昇華」というスキルを選んだ。
「限界超越」は名前のとおり、人の成長限界を無視して、成長し続けるというスキルだ。「超成長」と非常に相性がいい。また、脳の思考速度や身体能力の限界も一時的に越えることも出来るらしい。
思考速度が上がると周りの世界が遅く感じたりするんだろうか...楽しみだ。
「昇華」は少し特殊で、任意のスキルを選択し、統合して上位のスキルやエクストラスキルに昇華させるというスキルだ。組み合わせによっては新たなスキルを造り出すことも可能らしく、夢が広がる。
「決まったようね。随分と速いけど、それでいいの?」
「ああ、とりあえず最強を目指してみることにしたんでな。努力することが前提になるがこれが俺に考えられる最良の組み合わせだ。」
「わかったわ。じゃあ最後に私の加護を授けるわね。どんな効果があるかは転生してからのお楽しみね!」
「ああ、じゃあ頼む。」
ちょっと緊張するな...
「大丈夫よ。じゃあね。久しぶりに人と話せて楽しかったわ。」
笑いながら言う。
俺の魂が光の粒子となって消えかける。
「貴方の新たな人生に幸多からんことを」
異世界転生定番のセリフが聞こえたと同時くらいに俺の視界は暗転した。
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「ふぅ、無事に転生出来たわ。」
地球から来た魂をセタに転生させた後、女神は一人、安堵の息を吐いた。
地球の神に手違いで殺してしまった青年を転生させてやってくれと頼まれてやったことだが、本当は異世界転生は大きなリスクを伴う。
あの青年の魂がものすっごーく強靭なのだ。
神の威厳のために青年には嘘をついて誤魔化してしまったが、転生を喜んでくれてよかった。
さて、この青年のゆく末をゆっくりと見守ることにしよう。
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