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第78話 春木に勉強教えましょう

あけましておめでとうございます!(遅

今年もよろしくおねがいします

「兄ちゃん、教えて」

「いいぞー」


 休日。いつものようにソファーに寝転がって本を読んでいると、横で宿題をしていた春木に呼ばれた。


「ここなんだけど」

「ん、どれどれ」


 起き上がって春木の肩に手を置くと、頭の上から覗き込むように問題を見た。

 ふむふむ、数学か。得意ではないが、去年勉強した範囲なので問題なく教えられそうだ。


「……何でこうなるか兄ちゃんなら分かるかなと」

「うん。大丈夫そうだ」

「そう……えっと、兄ちゃん近くない? その、当たってるんだけど」

「気にするな」


 最初は何かを言おうとしつつも我慢していたが、暫くすると我慢出来なくなったのか言ってきた。

 体勢的に仕方なく胸を春木の後頭部に押し付ける様になっているが、俺の知った事ではない。

 動くの面倒だし。


「無理だよ! 集中出来ないからあっち座って!」

「えぇ……」

「いいから!」

「はいはい」


 春木が指を指したのはテーブルを挟んで反対側だった。

 チッ、仕方ないな。渋々春木から離れて、向かい合うように座った。


「はぁ……兄ちゃんは早く女の子の自覚を持ってほしいな……」

「で、ここだっけ?」

「……そう。この部分が分かんない」

「えっとだな。ここは」

「うんうん――っ!」


 問題を見ていた春木の目線が上がってくる途中で一点を見つめ硬直する。そして、勢いよく顔を背けた。

 春木の行動を不思議に思い視線を追うと、胸。

 問題をよく見ようと前のめりになっていた事でシャツの首元から谷間でも見えていたようだ。


「ここは公式を使う問題で」

「ちょっと!? 視線に気づいたなら隠すなり姿勢を変えるなりして!?」


 別に春木になら普段から見られてるしいいやと説明を再開しようとすると、止められた。しかも律儀にこっちを見ないようにしながら。


「お前普段から見てるじゃん」

「言い方ァ! 兄ちゃんが無防備な格好してるだけだからね!?」

「でも偶にこっち見てるよな?」

「うぐっ、それは……そうかもだけど……」

「じゃあ変えなくてよし」

「……分かった。俺が見ないようにすればいいだけだもんね……」


 はぁ……と心底嫌な事を飲み込むような溜息をつかれた。


――――――――――


「終わった!」


 問題の解き方を教えた後、そのままテーブルに頬杖を立てて春木が宿題を解く姿を眺めていると一時間ほどが経っていた。

 背筋をピンと立てて真剣に勉強する姿が凄く様になっていてイケメンってズルいなと思った。


「頑張ったな。えらいえらい」

「!? 兄ちゃん、俺そんな事されるような歳じゃない……」


 春木の頭に手を伸ばし、わしゃわしゃと思いっきり撫でる。

 頑張った事は褒めないとな。褒めて伸ばすだ。


「俺より歳とってから言え」

「兄ちゃんより年上になる事はないよ」


 こら。何言ってんだこの人はみたいな目で見るな。そんな事は分かってるわ。


「犬みたいだよな」

「へ?」

「撫で心地が」

「それは喜んでいいやつ……?」


 撫でながら思った事を口に出す。

 基本的には従順な所とか、感情が顔に出やすい所とかも犬っぽい。


「どうだろうな。春木は犬っぽいって言われて嬉しいか?」

「複雑」

「ふーん。……お手」


 試しに手を出してみると、唖然とした様子でこっちを見てきた。俺の手と顔を視線が行ったり来たりしている。


「にっ、兄ちゃん?」

「お手」

「ええ……?」


 それでも構わず手を出していると、嫌そうにしながら手を重ねてきた。

 上に重ねられた春木の手によって俺の手が完全に隠れる。


「手でっか」

「まあ、身長もデカいですし?」

「それは俺への当てつけか」

「えっ、いや……ごめん。そんなつもりじゃなかった」


 しゅん……と、それこそ怒られた犬の様に小さくなる春木。

 そんなに真面目に謝られると物凄く虚しい気持ちになるからやめて欲しい。


「ふん、俺は胸がデカいからいいもんね」

「…………うん」

「何か言えよ」

「いやコメントしづらいでしょ……」

「てりゃ」

「ちょっ!?」


 確かにそうかもと思ったが、春木の言葉に納得するのは何だか癪だったので、後頭部を掴んで自分の胸に押し付けるように抱きしめた。


「暴れるな暴れるな」

「やめっ、ちょっと!」

「何やってるの二人とも」


 丁度二階から下りてきた冬火に怪訝な目を向けられる。


「罰を与えてる」

「助けて」

「春木はともかく夏日は勉強しようね」

「あだだだだだだだ! 顔がっ! とっ、取れるっ!」


 メキメキと顔から鳴るはずのない音と、強烈な痛み。冬火は俺に近づいてくると、穏やかな笑顔で俺の顔を掴んで力を込めてきた。

 手首を掴んで必死に外そうと引っ張るが、びくともしない指に本気で焦る。


「いつも春木を困らせてる悪い子は誰かなー?」

「おれ! 俺です! ごめんなさい!」

「反省してるのかなー?」

「いだだだだだ! してます! 今凄くしてます!」


 更に力を込められ、顔がこのまま潰されるのではという恐怖に襲われる。


「たまには痛い目見ないといけないよね」

「分かった! 分かったからやめてください!」

「……仕方ないなぁ」


 そう言って指を離す冬火。


「と、取れてない? 大丈夫? 顔ちゃんと付いてる?」

「赤くなってるけど大丈夫だよ」


 真っ先にぺたぺたと自分の顔を触って確認する。

 ……良かった。ちゃんと付いてる。顔を引きちぎられるかと思った。


「これに懲りたら次はしない事」

「……ゴリラ」

「んん? まだやってほしいのかな」

「ナンデモナイデス」


 手を近づけて来ないで下さい。

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