第76話 陽だまりの教室 歩
今回は短いです
午後一番の授業。
弁当を食べた後の授業は腹が満たされ、温かい日差しもあり、誰もが睡魔に襲われる。
それは隣の席の銀髪美少女も例外ではないようで、少し小首を傾げた状態で眠っている姿はとても幸せそうだ。
「〜であり、ここは――」
関係の無い話を延々と続ける先生の間延びした授業というのも要因だろう。
さっと周りを見渡すだけでも、夢の世界に旅立っているやつが結構見える。
「黙ってれば文句ないんだけどなぁ」
普段は様々な表情をする端正な顔立ちも、今は無防備な寝顔を晒している。
さらには、窓から差し込む光によってその美しい銀髪が宝石のようにキラキラと輝いていて、何というか、神々しい。
「ふむ」
写真でも撮っておこうかな。
先生が黒板に文字を書き始めたタイミングでスマホを構える。
そして、シャッター音がならないRINEの撮影モードで寝顔を撮影した。
「よし」
最高の出来だ。被写体が一級品だと、適当に撮った写真も一級品になるらしい。
眺めるだけでご利益がありそうだ。
「ファンクラブに送っといてー」
「はいよ」
撮った写真を眺めていると、夏日とは対照的に真面目に授業を受ける冬火に声をかけられた。
ファンクラブとは言っても、夏日を除くクラスの全員が入っているRINEグループの事だ。
夏日の写真を送るだけのグループがいつの間にかファンクラブになっていた物で、勿論会長は夏日の双子の妹である冬火だ。
写真を貼るだけといっても、ほぼほぼ隠し撮りなので普通にアウトなのだが、妹の冬火が一番送っているので夏日に限ってはやっても大丈夫な雰囲気になっている。
可哀想に。
「よし」
と言っても、ファンクラブのメンバーは学校での夏日しか撮っておらず、一応夏日のプライバシーは守られている。
家では夏日が下着姿で歩き回るせいで俺も冬火も撮っても送れないだけだが。
「はやっ」
送ってみると一瞬で既読がついた。その数なんと十。
大体クラスの四人に一人が見た計算になる。
ちゃんと授業受けろよ……俺が言えた事じゃないが。
「………………ん、んんぅー」
夏日が起きた。
授業中なので気を使って腕を後ろにして伸びをしたのだろうが、その姿勢はダメだ。
強調された胸を先生までもが凝視している。
一人銀髪の夏日は何をしても目立つのだ。
「ふぅ…………ん、へへっ」
「――――!? げほっ、げほっ!」
伸びをした後、俺の視線に気づいた夏日が「にへらっ」と、擬音が付きそうな笑顔を向けてくる。
その笑顔は寝起き直後の緩みきった表情筋と、後ろから差す日光によって輝いていて、あまりの可愛さに見惚れた。
……偶に夏日は無意識で美少女を全面に出した攻撃をしてくるので心臓に悪い。
「真矢、大丈夫か?」
「げほっ、大丈夫です」
あまりに俺が咳き込むもんだから先生に心配される。
至近距離で美少女エネルギー浴びただけですから心配しなくても大丈夫です。
「変なの」
「元はと言えばお前が――や、何でもない」
「何だよ。言えよー」
「何でもねぇって」
理由を話そうとして、やめる。ヘタに警戒されてあの笑顔を見るチャンスが無くなるの嫌だし。
「……むう」
「そんな顔しても言わないからな」
ぷっくりと頬を膨らませて、不機嫌を表現してくる。
高校生がするにしては幼稚な表情だが、不思議と様になっていて可愛い。中身は可愛くないが。
「チッ」
「大体お前は――」
「そこー私語するなー」
「「すいません」」
いつの間にか声が大きくなっていたようで、先生に注意される。
隣から飛んでくる恨めしそうな視線を無視して、授業を真面目に聞く事にした。
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