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第72話 酔っぱらい明里と夏日

誤字の報告ありがとうございます!助かります!

歩と春木を間違えたり、航さんを渡さんと書いたり……何度か見直ししてても気づかないものなんだなぁ……

「あー気絶ぅ! ヤバいヤバい死ぬぅー!」

「粉塵飲んだ」

「サンキュ」

「よっしゃかかってこい! カッコよく決めてや――あ」

「あ」


 歩がモンスターの大技に合わせてカウンター攻撃をしようとしていたが、その前に歩が連れてきていたNPCの攻撃によって倒された。

 画面にはクエストクリアの文字。


「…………ちくしょぉぉぉぉぉぉ!!」

「ドンマイ」

「うぇーい。帰ったぞー」


 真矢家。

 歩は床、俺はソファーに座ってゲームの協力プレイをしていると明里ねえが帰ってきた。


「「おかえりー」」

「んにゃ? 今日は夏君がいる」

「暇だから遊びに来た」

「なつく〜ん」

「ゲームしてるから邪魔。って酒くさっ」


 抱きついてきた明里ねえの口からは酒の臭いがした。よく見ると顔が赤い。

 二十歳を過ぎてるから別に飲むなとは言わないが……まだ昼の三時だぞ。


「ひどいな〜も〜。チューしちゃう」

「やめろ。おい、歩。これ何でだ」

「昼に友達と飲んでくるって出かけて行ったな」

「ゴールデンウィークだし昼だけど飲んできた!」


 気持ち悪い顔をしながら迫ってくる明里ねえに本気で身の危険を感じ、必死に押し返す。アルコールのせいかテンションが普段より五割増しで高く、ウザい。それと酒臭い。


「歩これをどうにかしろ」

「こうなったら俺には無理だ」

「よいしょっと。なつく〜ん、お姉さんのお膝おいで〜」

「ちょっ、やめ」


 脇の下に手を入れられ、ずるずると引きずられ横に座った明里ねえの膝の上に乗せられた。抜け出そうにも腰の前で両手をガッチリと組まれていて抜け出す事が出来ない。


「うーん、軽い。中身詰まってる?」

「今確認してるだろ。ちゃんと詰まってるわ」


 デニムのショートパンツによって無防備に晒されている俺の太ももをムニムニと揉みながら喋る明里ねえ。

 両手が塞がっている今のうちにっ。


「ダーメ。夏君は私の膝の上なの〜」

「ぐぇっ」


 抜け出そうと立ち上がったが、それに気づいた明里ねえに思いっきり腹を抱きしめられ、変な声が出た。

 少し抵抗してみたが、手を離す気配がないので仕方なく明里ねえの膝の上に戻った。


「女の子がそんな声出したらダメだよ〜?」

「出させたんだろ」


 俺が膝の上に戻ってからも何が楽しいのか太ももを揉み続けている。

 最初は膝に近い所を揉んでいたが、段々手を上に移動させてきて今はショートパンツの裾近くを揉んでいる。

 ショートパンツの中にまで手を入れてきたら思いっきり抓るからな。


「というか歩、お前どこ向いてんだ」

「あーちょっとな」


 少し前まで俺の方を向いていたはずの歩がいつの間にか背を向けるように座っている。


「……?」

「いやその……意識すると肌が眩しいなって」

「??」

「もう少し足の露出少なく出来ないか?」

「嫌だよ暑いじゃん」


 ショートパンツ涼しいし楽なんだよ。


「まあ、うん。そうだよな夏日は……」

「呆れられた。でも、めっちゃ楽だからお前も女になったら履いてみろよ」

「ならねぇから。これ以上厄介事が増えるのは勘弁してくれ……」

「分からないぞ。ある日突然、みたいな。それに、案外楽しいぞ?」

「お前が言うと洒落にならないから止めてくれ。俺は夏日ほど図太くねぇから無理だ」


 試しに歩が女になった姿を想像してみる。……ふふっ、浮かんできたのは今のままスカートを履いてる姿だった。

 俺のように男の姿からかけ離れた姿になるかも知れないから考えるだけ無駄か。


「というか、明里ねえ。肉の薄い俺の太もものどこがそんなにいいんだよ」

「太ももの内側はぷにぷで柔らかいよ? 確かにムチムチじゃないけど、夏君には引き締まっててサラサラっていう夏君だけの良さがあるんだよ〜」


 春木と話している最中もずっと太ももを触り続けていた明里ねえは、「それにそれに――」と俺の太ももがどれだけ良くてどこが優れているかを熱弁するが、嬉しくない。むしろ嫌だ。


「こんなにちゃんと太もも触れてショートパンツ最高〜」

「はいはい。……楽だからって履いてこなけりゃよかったな」

「私が触るからだ〜め〜。うふふ……夏君可愛いなぁ」

「ひぃっ。歩ほんとに助けて」


 俺の首筋に鼻を近づけ、思いっきり息を吸い込み匂いを嗅がれる。さらには耳元で囁かれ、鳥肌が立った。


「姉ちゃん。そろそろ開放してあげたら」

「え〜。あ、そうだ歩も触ってみる〜? 夏君の太もも」

「なっ、え、なんでそうなんだよ!」

「触りたいかな〜って、気になるんでしょ〜? 私が許可する〜」


 勝手に許可を出すなよ。別にいいけど。


「えーと、いいのか?」

「一人も二人も変わらん。好きにしろ」


 おずおずといった様子で手を伸ばし太ももの辺りに手を置くと、ぎこちない手つきで撫でてくる。めちゃくちゃ丁寧に撫でているせいか、くすぐったい。


「お、おー」

「感想は?」

「さらさらしてる」

「ほう」

「姉ちゃんがずっと触ってたい気持ちも何となくわか――っ! なっなんでもない」

「歩も夏君の気持ち良さに気づいたか〜」


 歩は興味深そうに撫でていたが俺の後ろの明里ねえに気づき、急いで手を引っ込めた。


「もっと触ったらいいのに〜」

「もういい」


 そして明里ねえのせいでまた俺に背を向けてゲームを初めてしまった。

 あーあ、拗ねたじゃねぇか。


「あらら。それはそうと、なちゅくんは触ってて気持ちいいでちゅね〜」

「キモっ」

「夏君にキモいって言われたぁ……泣いちゃう」

「あーもう泣くな泣くな」


 涙声で喋りながら鼻を啜る音が後ろから聞こえる。酔っぱらい面倒くさっ。


「じゃあ、おっぱい揉んでいい?」

「揉みながら言うな」

「ふへへ〜ぽよんぽよん〜」

「……はぁ。歩、ゲームの続きするか」

「おう」


 結局、俺の帰る時間になるまで明里ねえに捕まったままだった。

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