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第70話 カッコイイ夏日

 おっさんと出掛けた次の日、昨日買った本を読んでいる。

 取り合えず大切と言われた所を読んでないみるが……うーん、全く頭に入らん。

 女子ってこんなのも覚えにゃならんのか……大変だな。


「夏日ー。ん、何そんなしかめっ面で本読んでるの……ふむふむなるほどね。まだ興味無い夏日にとっては大変かもねー」

「ぐぬぬぬ」


 二階から降りてきて俺の読んでいる本を覗き込み、一瞬で状況を理解した冬火。本当にこれ初心者向けか? 表紙を見るががそこには『初心者入門』の文字……はぁー。

 俺が唸っている横で暇だったのか冬火は俺の読んでない本を読みだした。


 暫くすると冬火が言ってきた。


「ん、これは……ねえ夏日、面白そうなメイクの仕方あったから試させて」


 自分の顔でやれよと思ったし言ったが、これは夏日がするべき。とよく分からない理由で押し切られてメイクが始まった。

 冬火だから失敗はしないと思うが、どんなメイクにするか教えてくれなかったので怖い。


 ――――――――――


「よし出来たぁ! 目開けていいよ。はい鏡」

「ん、……おお、おおっやば」


 椅子に座って大人しくすること数十分。途中寝そうになったがどうにか耐えた。

 冬火に渡された手鏡を覗くと、そこには目が半開きで眠たそうにしている中性的な顔立ちの美少年がいた。

 ……まあ、美少年風メイク? をされた俺だが、ここまでとは思わなかった。


「たまたまこの本に番外編って載ってたからやってみたけど、もしかして私天才……?」

「凄いなこれ」


 様々な角度で見ると元の素材がいいからか完成度が高く、胸がある事に違和感を感じるほど出来がいい。


「でしょー? カッコイイよ夏日!」

「へへ、そうか?」

「あっダメカッコ可愛い……」


 今の姿になって可愛いとは散々言われたが、これまで生きてきてカッコイイと言われたのは初めてで、どんな表情をすればいいのか分からずはにかみながら応えると冬火が胸を抑えて悶絶しだした。


「どうした急に」

「その顔でその表情は反則だよ……」

「ふぅん……こうか?」


 冬火の顎を軽く掴み自分の方に向かせ、顔を近づけ見つめる。


「えっ、あ。ちょ、イケメンむりぃ……」


 最初は戸惑っていたが見つめる続けていると目がトロンとしてきて、最終的には顔を真っ赤にして崩れ落ちた。

 前読んだ少女マンガに出てくるイケメンの真似をしただけなんだが……想像以上に効果があったようだ。


「おーい」

「イケメン……破壊力……」

「帰ってこいー……だめだコイツ」


 呆けた顔でうわ言を唱え始めたので肩を掴んで正気に戻そうと揺らすが、全く首に力が入っていない。首の骨が心配になるぐらいガクガクと揺れた。


「うーん、どうするか。よし、ショック療法でいくか」

「ふふ、フフフフ……」

「ぎゅーっとな」


 このままにしておくのも面倒なので、無理矢理治す事にした。

 冬火の頭の後ろに手を回し、俺の胸に押し付ける。


「むぐ……ん、んぐんぐ。……ん! んん!! ん!」

「痛い痛い」


 暫く反応が無かったが、突然体に力が入りベシベシと背中を叩いてきたので開放する。


「ぷはーっ! 死ぬかと思った……」

「やっと戻ったか」

「今の夏日の顎クイは反則。私が保たないから禁止ね」

「もう復活させるの面倒だからしない」

「それならよし。ところで、こんなに完成度高いんだし顔だけじゃなくて見た目も完全に男の子にしたくない?」

「まあ、興味あるな」

「じゃあ早速やっていこー!」


 何かスイッチが入ったようでやる気に満ち溢れている冬火によって、俺は改造されるのだった。


――――――――――


「ふふ。春木の反応は最高だったなぁ」


 優との待ちあわせ場所の公園のブランコに座りながら独りごちる。

 あの後更に数十分かけて完璧に男装した姿を一番最初に見た春木は「え、誰」と百点満点の反応をした。

 余程よく見ない限り女には見えないからな。

 胸をどこからともなく冬火が出してきたサラシを巻いてぺたんこにし、髪は三編みにして内側に巻き短くするかぶったキャップの中に入れ長さを誤魔化し、黒系で統一した服装の俺は普通に男に見える。


「早く来ねぇかなぁ」


 折角だから他にも見せようと思い、顔が浮かんだのが優だった。連絡すると遊べるらしいので、昼に公園で待ちあわせの約束をして今になる。


「お、きたきた。おーい、ゆ――いや、待てよ」


 公園の中に自転車に乗った優が入ってきたので、いつものように名前を呼ぼうとしたがギリギリの所で飲み込む。

 男装したのに名前を呼んだら意味無いじゃないか。バレるまで黙っていよう。

 入口近くに座る俺とは対照的に奥の方に自転車を停め、ベンチに座る優。近くを通ったときはドキドキしたが、一瞥しただけで通って行ったのでバレてないはず。


『もしもーし、公園着いた?』

「着いてる」

『夏姉ちゃんどこにいるの?』

「俺は公園にいるぞ」

『それ場所間違えてない? どこにもいないよ』


 暫くすると優から電話がかかってきた。優が喋る俺の声の聞こえない距離にいる事を確認し、電話に出た。

 優が周りをキョロキョロと見回し、ムスッとしながらスマホに喋りかけているのが見えた。完全にこれはバレてない。


「周りをよく見てみ」

『なんかカッコイイお兄ちゃんがいるだけで夏姉ちゃんはいないけど』

「それが俺だ」

『ええ!? えぇ……え?』


 あんまり怒らせるのもあれだし、早々にバラした。手を振ってみるがイマイチ理解出来てないみたいだ。


「こっちおいで」

『う、うん。分かった』


 スマホを握りしめ、恐る恐るといった様子でこっちにくる優。


「どうだ? 俺の完璧な変装は」

「わ、ほんとに夏姉ちゃんだ……カッコイイお兄ちゃんから可愛い声が聞こえるの凄い変な感じ」

「そうか?」

「髪の毛とおっぱいどうやったの……?」

「髪の毛は、ほら」


 キャップを脱ぐと巻いて短くした髪がはらりと落ちる。あー窮屈だった。無理矢理入れた髪がゴワゴワして鬱陶しくて仕方なかった。


「え……髪、切ったの……?」

「切ってない。巻いただけだ」


 そんなこの世の終わりみたいな顔するなよ。そっか、優は長い方が好きなのか。


「よかった……」

「そんなに安堵しなくても……あと、胸はサラシ巻いた」

「ちょ、何してっ――ああ、ほんとだ」


 優は俺が服を捲くろうとすると凄く焦っていたが、少し捲り腹付近のサラシを見せると何故かガッカリしていた。

 何を想像してたんだ。肩甲骨の下辺りから腹まで巻いてるから何も見えないぞ。


「素肌が見たかったなら後で写真送ってやろうか?」

「いやっ別に……い、いい」

「一瞬悩んだな」

「ほ、ほらっいいから遊ぼっ!」

「待て、一回家に戻らせてくれ。胸がキツイ」


 サラシでデカイ胸をなるべく分からないようにするため、キツめに巻いているので圧迫感が凄い。背筋がピーンってなっている。


「ああ……うん。分かった」



 一度家に帰り、サラシを取った後存分に優と遊んだ。

久しぶりの優君。



そろそろ異世界モノ書いてみたいなぁ

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