第67話 ホラー映画
お待たせしました。
少しずつ書けるようになってきて、お話がある程度まとまったので更新再開します。
待っていて下さった方ありがとうございます!
「兄ちゃん、これ一緒に見よー」
夜、ソファーにもたれてボケーッとテレビを見ていると春木が何かを持って二階から下りてきた。
「んー?」
「ホラー映画なんだけど、
怖いってみんなが言ってて気になって店で借りてきた」
「ほうほう」
「兄ちゃんホラー映画大丈夫だったよね?」
「おう。大丈夫だー」
「よし、じゃあ付けるね」
そう言ってレコーダーにDVDをセットする春木。春木の準備が終わり、横に座るのを待ってから再生し始めた。
「楽しみだねぇ」
「怖かったら俺の胸に飛び込んできていいんだぞー」
「そんな事しないから大丈夫」
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「わー怖かったぁー!」
「だなー」
流石怖いと言われるだけあって、かなりリアルで結構怖かった。
「……まあ、姉ちゃんほどじゃないけど」
「おーい終わったぞー」
「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……」
だから止めとけって言ったんだよ……
俺の胸に顔をうずめて両耳を手で塞ぎ、ぶつぶつと何かを言っている冬火。
「怖いの苦手なのに……」
「何で見ようとしたんだよ……」
遡る事数十分前──俺たちがホラー映画を見始めてすぐの頃、興味津々な様子で二階から冬火が下りてきた。
「何見てるのー?」
「ホラー映画」
「へー面白そう」
「お前は止めとけ」
「大丈夫だって~」
そう言って俺の横に座って見始めたのはよかったのだが、しばらくすると俺に抱きついて離れなくなり、映画が半分ほど終わった辺りから今の状態になった。
見づらくて仕方なかった。
時刻は戻り冬火に抱きつかれて動けない俺の代わりに春木が片付けを終わらせた。
「よしっ、寝よーっと。おやすみ兄ちゃん」
「おーおやすみ」
「まあ、兄ちゃん頑張って」
そう言い残して春木は二階に上がって行った。さて、こいつをどうするか。
「そろそろ俺も寝たいんだが」
「うぅ……怖い……」
話せるまでは回復したが、動こうとしない。さらに変に力が入っていて、引き剥がせない。
「ちょっとトイレ」
「ついて行く」
「嫌だよ。何でついて来るんだよ」
「今は一人にさせないで……」
「はぁー」
結局、離れようとしない冬火をどうにかしてトイレの扉の前で座らせたが、トイレの最中も延々と名前を呼ばれ続けて面倒くさかった。
それからしばらくして──
「何で布団に入ってくるんだよ」
「え……」
「この世の終わりみたいな顔してんな」
寝ようと思って自分の部屋に入ると冬火もついて来たが、特に何も考えず布団に入ると当たり前のように入ってきた。
「一人じゃ眠れない」
「はいはい分かったよ」
結局、冬火が無駄にくっついてくるせいで特に広くもない俺のベッドの中でぎゅうぎゅうになりながら寝た。
暑苦しくて寝苦しかった。
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「ん、んんっ、んーー」
案外どんな状態でも寝れるもので、寝るまでは暑苦しかったが一度寝ると途中で起きる事もなく朝を迎えた。
流石に寝苦しかったのかいつもより早く目が覚めたが。
「すぅー、ふふふ……ん、んん」
こいつ……人の髪に顔を埋めて気持ち良さそうに寝やがって……
ずっと変な体勢のまま抱きしめられていたからこっちは体バキバキだってのに。少しイラッとしたので両手で冬火のほっぺたを引っ張った。
起きる気配はない。
「よし、起きるか」
寝ているというのに尚も引っ付いてこようとする冬火を引っぺがし、特に理由もなく一階に降りると既に春木が起きていた。
朝っぱらからゲーム……人の事は言えないから何も言うまい。
「兄ちゃんおはよう」
「おはよう」
ソファーに座る春木の横に座り特に何をしゃべるでもなく春木のするゲームを眺める。
「……」
「……」
ゲームの効果音と、春木のコントローラーの操作音。特に何を話すでもなく人がゲームしてるのを見るのも結構楽――あっ。
「うわぁぁぁぁ!?」
「あーあ」
「あと少しだったのに……」
ボスの体力バーが赤色になり、あと少しでゼロになりそうだったが緊張したのか些細なミスをして負けた。中々苦戦してたみたいだが、惜しかったな。
ショックだったのかソファーに力無くもたれる春木。
「俺がやってやろうか?」
「ダメ。兄ちゃんこれ引くほどやってたじゃん」
「確かにパリイを極めるために数百時間やったが」
「うわぁ……パリイするためだけの執念がそこまでいくとただただ恐怖だよ」
今、春木がやっているゲームは元々は俺がやってたやつで、近接武器のみで数々の敵を倒すゲームだ。しかし難易度がかなり高く、基本的には敵の攻撃を回避するか防御するかで対処する。
パリイは上手い人が偶に使っているのをカッコイイ……と眺めるぐらいで主に使うようなものでは無いのだが何故か魅力を感じてしまい、ゲームの腕が上手くないから完璧に出来るようになるのに時間がかかっただけなんだけどな。
「今ではパリイ出来る攻撃は全部出来る」
「うん。自分でやるよ」
「そうか。まあ、アドバイスぐらいはするぞ」
「ありがとう」
俺の言葉を聞くや無表情で春木が言った。パリイのついでに敵の動きを全部覚えたから的確なアドバイスが出来るはずだ。
そうしてまたボスに挑戦する春木。
数十分間後、俺のアドバイスもあり無事ボスを倒した春木は体で喜びを表現していた。
よかったな。
お話の種がいくつか出来ているのでしばらくは週1以上のペースで更新出来そうです。




