第63話 夏日のデッサン2
アイデアが浮かばない中やり遂げた……やり遂げたぞ……
最近遅れてばっかりですみません。
「じゃあ、二回目もよろしくねー」
「はい」
一回目を終えるタイマーが鳴り、休憩を挟んで二回目が始まった。一回目と同じで椅子に座ってはいるものの二回目は少しポーズが違う。休憩の間にみんなに描いた絵を見せて貰うと、最初は白黒写真をそのまま張り付けているのかと思った。見せて貰った人は「まだまだだなぁ」と言っていたけどどこがまだまだなのかが分からなかった。
「あ、夏日ちゃん眠たくなってきた?」
「そ、そうですね……」
二回目となると大分視線に慣れて自然な表情を取れるようになってきたはずだ。しかし、慣れてきたのはいいものの今度は眠たくなってきた。椅子にじっと座ってるだけなのが思っていたよりキツい。欠伸をかみ殺しながらいると部長に気づかれていたようだ。
「眠たかったら寝てもいいよ」
「すみ……ません……」
眠気には抗えず、俺の意識は落ちていった。
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春木視点
「夏日寝たな」
「うん。寝た」
「寝たね」
一回目は緊張してたのに二回目は慣れたのか、明らかに眠たそうにしていた夏日を見かねて部長が寝てもいいと言うとすぐに夏日が寝始めた。他の人の邪魔にならないように静かに話す俺たち。白紙の画用紙に夏日が描かれていくのを見ているのがなかなか面白い。
「あれはあれで可愛いからいい……のか?」
「明らかにガッチガチよりはいいと思うけど……」
「夏日ちゃんよく寝れるね」
「ほんとにな」
一回目の緊張でガッチガチになっていた姿は今や跡形もなく、すやすやと寝息をたてながら気持ちよさそうに寝ている。あんなに見られてるのによく寝れるな。常に注目されてるから視線には慣れてるのかも知れない。
結局二回目が終わるまで夏日は起きなかった。
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ピピピピッピピピピッピピピピッ
「よし、終わりー」
六回目の終わりを告げるタイマーの音と、部長の声によって美術室に張り詰めていた空気が緩んだ。美術部の人たちは少し疲れた様子だが凄くやり切った顔をしている。それに対して俺はというと、いくら眠たかったとはいえ思いっきり寝顔を晒してさらにそれが絵に描かれ、やってしまった……と思いっきり後悔している。起きた後は本気で謝った。
「夏日ちゃんよかったよー今日はありがとうね」
「寝てしまってすみません……」
「まだ言ってたのー? 寝顔可愛いかったよ」
「あぅ……」
「それに夏日ちゃんの寝顔を描いた絵私の中で過去最高の出来だし! これで最高の展示が出来る!」
「……展示?」
「あれ? 言ってなかったっけ? これまでに描いてきた作品の中で一人一枚選んで美術室に展示してみんなに見てもらうつもりなんだけど」
「えっと……言われてないですね」
「……マジか」
「はい……寝顔の展示は確定ですか?」
「過去最高の出来だからお願い」
「分かりました……」
そう言われてしまうとダメとは言えない。俺の寝顔が絵として晒される事が決まった。
「……ごめんね」
「でも確かに凄い上手でした」
「ありがとう。今日は本当に助かったよ」
「ただただ椅子に座ってただけですけどね」
その後美術部の人たちからまたもみくちゃにされた。
後日展示されてる作品を見に美術室に行くと結構な数の人来ていて、あの部長が描いた俺の寝顔のデッサンの前には人だかりが出来ていた。なぜか展示されている作品のほとんどが俺のデッサンだったが。




