第57話 パジャマジャマジャマ
遅れてすみません!
一度入ったら最後、何もしたくなくなるコタツの魔力が……
コタツは人をダメにする。
「うふ。うふふ」
「うわなに気持ち悪い」
「ひどっ」
「急にこっち見ながら笑い出す人を他に何て言えばいいの」
「確かに気持ち悪い。そうじゃなくて、夏君とぎゅうぎゅうになりながらお風呂に浸かってる今の状況が可笑しくてね」
「誰かさんが強引に入ってきたからな」
「夏君もさー壁に向いてないでこっちに足伸ばしたらいいのにー」
「余計狭くなる」
「あれでしょ? 見ないようにしてくれてるんでしょー? 別に体見ても足が体に当たっても気にしないからこっち向いてよー」
「……」
「今は女子同士だから大丈夫だよ」
「……本音は?」
「あわよくば夏君の足を触れるかなと」
何があわよくばだ。触る気満々じゃねぇか。こっちが気にしていたのがバカみたいだ。
「それとさっきからわざと体に足当ててきてるよな」
「バレてたか」
「いくら狭いとしても何度も足が当たると分かるから」
「ちょっとしたスキンシップだってー」
「普通にうざいんだけど」
「ごめんちー」
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「なんだこれ」
風呂から上がり、体を拭いて髪を乾かし下着を着てから例の紙袋を開けると出てきたのは上下が一つになった黒いフード付きのパジャマ。フードに顔と三角形の耳が付いていて、お尻の少し上辺りから細くて長い尻尾が生えている。尻尾が寝るとき邪魔になりそうだ。
「黒猫だねぇ。かわいいじゃん」
湯船に浸かってこっちを見ていた明里ねえが言った。
「……着ないとダメ?」
「だーめ」
「別にパジャマに可愛さを求めてないんだけど」
「いいじゃないかー可愛いくて。……私なら家族がいるときに着ようとは思わないけど」
無言で明里ねえを睨みつけた。
「流石にね? 私はちょっとキツいかな」
「俺は?」
「見る分には可愛いからいいと思う」
俺の心情は無視ですかそうですか。久美さん悪い意味でいい趣味してる。
「あ、ちゃんとフードもかぶるんだよー」
「はぁ……」
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「夏日かわいいよ! 最高!」
「私の目に狂いはなかったわね」
「黒い猫ってのがいいな。夏日君にとても似合ってる」
「うんうん。夏君何着せても似合う」
気の進まないままパジャマを着てリビングに行くと即、撮影会が始まった。
そんな気はしてた。地味に渡さんも混じっている。
「兄ちゃんが風呂上がりにちゃんと服着てる……!」
「いや普段どうしてんだよ夏日」
「パンイチ」
「は?」
「パンイチで肩にタオルかけてるだけ」
「詳しく聞かせろ」
後ろでは俺を見て感動した様子の春木と驚いた様子の歩が何かを話していた。俺の風呂上がりの様子を聞いても面白くないだろ。




