第55話 晩ご飯前と最中
「夏日~晩ご飯出来……おっと、お取り込み中か。失礼」
「待て変な誤解するな帰ってこい」
誰かさんと同じで晩ご飯が出来たか眺めに来た冬火に明里ねえに抱きつかれているのを見られた。確実にあらぬ誤解をかけられた。抱きつかれてるだけで断じて俺からは抱きついてないからな。こっちを見た途端回れ右する冬火。
帰るんじゃない。戻ってこい。
「恥ずかしがらなくても分かってるって。夏日にもそういう事したいときあるのは分かってるよ。たまには誰かに甘えたいもんね。ごめんね。私じゃその役になれなくて」
「思いっきり勝手な想像してんじゃねぇか」
「夏君が抱きつきたいって言ったからお姉さんとしては、可愛い弟ちゃんのお願いは聞かないとって思ってねー」
「やっぱりそうなんだ~」
「待て待て明里ねえ。一言も俺はそんな事言ってない」
「酷い! 私とは遊びだったのね!?」
「あーあ夏日。女の人を泣かせたー」
「あーもう。どうすんだよこれ……」
冬火のネタに明里ねえが付き合い、明里ねえのネタに冬火が付き合う。収拾が付かない。
「困ってる夏日かわいー私も混ざろっと。夏日ぎゅーっ」
「ぎゅーっ」
「狭い暑い苦しい」
「夏日いい匂いー」
冬火と明里ねえに挟まれ、様子を見にきた歩に助けてもらうまで地獄だった。
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『いただきます』
「はいどうぞ」
誰かさんたちのせいで晩ご飯の時間が遅くなった。
「やっぱり夏日君の料理はおいしいわね」
「そりゃあよかった」
「前までいいお婿さんになれると話してた夏日君が今はいいお嫁さんか、将来が楽しみだ。……それにしても、明里に見せて貰ったいろんな服を着た夏日君は最高だった」
「航さん?」
「おっと。心の声が」
わざとですか? 航さんの存在を無視しますよ?
「夏日は性格どうにかしないといいお婿さんは貰えないねー」
「うっさい」
「いいお婿さんかどうかは分からないけれど、歩はどうかしら?」
「母さん!?」
「歩はちょっと……」
「おい夏日どういう事だ!」
「歩……強く生きろよ」
「父さんまで!? 何で俺がフラれたみたいになってんだよ!」




