第50話 真矢家へGO!
「冬火ぁー行かなきゃダメー?」
「女の子になってから行ってなかったでしょ。いくらお母さん達が話してくれてるとは言えそろそろ挨拶しなきゃ」
「えー」
「だーめ、行きます」
「はい……」
俺が何でこんなに渋ってるかというと、うちの向かいにある真矢家へ挨拶しなきゃいけないからだ。前から冬火に言われてたが伸ばしに伸ばして、我慢ならなくなった冬火に今日、強制的に連れて行かれる。歩達から話は伝わってると思うけど、男の時を知ってる人に今の姿見せるのはなぁ。歩達は仕方なかった。不可抗力。
しかし自分から行くのはなぁ。気まずい。
「何を弱気になってるの。夏日可愛いんだから心配無いって」
「そういう問題じゃないんだよ」
「ほら、行くよー」
「はぁぁぁ」
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ピーンポーン。
「こんにちはー」
「こ、こんにちはー」
「はーい。あら? 冬火ちゃんじゃない。久しぶりー」
「久美さん久しぶりですー」
家の中から出てきたのは歩と明里ねえのお母さん。俺達の親もそうだが、歩達のお母さんもかなり若く見える。しかも母さんに負けず劣らずの美人。
俺の周りの大人どうなってんだ。
「そしてもしや後ろの子は……」
「そうです! 夏日です!」
「うぉっ、ちょっ。お、お世話になってます」
冬火の後ろに隠れるように立っていた俺は冬火に引っ張られ前に押し出された。
「秋ちゃんに写真見せて貰ってたけどまさか実物がここまでとは……人形さんみたいでかわいっ!!」
「ひっ」
「さすが秋ちゃんの血を引いてるわねーまさに美少女。この銀髪もさらさらでいつまでも触れるわね」
「うんうん」
一瞬で距離を詰めてきて髪を触られた。おい冬火。お前も便乗すんじゃねぇ。
「のわっ!?」
「肌もさらっさら。そして細いわねー力入れたら折れそう」
髪の次は腕を触られる。玄関先から動けない。中に入りたい。
「早く中に……」
「……そうね。ちょっと我を忘れてたわ。……後でもっと触れるし。さぁ、上がって上がって」
「おじゃしまーす」
「お、おじゃしまーす」
不穏な言葉が聞こえたのは多分聞き間違いだろう。そうだと信じたい。
入る前から帰りたくなってきた。




