第40話 カヌー
「キッツ」
「重たかったぁ」
到着式が終わり、体操服からジャージに着替えた。それから、バスに乗りカヌーを借りる所に到着すると、ペア(冬火)とカヌー(約二十キログラム)を持ち、百メートルほど離れた川まで歩かされた。
休憩をいれながら歩き、ようやく川岸についた。カヌーはでっかいし重たいし、河原は小石に岩にごろごろだしサンダルだしで歩きにくくて危なくてめっちゃ疲れた。
散々カヌーカヌー言ってるけど、カヤックらしい。もっと言うと、カヤックはカヤックでもリバーカヤックで、その中でも、タウンリバーってやつらしい。
めんどくさいからカヌーで統一。
「冬火どっちが先にするか?」
「夏日どーぞ……私は疲れたから休憩する……」
「ほーい」
やり方なんかは持ってくる前に教えてもらってたからあとはやるだけだ。他のペアも続々やっている。
「冬火押してー」
「了解ー」
半分水に入った状態のカヌーに乗り、冬火に押してもらって着水した。
「おお」
ちゃんと水に浮いてる。
「そりゃあ浮くよ」
「いやそうだけど。感動」
「初めてだもんね。私もだけど」
「おー進んだ」
オールを両手で持ち、片側を水に入れて腕と手首を使って動かすとカヌーが前に進んだ。案外いけるな。
「上手上手ー」
「楽しいなこれ」
カヌーの右側だけでオールを動かすと左に回って、左側だと右に回る。
これ楽しい。
オールを動かす度に水が思いっきりかかってびしょびしょにはなるけど、薄手の生地だしすぐ乾くだろう。
「じゃ、俺行ってくる」
「行ってらっしゃい」
川岸の近くから川の真ん中の方に行くか。
「ふぃー。お、歩ー」
「ん? なに? 夏日」
「呼んだだけ」
川の真ん中辺りで歩がいた。
「何だよ。これ楽しいなー」
「だなー」
「このなんていうかこう、当たり前だけど地面とは違うのが楽しいな」
「不思議な感覚だよなー」
「うんうん。じゃ、俺は行ってくるなー」
「俺はぼーっとしとく。めっちゃ落ち着いて眠い」
「起きとけ起きとけ」
○●○●○●○●○●
「やるのもいいけど、見るのも面白いな」
「冬火も奏も上手だなー」
今は交代の時間になり、冬火と歩のペアの奏の姿を河原に座って歩と眺めている。
「ふぁーいい天気だなー」
「結局あのあと寝てたのにまだ眠いのか……」
「あ、そうだ。肩貸して」
「はいはい。どーぞ」
「さんきゅ」
「なんだかなぁ。美少女にもたれかかられるってなかなかないレアなはずなんだけど、こう簡単に達成するとなぁ」
「しーらねー」
「前から気になってた事一つ聞いていいか?」
「ん?何だ?」
「女の子の体ってどんな感じ?」
「ふむ。どんなねぇー力が弱かったり、あったものが無かったり、逆に無かったものがあったりするけど、普通だな」
「普通て。もっと何かないのかよ」
「慣れてしまえばな。慣れるというか身を任せたな」
「夏日っぽいなー」
「む、どこが」
「流れに身を任せるって所だよ」
「まーな。戻らないからどうしようもないし」
「あーすまん」
「気にすんなー戻らない事は対して何も思ってないし、この体悪くないしな。この髪とか目とか自慢だし」
今は冬火にまとめてもらっている髪を触りながら言った。
「綺麗だよなー凄く」
「お、どうした急に」
「本心を言っただけ」
「へーじゃあ、俺も本心を一つ」
「お、なんだろ」
「女になっても男の時のままの幼なじみでありがとな」
「夏日の感謝の言葉……噛み締めとこ」
「噛み締めとけ噛み締めとけ。で、態度を変えれたはずだけどなんでそうしなかったんだ?」
「正直な、男の時のままでくる夏日にどう対応しようか本気で悩んだ。夜寝れないぐらい。
でもまあ、夏日のためにもそのままの関係でいいかなという考えになった訳ですよ」
「なんだそれ」
「これまで普通に話してたやつが急に態度変えてきたら嫌だし傷つくだろ? そう感じてほしくないなと思って」
「なるほどな。そんなとこまで考えてたのか」
「そーだぞー誰かさんに比べてちゃんと考えてるからな」
「おい、誰かさんって俺だろ」
「あれ? 自覚あったの?」
「あるわ! お前バカにしやがって、そんなやつにはこうだ!」
「うわっ、ちょ、バカ! 胸押し付けてくるなって!」
「嫌だ。もっとやってやる」
「ちょ、俺が悪かったから。許してください。みんなに見られてるから!」
「許しません」
「ごめんなさい許してくださいぃぃぃー」
冬火&奏 (うわーイチャイチャしてるー)
周りの男子 (歩死すべし。後で干すか)
周りの女子 (青春してるなーいいなー)




