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第32話 夏日拗ねる、そして奏に春木罰を受ける。

春木視点でさぁ

 春木視点

 紅月家にて



「兄ちゃんごめんって」

「知らん。うるさい。黙れ」

「夏日ちゃんがあんなに恥ずかしがるとは思わなかったんだ。ごめん」

「知らん」


 あちゃー。どうするか。あのあと散々煽って、合計四曲歌わせたのがダメだったかー兄ちゃん完全に拗ねてる。歌い終わってからずっとこんな調子だ。まあ、歌い終わってからなのが兄ちゃんらしいと言うか。言うともっと怒りそうだから言わないけど。

 さすがに、映像撮ってそれを本人に見せて「かわいいー!!」とか「ほら、まだまだいける!!」ってやったのはやりすぎたと反省してる。


「ほんと許して」

「うるさい」

「僕もふざけすぎた」

「知らん」


 うーむ。どうするか。いつもやられてばっかりだからたまには仕返しだ、と思ってやりすぎたからなぁ。これが姉ちゃんだと、甘い物とか洋服とかでどうにか出来るんだけど、兄ちゃんそんなの全然無いからなぁ。多少の興味は持ってもいいだろうに。与えられた物ならなんでも着るからなぁ。

 うーん。しかも兄ちゃんこうなると曲げないからなぁ。この前兄ちゃんが自分用に買ってきたおはぎ食べちゃった時なんて、三日ぐらい会話してくれなかったからなぁ。スーパーとかじゃなくて、兄ちゃんのお気に入りのお店のやつだったから

 なおさだった。まだ今回は会話してくれてるだけマシかなぁ。


「なーなー兄ちゃん?」

「うるさい」

「どうすれば許してくれる?」

「黙れ」


 全く聞く耳を持ってくれない。うーむ。こりゃあどうするべきか。


「夏日ちゃん、ごめんなさい」

「……知らん」


 ん? おおっと、奏さんはいけそう。だいぶ迷ってる。いけ! 奏さん! あと一押し!


「反省してます。次からしません」

「……本当か?」

「うん」

「奏は……許す」


 結構な溜めの後、奏さんは許された。おおっと、これは俺完全に拒否されてる。どうしたものか……


「兄ちゃ「うるさい」


 あ、これもうだめかも。あーこんな事ならしなければ……いや、無理だな。あそこまで縮こまってる兄ちゃんみたの久しぶりだったからどうしても無理だった。


「ごめ「しゃべるな」


 完全拒否。うーん。奏さんにどうにか助けを……!


「奏に言わせるのもなしだからな」

「うぐっ」


 八方塞がり。


「だいたいそんな浅はかな考えはお見通しだっての」

「ぐぐぐ」


 どうすれば……


「夏日ちゃん、そろそろ許してあげ「お前の頼みでも無理」


 見かねた奏さんがフォローに入るが無理かぁ。


「ちなみに奏は今日も俺と寝てもらうからな。罰として」

「えっ」


 くっ。奏さんに大ダメージ。仕方ない。兄ちゃんに言うとどうなるか分からないけど、許して貰うためだし言うか。


「兄ちゃんに許してもらえるならなんでもする!」

「はぁ? そんなので許してあげ……ふむ。そうだな」


 おっと? これは許してもらえるかな?


「じゃあ、お前も俺と一緒に寝ろ。俺のベッドデカいから3人でもいけるだろ」

「え?」


 ちょっと兄ちゃん?


「今回はそれで許してやる。いつまでも奏の前でみっともない姿見せるのもあれだし」

「へっ?」


 待って、え?


「多分春木にはこれが一番堪えるだろうし」


 いや、そりゃあ堪えるけど。前なんて全然寝れなかったんだから。


「待って、奏さんはいいの?」

「今は罰を受ける身だから」


 いやいや、奏さん!?


「さ、飯作るかな。もういい時間だし」

「僕も手伝う」

「ちょ、待ってぇぇぇぇぇぇ!!」


 ――――――――――


「うーん、初めて女の子の部屋に入るのがこんな事になるとは……」

「文句なら過去の自分に言え」

「いや、別に嫌味で言ってるわけじゃないんだよ! というか、想像してたより男の子みたいな部屋だね」

「そうか?」

「うんうん。……あっ」


 夜、地獄の時間になってしまった。興味深そうに兄ちゃんの部屋を見回す奏さん。確かに兄ちゃんの部屋は物が少ないし、ぬいぐるみのようなかわいい系は無い。本棚にギッシリと本が詰め込まれているぐらいだ。まあ、それは兄ちゃんが本当に少し前まで男の子だっただけなんだけど、兄ちゃんに止められているから言うことは出来ない。

 奏さんは部屋を暫く見回していると、ハッと何かに気づいた様子で固まった。そして深刻そうな顔している奏さんを見ていると、言いづらそうに何度か口を開けたり閉めたりを繰り返したのち喋り出した。


「不躾に部屋を見られるのは嫌だよね……ごめん」

「へ?」

「いくら夏日ちゃん自身が言ったとは言え夏日ちゃんの気持ちを考えるべきだったなぁ……ごめんなさい」

「んんん? ……ああ、そういう事か。俺は別に気にしないぞ」

「そ、そう? よかった……」


 別に見られても困るようなもの置いて無さそうだしなぁ兄ちゃん。見られたとしても堂々としてそうまである。


「さて寝るか。ほら、ここにこい奏」

「は、はーい」

「春木も」

「はい……」


 自分がベッドの中に入り、掛け布団を持ち上げ自分の横を叩いて奏さんを呼ぶ兄ちゃん。俺はどうにか壁になれないか気配を消していたが、なる事が出来ず大人しく兄ちゃんの布団に入った。うわ、兄ちゃんのいい匂いが全方位から匂う。寝る並びとしては兄ちゃんが右端、奏さんが真ん中、俺が左端。まだ、兄ちゃんが近くないだけマシか……


「!? なっ、夏日ちゃん!?」

「なんだよ。別にいいだろ」

「いやっ、ダメだよっ」

「今日のお前は」

「はい……何も言いません……」


 兄ちゃんにお腹に手を回され抱きつかれた奏さんが抗議の声を上げるが、抵抗虚しく無力化され顔を真っ赤にしながら兄ちゃんにされるがままになった。


「春木君……もうちょっとこっちで寝ないと風邪引くよ」

「え、俺は別に」

「春木、くん? こっち向いてくれないかな」

「はいいっ」


 見た目的には嫌がる女の子を無理やり抱きつく女の子という、凄く目の保養になる状態の奏さんに背を向けて、漂ってくる二人のいい匂いをどうにか心を無にして耐えていると奏さんにパジャマを少し引っ張られた。どうにか断ろうとしたが、後ろから物凄い殺気を感じ咄嗟に言う事を聞いてしまった。


「ど、どうしよう。夏日ちゃんこのまま寝ちゃったんだけど……」

「あぁ……兄ちゃんは寝付きが凄くいいから……」


 振り返ると眉をへの字にして困った様子の奏さん。どうやら俺と奏さんが話をしている間に兄ちゃんが奏さんの首筋に顔をうずめて気持ちよさそうに寝たみたい。いくらなんでも兄ちゃんそれは無責任だと思う。


「その、えっと、な、夏日ちゃんの柔らかい物が背中に……あの、ちょ助けて」

「あー」

「あと抱きつかれてるから夏日ちゃんの匂いが凄く濃くて変になりそう……」


 耳まで真っ赤にして涙目で俺に助けを求めてくるが、正直申し訳ないけどそんな姿が物凄く庇護欲を掻き立てられる。そんな目で見てこないでほしい。

 気持ちはよく分かる。ただでさえ兄ちゃんのベッドの中で匂いに包まれているのに、本体に抱きつかれているせいでもっとヤバいのだろう。背中に当たってるらしいし。でも、助けを求められて何も出来ない。


「えーと、俺にはどうする事も……」

「ゔぅーど、どうし――ひっ!」


 必死に状況を改善しようと奏さんが考えていると「んん……」と流石に変な体勢は寝づらかったのか兄ちゃんがもぞもぞと動いた。突然動いた兄ちゃんに驚きプルプルと震える奏さんが、ネコに触られ動く事も出来ず震えるネズミに見えた。


「えっと……」

「なっ夏日ちゃんの吐息がっ、ぼ、僕の首にっ」

「えと、落ち着いて下さい。寝づらくて動いてるだけなので大丈夫だと思います」

「う、うん……」

「ちゃんと兄ちゃん寝てます。大丈夫です」


 そんなに怯えられたら流石に兄ちゃんでも傷つくと思いますよ。


「んぅ……」

「ひゃぁ!」

「ど、どうしました!?」

「あ、足が僕の上に……」


 うわぁ……兄ちゃん、だいぶ寝相が悪い。これ以上ないぐらい顔を赤くしてギュッと目を瞑る奏さん。


「えー……と」

「え、ちょっ、夏日ちゃん!?」


 どうすればいいか俺が悩んでいる間に、兄ちゃんが最後のひと押しと言わんばかりに奏さんを思いっきり抱きしめた。


「あっ、え、うぁっ……」

「奏さん!!」


 約得という気持ちより恥ずかしさが先にくる奏さんが兄ちゃんの全身を使った抱擁に耐えられるはずもなく、一瞬虚ろな目をした後完全に意識を失ってしまった。健全な男子高校生には兄ちゃんは刺激が強すぎる……もちろんその夜俺は寝れなかった。


 次の日、起きてから暫くの間奏さんは兄ちゃんを見る度顔を真っ赤にし、兄ちゃんの一挙手一投足にビクビクしていて、俺はその光景を奏さんの面目を立てるために心の中にしまっておく事を決意した。

前日の夜は恥ずかしさより困惑が勝っていてなんとか耐えれた奏。

しかし、今夜はしっかりと知覚した上での抱きしめられだったので保たなかったようです。


ちょくちょく他者視点練習していきたい所。

えーまだ1日残ってますので、

学校編しばし待たれよ。

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