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第3話 洗面所でのテンプレ

「はぁ~いいシャワーだった」


 結論から言おう。自分の体では何とも思わなかった。

 どんなに胸が大きくても、どんなにスタイルが良くてもそこに「自分」という魔法の言葉が入ると悲しい事に何も感じなかった。

 しっかし、この腰まで伸びる銀髪をどう乾かすのがいいのか全く見当もつかないな。仕方ない、冬火(ふゆか)にやってもらうか。

 適当に髪をバスタオルで拭くと、それを腰に巻き洗面所の扉を開けた。すると、そこにはトイレに行こうとしていたのか春木(はるき)の姿があり、俺の体を見て固まっている。

 二十秒ぐらい経った。


「おい、春木お前いつまで見るんだ」


 そりゃあ、こんな格好の女がいたら見る気持ちは分かるが、あまりにも長い。

 すると突然


「ご馳走さまでした」


 そんな事を言いながら後ろにまた倒れた。

 まあいいや。放置だ放置。仰向けに倒れている春木をまたいで廊下を歩くと、リビングにいるであろう冬火に声をかけた。


「おーい、冬火(ふゆか)ー髪乾かしてー」

「はいはい。ソファー座ってて」

「了解」


 ソファーに腰を下ろした。


「よいしょっと」


 体重が軽くなったのかソファーの沈みが浅い。今度体重はかってみよう。


「じゃあ髪乾かすよー……ちょっと!」

「ん?」

「ん? じゃないわ。服着ろ服」

「いつもシャワー上がりはこの格好だろ? どうした急に?」

「どうした急に? じゃないわよ。今夏日(なつひ)は女の子なの」

「それがどうした」

「その格好はシャワー上がりの女の子の格好じゃない!」


 ビシッ、と音が出そうなほど真っ直ぐ指を差され、指摘される。


「いいじゃねーか別に誰も見てないんだから」

「私が見てるし、女の子がおっぱい丸出しなのはどうかと思うけど」

「俺は男だ」

「中身がでしょ。少なくとも見た目は女の子です」

「別に気にならないし」


 体が女になった所で突然羞恥心が芽生えるわけでもないし、見られて困る物でもないし別にいいだろ。


「私が気にするんですぅーそれに、この家には春木がいるんだから。見られたらイヤでしょう?」

「あ、それならさっき見られた」

「はあ?」

「シャワーから上がって洗面所出た時」


 まだ倒れているはずだから見に行ってみたらいい。


「もしかしてその格好で?」

「おう。ガン見された」

「何やってんだか」


 心底呆れたという風に、天を仰ぐ冬火。


「別にいいだろ。弟だし」

「弟でも男です。男は獣なの、今の夏日可愛いから襲われちゃう」

「それを俺に言うのか」

「いいから早く服着なさい!」


 こんな不毛な会話続けるのめんどうだな。


「はぁー仕方ねぇな。これでいいか?」


 近くにあった毛布を掴んでくるまった。


「うーん。もういいや。それで」


 疲れた様子の冬火。


「髪乾かすよー」

「頼んだー」


 ゴー


「しっかし髪長いね」

「俺も思った」


 ドライヤーの音に負けないように大声で話す俺たち。


「今度切りに行ったら?」

「うーん。切りたい所だがこの髪キレイだし、ロングヘアーは男子の理想だからな流石に長すぎだが」


 太ももまである髪は、ソファーに座ってる今だって床についている。

 乾かしている冬火が大変だと思う。その証拠に三十分もやってる今だってまだ全て乾ききっていないし。

 しばらくドライヤーの音が続いた。


「ふう。終わった」

「お疲れ」

「本当、キレイな髪だね。めっちゃサラサラだし」


 今度は俺の髪をヘアブラシでとかしながら冬火が言った。


「そうだな。我ながらいつまでも触りたくなるからな」


 そんな事を話しながら、髪を梳かして貰う気持ちよさから眠くなってきた。


「俺は眠くなったから後はよろしく」

「ちょっと! 起きててよ!」

「……ぐう」

「寝るの早っ!? まあ疲れてたんだね。急に体が変わったんだし。おやすみ」




 今朝だけで様々な事を体験して疲れたためか冬火の言った事をほとんど聞き取れず俺の意識は沈んでいった。

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