第23話 本って買いすぎるよねー
「本買いすぎた……帰れるか?これ」
両手がジンジンと痛く、赤くなっている。いくらなんでも力弱くなりすぎだ。本屋さんの近くの公園のベンチに座りながら前との違いをひしひしと感じていた。
「はぁースマホ持ってきてないしなぁ」
家でごろごろしてたら冬火に「たまには外に出なさい」と言われてちょっと遠くの大きな本屋さんに本を買いに行ったまではよかったのだが、新刊やら気になっていた本やらを買ったり、表紙に一目惚れした本を買ったりしてたらいつの間にか物凄い量になっていた。
いやーまさか万単位で買うとは考えてなかったなー。
買って、本屋さんを出るまではルンルンだったけど、少し歩いて冷静になると凄いバカな事をした事に気がついた。荷物を持ってもらうために春木を呼ぼうにもスマホは家で充電したまま忘れてきた。
かろうじて時計をつけてきたのがまだ救いだった。さすがに時間が分からないとツラい。徒歩できたのも失敗だった。
どうして今日に限って急に歩きたくなったんだろうか……
「はぁ、最悪だぁー」
仕方ない、休憩しながらゆっくり帰るか。ほんとなにやってんだか。ベンチにずっと座っていても仕方がないので覚悟を決めて本の入ったビニール袋を持った。
「重い……」
のっそりのっそりと歩き始めた。
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「あっっつー」
ひいひい言いながら歩くこと十分。まだまだ家は先だが、暑すぎて死にそうだ。夏かよ。暑すぎる。汗が止まらない。風もないからかなりキツい。休憩しようにも、日光を遮る物がなくてツラい。
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「あああああああしぬうううううう」
太陽がカンカンに照りつけるなか、歩き続けて三十分。いろいろと限界になってきた。というか、限界。もう無理。なんでスマホ忘れたんだよ。こんな時に限って。
少し前から周りの視線が急に増えたなと思ったら、汗でTシャツがモロに透けてブラが見えてた。ちなみに今日の下着は新橋色って言う色で、どう見ても水色にしか見えないのに緑色らしい。綺麗なんだけど、「緑……か?」って色だ。
その……な。別に見られてもいいんだけども、目の前でひいひい言ってる女子がいるんだから手伝ってほしいかなって。声かけづらいのも凄く分かるけどさ。
そんな感じで恨みを心の中で垂らしながら歩道を歩いていたら突然、横に車が止まった。窓が開くと、そこには明里ねえの姿が。
「夏君ー大変そうだけど乗ってく?」
「乗る!」
「じゃあ夏君は助手席で荷物は後ろに置いてねー」
「了解」
ああ、俺の前に女神が舞い降りた。車の中涼しぃー! ナイス、明里ねえ。
「で、夏君は何してたの? 見たら分かるけど」
「本を買いすぎた」
「だよねー夏君たまーにやるよね。春君とか歩とか呼ばなかったの?」
「スマホ忘れた」
「そっかー。しかし、凄い汗だねーもしかしてずっと歩いてたの?」
「……三十分以上歩いてた」
時計を見ると、想像していた以上に歩いていた。
明里ねえが居なければ、その内熱中症で倒れていたかも知れない。
「ブラ透けてるのは仕方ないかぁ。この暑さだし」
「仕方ない」
「ただ、分かっててなお隠そうとしないのはどうかと思うけどね」
「見られても別に気にしない。男だし」
「中身は。でしょー? かわいいんだからそこらへん気をつけないと」
「善処する。疲れて眠いから着いたら起こしてー」
「はいはい。了解。おやすみー」
「おやすみー」
明里ねえに家まで送ってもらった後、明里ねえから事情を聞いた冬火に呆れられた。




