第20話 冤罪!?
──まあこの学校では髪を染めたりカラコンを入れたりする事などは禁止されていないのだが、
初日からどちらもするとは大した度胸だな」
マジか、禁止されてないのか。この学校校則ゆるゆるだけど大丈夫か心配になるな。スマホもOKだし。生徒の自主性を鍛えるためとか言ってたが。でもそういえば、髪を染めたりカラコンしてる人見なかったな。あれか、禁止されてないからこそやる人少ないってやつか。やったらダメと言われたら余計したくなるやつ。
「おーい。聞いてるかー?」
だとしても、ゆるゆるすぎじゃないか? 近年稀に見るゆるゆる校則だよな。ん、でも待てよ。俺の髪銀髪だから、黒系にしか出来ない?
ふむ。だとすれば何色がいいか。……普通に黒か。カラコンもなぁ、元から赤眼だからなぁ。青ぐらいか? 青がいいか。まあ、どっちもいいことないからやらないが。
髪を染めるのは髪や毛根が傷むし、カラコン。というか、コンタクトが目にあまりよくないらしいからな。
体によくない事は極力したくない。
「紅月夏日」
「ひゃい! な、なんでしょう」
「お前に言っている」
「俺ですか?」
ああ、染めてるように見えるのか。普通いないからな。こんな髪と目の色。なんか周りからボソッと、「わお」とか「俺っ子だと……!?」とか「俺っ子とはそそるなぁ」って声が聞こえた気がしたが気にしないでおこう。特に最後の。
「そう。お前だ。なんで登校初日から髪を染めてるのか、カラコン入れているのかの理由を聞こうか」
「染めてないし、カラコン入れてないです」
「あ゛? しょーもない嘘はいいんだが」
怖い怖い!! オーラが! 思いっきりガンとばさないで下さい。
「だから、この髪と目は元からです。触ってみます?」
元からっていう表現は厳密には違うが。一ヶ月前だけど。混乱させるだけだから言わないけどな。
「じゃあ触るぞ」
「どうぞ」
言葉とは裏腹に、凄く優しい手つきで髪を触る先生。
「染めムラも髪の傷みもないだと……!」
「染めてないでしょ?」
「こうして見る限りでは……そうだな何がさかしてるようには見えない。カラコンもしてないのか?」
「してません」
「そうか……知らなかったとはいえ高圧的な態度をとったな。すまない」
「いえいえ。慣れてますから」
慣れてないけどな!! こうやって言っておけば、先生が責任をあまり感じなくなると思ったからだ。後ろから冬火の「嘘は止めなよ」っていう視線が飛んできてる気がするが気にしない。
「昔から学年に一人は入学式に合わせて髪を染めたりする奴がいてな」
「大変なんですね……あの、先生? もう髪を触る必要はないのでは?」
会話している最中も俺の髪をずっと触っている先生。さすがに気になった。
「ん? ああ。さらさらでずっと触れるぞ」
いやそうじゃなくて。
「分かります? 夏日の髪ずっと触れますよね!」
おい冬火、やめい。急に入ってくるな。
「このさらさら感に虜になりそうだ」
「触り始めたら止まりませんよね! 双子なのにどうしてここまで差が出るのか」
ちょっとマジでやめて。周りからの「触りたい」って視線がヤバい。
「みんなも触る?」
冬火!? 余計な事言うな! ちょっとこいつ止めて。歩の方を見るが、「諦めろ」という目で見てくる。最後の頼みの奏は……ダメだ。あいつはあいつで女子に囲まれている。
クソォ! 助けてくれる人がいねぇ!
「いいよね?」
よくねーよ!
「いいって。みんなほらー」
そう言いつつ俺の長い髪の束を持ち上げた。はぁ。もういいや。好きにしろ。
その後、十数分間に渡り髪をいじりつづけられた。
自己紹介までいかなかった。
すみません。




