第2話 イタズラ
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「よしっ。じゃ行ってくる」
「はあ。行ってらっしゃい」
そんな会話をしつつ俺は冬火の部屋の向かいにある春木の部屋のドアを開けた。
ベッドで部屋の主は気持ち良さそうに寝ている。
寝ているか確認するために近づいていたベッドから離れて深呼吸。そして、ベッドに向かってジャーーンプ!
ドンッ!
「ぐえっ」
カエルの潰れたときのような声がした。そしてそのまま俺の胸を鼻の辺りに押し付ける。
「ぐぶ……ぐぼっ!? もごもご!」
何かを目で必死に訴えかけてくる。
「あ、俺夏日な」
「ば? ほぶばばぶぼぼ」
何言ってるか分からないが、そんなわけないとか言ってるのだろうか。
「えーと、じゃああの本棚のスポーツ系の本の裏にはお前の秘蔵本があるよな。隠してても掃除するときに分かるんだからな」
「ぶ!?」
めっちゃ驚いてる。気づかれて無いとでも思っていたのか。
「信じたか? さすがに冬火には言ってないから感謝しろよ」
うなずいている。心なしか目で感謝を伝えているようにも見える。
「どうだー? 胸を押し当てられるのは」
「ばぶぼぼぶ」
相変わらず何を言っているか分からない。
「そーかそーか感謝しろよこんな事そうそう無いんだから」
「ぼぶ……ぶ!? ぶぼばぶぶぼ!!」
そろそろ息が苦しくなってきたのだろうか。俺を剥がそうとしている。
「胸に包まれてるんだ。うれしいだろう?」
「ぼ!? ぶぶぼぼぼ!」
「フフフ。アハハハハハハハ!」
焦る春木を見るとちょっと楽しくなってきた。
いつまでこうしていようか。
「いい加減やめなさい」
そんな事を考えていると、凍てついた声とともに俺の首筋に強い衝撃が走った。
「カハッ」
痛みによって薄れていく意識の中、最後に見たのは完全に目が据わっている冬火だった。
お前、いつの間にそんな技を……
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「う、うーん。ふあああ」
いつの間にかリビングのソファーで寝てしまっていたようだ。
「って、うお!」
起き上がろうと目を開けると、目の前に冬火の顔があった。
「な、なんだよ」
「ほどほどにねって言ったのに」
「え? ……あ」
思い出した。そういえば春木はどうしたのだろうか。
……いた。めっちゃこっち見てる。鼻にティッシュを入れてるってことは鼻血出したのか。
ふーん、へー
「どうだった? 春木? 胸は」
笑顔を添えて。
「ブフッ」
あ、ティッシュが取れて床がとんでもない事に。
「ちょっ、春木大丈夫!?」
「よし、飯食うか。春木はそれの片付けしてからな」
とは言ったものの、春木の片付けが終わるまで待たされた。
『いただきます!』
「この味付けは兄ちゃんの味だ。本当に兄ちゃんなんだね」
「私も半信半疑だったけど夏日だね。このおいしさ!」
「信じてなかったのか」
「「だってねえ?」」
「まあ、見た目別人だからな」
「「うんうん」」
そんな他愛の無い会話をしながら朝ご飯を食べるのだった。
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「では、ただ今より紅月夏日のこれからについての議会を始めます」
「「はーい」」
朝ごはんを食べて直ぐに、冬火の言葉とともに会議が始まった。
「まあ、そう言っても学校に話をしたり服を買いに行ったりするだけだろうけど。服は今日買いに行くとして学校どうしよう……」
「服は別に買わなくてもいいんじゃないか?」
「ダメ。ちゃんと女の子用の服着なさい。私の服ってのもダメだからね」
「よく俺の考えてる事に分かったな」
「夏日の考えがワンパターンなだけ」
うーん。そうなのか。
「じゃあ移動は明里ねえに頼もうか」
うちの向かいに住んでいる真矢家とは親どうしが中学校からの付き合いで、その子供の俺たちも幼稚園以前からの付き合いだ。
偶にお互いの家に泊まるほど仲がよく、結局お世話になっている。
明里ねえは真矢家の長女で大学生。それと、明里ねえの弟で俺達と同い年の歩とは幼稚園からずっと一緒で、春からの高校も一緒だ。
「じゃあRINEしとく」
「「オッケー」」
連絡連絡~っと。
直ぐに既読がつき、返信によると少ししたらこっちに来ようとしていたらしく、まだ時間があるので日課のシャワーを浴びる事にする。
「じゃあシャワー浴びてくる」
「あ、夜に体とか髪の洗い方ちゃんと教えてあげるから覚えてね」
なぜかやる気満々な冬火の声を背中で聞きながらシャワーを浴びに行った。