第10話 大人向けの本は大きくなってから
「ふう~。勉強終わった~」
冬火が二階から降りてきた。
「夏日~何読んでるの〜? ……って本当に何読んでるの!?」
冬火が俺が横になってるソファーの隣にある机に積み重ねている本を見て言った。今俺が読んでいるのは水着の女の人がいっぱい載ってるいわばグラビア雑誌を読んでいる。
「え? あ、これか」
「そう。いや、何読んでいるのかは分かるけど堂々と読むのは控えた方がいいと思うよ」
「別にいいじゃねーか」
「せめて隠して」
「はいはい」
とりあえず机の下に入れた。
「全然見つかって動揺しないじゃん」
「そりゃあまあ親ならともかく妹に見られてもなあ」
いろいろな恥ずかしい出来事共有してるからエロ本読んでるのバレる程度では動揺しないのだよ。
「それで……どうだった?」
「ん? 何が?」
「読んでみてって事」
「あーえーっとな。何も感じなかった」
悲しきかな。何も感じないんだよ。普通の本みたいに見てしまった。
「そうなんだ。しっかしびっくりしたよファッション誌みたいに見てるから」
「仕方ないだろ。あ、お前も見る? ほいっ」
これでもし冬火が読んで何か思う事があったら俺がおかしいだけで、何も感じなければ俺の反応は普通というという事になるはず。
ん? 待てよ。俺は元男で冬火は最初から女だからこの仮説成り立たないか? まあいいや。
「ちょ、ちょっと! 投げないでよ! じゃ、じゃあ見るよ」
俺が投げたのをキレイにとった冬火が言った。最初から俺が投げるコースを分かってたような取り方したな。ここで双子パワーを発揮しなくても……俺は別の本を机の下から取り出して見始めた。
数分後
「かわいい女の人ばっかりだったね」
少し顔を赤くした冬火が言った。
「どうだった?」
「きわどいのとか手で隠してるのとかあって見てるこっちが恥ずかしくなった」
「まあそういう本だからな」
しかし、そうなると俺は何を読めばいいんだ?
「普通に小説とかマンガ読みなよ」
声に出てたか。
「出てないよ。顔には出てたけど」
うーん。そうかなぁ。
「他の人が見ても分からないような少しの違いだけどね。他の人は騙せても私は騙せません」
おお、さすが双子。試しにお互いしゃべらずに会話してみるか。
「了解~」
◁◀◁◀◁◀◁◀◁◀
「だめだ。分かんない」
お互いに顔を見つめ合うこと数分。全く分かりませんでした。当たり前だ。分かるわけ無い。分かったのは冬火がおかしいという事だけだった。
「そうでもないと思うけどなぁ」
「もう心の声よむのやめてくれません?」
こっちが疲れてきた。
「分かったよ。じゃあOFFにする」
え? ONとOFF切り替えれるの?何それめっちゃ便利じゃん。
「残念ながら対夏日限定だけどね」
怖いな。知らない間に心を読まれている事があるのか。今度からは気を付けよ。
「大丈夫。夏日普段何も考えずに生活してるから」
それは良かったけど不本意だな。多少は考えて行動してるわ。ん? してるっけ? してるよな? しかし、恐ろしいな。何だよその能力。どうにか顔に出さないようにしないと。
「顔に出てるよ」
「!?」
俺の中の冬火の凄さと怖さが一段階上がった。
「兄ちゃん、姉ちゃんおはよー腹減ったー」
冬火の能力を一つ知った所で春木が起きてきた。
「おはよー。もう昼だけどな」
「嘘!? ……本当だ」
一回時計を見て、目を擦ってからもう一回見て驚く春木。
「しかし、よく寝たね。昨日徹夜でもしたの?」
ほぼ推理が当たってる冬火。凄いな。
「ま、まあそんな感じ」
何を焦ってるんだ。焦る事じゃないだろ。
「数時間の睡眠でクマ取れるって凄いな」
春木の目の下には数時間前にあった真っ黒いクマが全く無かった。どれだけ深い眠りについてたんだ。
「クマ?」
「え? ああ、春木が俺と昨日一緒に寝た影響でな」
「え?」
「お前らから逃げて春木の布団で寝たから春木は俺の体のせいでずっと寝れなかったんだってさ」
「ちょ、兄ちゃん!? 誤解されるような言い方止めて!」
「だってそうだろ? いろんな所当たるとかいい匂いがしたとか言ってたじゃん」
「春木」
「ひゃい!!」
ビクッっと効果音がなりそうなぐらいビビる春木。今、冬火の後ろに阿修羅でも見えそうなぐらいオーラが出てる。
「何もしてないよね?」
「するわけ無いじゃないですか!!」
「ほう」
「ひっ」
咄嗟に敬語になるほど春木の慌ててる姿が見てて面白い。
「そして夏日」
「ひゃい!!」
お、俺もか!? 冬火が怖い。圧がヤバい。
「昨日行動には気を付けてって言ったよね」
「は、はい。聞いてました」
「じゃあなぜ春木の所に行った」
「そ、それは冬火と明里ねえが俺のベッドで寝るからです」
「私の部屋でいいじゃん」
「冬火の部屋で寝たら、何されるか分からないので」
「うっ」
よし。効いてる。
「しかも、春木体温低いからくっつくと気持ちいいからです」
「それは理由にはならない」
さいですか……
冬火からの説教はその後三十分続いた。
「あ、春木~」
「何?」
「お前胸が大きい女の人が好きなんだな」
「ブフッ!! な、なぜ急に」
もしかして俺の体春木の好みにドンピシャだったりして。そんな事ないか。
「いやーだって、お前持ってるの全部そうだもん。ほら、これも。あ、これもそうだ」
机の下をごそごそしながら言った。
「何でそんな所に!?」
「俺が借りて見てた」
「いつの間に!?」
「春木が寝てる間に」
春木が崩れ落ちて「俺の秘密が……」とかとか言ってる。
「どこで手に入れたんだ? これ」
「え?ああ。見た目が高校生以上に見えるみたいで普通に買えた」
身長百八十センチメートル近くあるよなお前……顔も整って大人びているから高校生以上に見えなくもない。男の時から身長があんま変わってなくて良かった。これ以上春木と身長離れたら泣く。腹いせに脚を思いっきり蹴ってやった。
「痛ったあ!!」
春木の脚はめちゃくちゃ固かった。蹴った俺の脚が赤くなってる。春木はケロッとしている。くっそ。サッカーで鍛えられてるのか。
他にも殴ったりつねったりしたが全く効果がなく、春木はケロッとしていた。
女の子がエロ本を読む........ロマンがありますね。