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― お花見くらい好きにやらせて! ―

「はあ……」


 私は自分の部屋の机で突っ伏していた。

 実はあの後、遊戯部を申請したのだがあれは却下された。

 理由としては令嬢の教育として必要性を感じなかったからだという。

 なんで、自衛部はよくて、遊戯部がダメなのかはわからないけどとりあえず私はあきらめることにした。


 トントンッ


「あのぅ、セレスティア様いらっしゃいますか?」


 扉の方からニーナの声がした。

 こんな時間に何の用だろう?


 扉を開けると心配そうにしているニーナが立っていた。


「どうしたの?」

「いえ、昨日の件で今日もなんだか元気がなさそうだったので……」


 本当にこの子はどこまでいい子なのかしら……

 私はニーナの頭に手を乗せて、微笑んで見せた。


「心配させてごめんなさいね、私ならもう大丈夫よ」

「本当ですか?」

「ええ、本当よ」

「それならよかったです……」


 それを聞いたニーナはホッとした表情をしている。


 そこまで心配させてたのか……

 なんか、悪いことしたなぁ。

 お詫びにどこかに連れて行ってあげたいけどどこかいいところないかな……?


「ねぇ、ニーナ、どこか行きたいところないかしら?」

「行きたいところ、ですか?」

「ええ、だいぶ心配させていたみたいだから、お詫びにどこにでも連れて行ってあげるわよ?」


 それを聞いたニーナはものすごく真剣に悩み始めた。

 あまりにも悩んでるから「無理して考えなくてもいいけど……」と言うとニーナは思い切り首を横に振り、さらに考える。


 なにをそんなに考えているのかな……?

 前みたいに街に行くとかでもいいと思うんだけど……


 こんなに悩んでいるニーナを見ているとなんだか逆に不安になってきた。

 そして、何かを思いついたのか、ニーナがキラキラの笑顔を浮かべながら顔を上げた。

 私は思わず、生唾を飲み込んだ。


「次の長期休暇の時にでも私の故郷に行きませんか?」

「ニーナの故郷……?」

「はい、時期的にも町の花園がきれいな花を咲かせていると思いますので」


 花、か……

 まあ、そうね、春と言えば花見だしちょうどいいかも。

 前世ではゲームばっかりでそう言ったアウトドア系の遊びとかしてなかったら楽しみね。


 一人でニヤニヤしながら花見の光景を想像しているとニーナが心配そうにこちらを見つめていた。


「やっぱり、無理でしょうか……」


 どうやら、ニヤケ顔は見られていなかったみたいだ。

 それはよかったが、そのせいでニーナは断られると思ったらしい。

 目が少し潤んでいる。


「いやいやいや、行ける、行けるから泣かないで!」


 ふぅ、危うくニーナを泣かせてしまうところだった……


 私はとりあえず、ニーナを落ち着かせると部屋に戻り、そのままベッドで眠りについた。






 あれから二週間。

 ついに待ちに待ったお花見の日。

 最初はニーナとリリアの三人で行く予定だったがどこからか聞きつけたエリック、クライヴが同行することになった。

 それに加えて、エリックの付き添いのクリス、私の保護者という名目でヴァルフィも一緒だ。


 はぁ、もうこのメンツ嫌な予感しかしない……


 私はそんな不安を抱えつつも馬車に乗り込んだ。


 とりあえず、何事もなく出発できると思っていた私は馬鹿だった。

 というのもこの馬車は四人乗りで私、リリア、ニーナが乗り、あと乗れるのは一人。

 そこで争奪戦が勃発してしまった。

 クリスとヴァルフィは静観していたが、エリックとクライヴはお互いに譲る気はなさそうだった。


「はぁ……」


 しかし、この二人がここまで馬鹿だとは思わなかった。

 もし仮にニーナの隣に座れたとしてもこれだけ心証を悪くすれば自分の不利になるとは思わないのだろうか。

 ニーナの顔を見てみたが、案の定他人から見てもわかるほどイライラしているようだった。


 はぁ、仕方ない……

 二人には悪いけど……


「御者さん、出してください……」

「えっと……よろしいのですか?」

「ええ、あっちにも四人乗れるので問題ないです」


 それを聞くと御者さんは馬に鞭を打ち、馬車を動かした。

 チラッと言い合っている二人を見てみたが、どうやらまだ気づいていないようだ。


 あの二人は本当に何がしたかったのだろう……


 私は馬鹿な二人に呆れつつもニーナたちと談話しながら目的地へと向かった。


 十分ほど場所を走らせたところで私は思い出した。

 私が乗り物に弱いことを。


「うぅ……気持ち悪い……」


 ああ、せっかくの遠出なのに幸先がいろいろと悪すぎる……


 ニーナたちが心配そうにこちらを見ている。

 私はそんな二人をこれ以上心配させないように笑顔を作ってみようとするが、口角を上げることすらままならなかった。


「お嬢様……もし無理そうでしたら私の膝使いますか?」


 リリアはスカートを軽く叩くと「どうぞ」とこちらを見つめてくる。

 私はそれに吸い込まれるように横になった。

 その時、視線に入ったニーナがなにやら目を大きくさせていたが、私にはそれを気にする余裕はなかった。






 体が軽く左右に揺らされた。


 なんだろう……?

 もしかして、地震かしら?

 ああ、でもなんだか目を開けたくない……


「お嬢様、そろそろ着きますよ」


 誰かの声がする。

 誰の声だろう?

 聞きなじみがあると言えばあるけど思い出せない。


 また、体を揺らされた。


 もう、いったい何なのよ!

 私はまだ、寝てたいんだけど……


 私は薄目を開けて眠りを妨げる誰かを確認する。


「よかった、起きられましたか」


 ホッとした顔でかわいい女の子が私のことを見下ろしていた。

 頭の下が柔らかい。

 確認すると、どうやら私はこの娘の膝の上で寝ていたらしい。


「なんで、あたしはあなたの膝の上で寝てんの?」

「お、お嬢様……もしかして、寝ぼけていらっしゃいますか?」


 寝ぼける……?

 なにを……あっ!


 そこで私の意識はやっと覚醒した。


「そうだった私、今お嬢様だった……」


 まさか、ここまで寝ぼけるとは思わなかった。

 リリアのことまでわからなくなるなんて……


「大丈夫ですか、お嬢様?」

「え、ええ、大丈夫よ」


 そう言うとこちらを見てクスクスとリリアが笑っている。


 もしかしてよだれついてる?


 手で口元を確認するが、何かついてる様子はなかった。

 口以外についてるのかとあちこち確認するが、何もない。


 リリアは一体なんで笑ってるんだろう?


 少し、心配になった私はリリアを凝視してみる。

 それに気づいたリリアが顔を赤くした。


「お、お嬢様、何か御用でしょうか?」

「用ってほどじゃないけど、なんで笑ってたの?」

「いえ、寝ぼけてる時のお嬢様がなんかお嬢様っぽくなくて」


 ああ、そういえばお嬢様ということ忘れて前世の時のしゃべり方してたかも。

 それがリリアにとっては新鮮だったってことか……

 よかった、みっともないところをさらしたかと思った。


「あ、あの、お嬢様?」


 リリアが少しおびえた様子でこちらを見ていた。


 なんで、そんなに怯えてるんだろう?


「なに、そんなに怯えてるの?」

「い、いえ、もしかして何か気に障ったのかと思いまして……」


 ああ、そういえばセレスティアって悪役令嬢だったわね。

 最近、ニーナたちと話してたからすっかり忘れてたわ。


 私は「大丈夫よ」と頭を撫でると体を起こした。

 目の前にいるニーナはどうやら寝ているようだ。


 生徒会とかで忙しそうだし、疲れてるのかな……?

 やっぱり、今回の遠出やめといた方がよかったかな?


 そんなことを思いながらニーナの顔をマジマジ見ているとその視線に気づいたのかニーナが目をこすり、目を開けた。


「あっ! すいません! 着きました?」

「いや、まだ時間かかるみたいだからもう少し寝てていいわよ」

「いえ、セレスティア様が起きてるのに私が寝るなんてありえません!」


 この娘、時々やたらと自分を下げるけど私としては対等に接していきたいんだけどなぁ……

 まぁ、立場的には私の方が上だからこの対応が当たり前なんだろうけど……

 言ってもいいのだろうか、言わない方がいいのだろうか……


「セレスティア様、何か悩み事ですか?」


 ニーナが心配そうにこちらを見ている。


 おっと、また心配させちゃった。

 こうやって、人前で考える癖はどうにかした方がいいわね。


 私は「何でもないわ」と笑って答えるとそのまま他愛もない話をしながらニーナの故郷の旅路を楽しんだ。

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