一人が二人
あれからしばらくして、あの姿がコトリになる不思議な現象について私なりに調べてみた。
まず、わかったことは、あれはどうやら私の使える能力的なものらしい。
なぜそう思ったのかというと、あの後も何回か試した結果、コトリになりたいと思ったらなれたし、戻りたいと思ったら戻れたからだ。
ただ、コトリにはなれたけど、ネコにはなれなかった。
不思議に思って色々と試行錯誤をした結果、ネコに触れてからやってみたらできた。
どうやら触れた動物になれるみたい。
いや、おかしいでしょ……!?
せめてそういう力をあの時にもらったならわかるけど、そんなことはまったく言われてなかったと思うし、この世界に動物になれる力があるなんて聞いてない。
とりあえず、まだまだ分からないことが多すぎるし、もう少し研究が必要になりそう。
「思わぬところで暇つぶしができそうになっちゃった……」
まぁ、こちらとしては願ったりかなったりかな、使いこなせたら色々と便利そうな力だし、何よりも面白い。
ただ、毎回服を脱がなくちゃいけないのはどうしようもないのかな……。
綺麗な夜空が見える、そんな夜に一人で部屋で裸になっている私は、周りからみたらすごく奇妙なんだろうなぁ……。
◇◇◇
次の日、試しにやってみたいことがあって、アーリャを私の部屋へと呼んだ。
今はお昼ご飯を食べた後の休憩時間、といってもそんなに長いわけではないから、急がなきゃ。
「それで、一体何のご用件でしょうか姫様?」
「いや、ちょっと試したいことがあったんだよね」
そういいながらアーリャへとさりげなく触れる。
「よし、ちょっと、いいって言うまで外出ててくれる?」
「……えっと、出ればよろしいのですか?」
「そう、いいって言ったら入ってきてね」
かしこまりました。とアーリャはそのまま何も言わずに部屋を後にする。
少しは聞いてきてくれてもいいのに、と思いながらも私はドレスを脱いでいく、肩に掛かったドレス紐を取り外すと、徐々にその白く透き通った肌が露わになっていく。慣れていないドレスだからか少し戸惑っていると、外から足音が聞こえる。また誰か入ってきてもアーリャの二の舞になるだけだけど、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。
そう思い、急いで脱ぎ終わるとドレスをベッドの上に置いておき、すぐにアーリャになれないかと試みる。
すると、いつもどおりに煙が現れ、晴れるとしっかりと私はアーリャになっていた。
「わぁ、できた……やっぱり人間でもいけるんだ……ってあれ?」
鏡を見ると、おかしな点が一つあった。
アーリャの姿をした私は、先ほど服を脱いだはずなのにアーリャが着ていた服と全く同じものを着ているのだ。
「え、なんで……?」
前回、私の服が消えたことを考えると、今回も同じように裸でアーリャの姿になると思っていた私は、またもや考えだす。
何か条件があるんだろうけど、それが何かまったくわからない、一体なんなんだろう……?
「あのー姫様? 俺はいつになったら入ってよろしいのでしょうか?」
考えていると、扉の向こう側からそんな声がした。
そういえば考えたままでアーリャを中に入れるのを忘れていた。
「あ、ごめんアーリャ、もう大丈夫だよ? 入ってー」
「はい、失礼します」
一礼しながら扉を開け、こちらに顔を合わせたアーリャは目を見開いたまま固まっていた。
それもそうだろう、自分と同じ姿の人が自分と同じ格好で目の前に立っているのだから、少なくとも、私だったらびっくりして腰を抜かしちゃうよ。
「な、え、俺が、もう一人!?」
「驚いたぁ? 私だよ私、イリーナだよっ」
アーリャだったら絶対しないであろう、悪戯っぽい笑みを浮かばせてポーズを取る。
「は、はああああぁぁぁあぁぁっっ!!!!!?????」