代償
話題を持ち出したのは私。
それは避けては通れない話、私が話さなくてはいけないお話。
アーリャがどう言おうとも、まるで関係がないのだから。
「その様子だと、流石にわかっているみたいだね……?」
「そりゃまぁ、そうでしょうとも」
互いに探るように、けれども探らせることはない。
決して、表情を崩さずに話は続いていく。
「それじゃあ、まぁ早速聞こうか、私の処分は?」
それ以上もそれ以下もない、全てが乗った問いだった。
聞く必要はないとも思った。けど、今この場で聞いておきたかった。
「自由時間の廃止、常に護衛の配備、魔法の結界による守護、大多数の人員による監視、及び身体が治るまでの療養と、俺による説教を毎日くどくどと……」
ずらっと並べられたそれは、まるで自由なんてない。
分かっていたことだけど、やっぱりそれは間違いなかった。
「と、言いたいところですが。そんなことはありません」
「――――えっ……?」
それだけのことがあっても仕方がないと、そう思っていたからこそ、私の口からは素っ頓狂な声が漏れる。
「なんで……」
しかし、その問いに答えることはなく、アーリャは軽く微笑みながらに続ける。
「実際は、身体の療養と、説教。それと護衛が付きます」
「それ―――だけ……?」
どう考えても足りない。おかしいじゃないかと、そう思う気持ちが沸き上がってやまない。
だって、国を守る最重要な兵器とさえ呼ばれたことがある。
だって、私と国民なんて秤にかけるまでもない。
だって、許されるだなんて思ってなかった!!
「――――はい、これで全てです。……ってすごい顔してますよっ、姫様」
そりゃそうだ。自分でもわかっている。
でも、どうしようもないでしょ、そんなの一体どうしろっていうの。
「なんで……? どうやって……?」
「さぁ? まだ確定してないですしわかんないです」
その言葉の意味が分からなかった。
アーリャは一体何を言っているのさ。
「確定してない……ってどういうこと……?」
「簡単です。まだ報告してないんですよ、上に。なのでまぁ、どうなんでしょう?」
しっかりと説明してもらっても、本当に言っている意味が分からなかった。
なんでそんなことに至ったのか、見当もつかない。
「はい……?」
私が今どんな顔をしているのか考えたくもなかった。
多分、よっぽどひどい顔してるんだろうなぁ。
「ええ、本当に俺はどうやら甘いようです」
そう微笑むアーリャの顔は、いつものとおりで、何も変わらない。




