心
つまり、アーリャはこういうのだ。
私が起きてからの私とチーニヤ以外の発言は全部嘘で、元から全ての事情は聴いていたし、そのうえで話していたと。
真っ赤に熱を帯びていそうな顔を両手で覆うしかなかった。
恥ずかしさで死にたくなった。
「……アーリャの馬鹿あぁっ!!」
心からの叫びを、ただぶつけるしかなかった。
そして、そこまでの話を聞いて私は一つ、ようやく気付く。
「えっ……あれ、ってことはアーリャ……怒ってないの?」
ふと、そう口に出してしまう。
けど、言ってから気づいた。そんなわけない。
「怒ってますよ。姫様は本当に自分のことを考えずに行動をしすぎです。そりゃ姫様の力は俺だって承知していますけど、実際そんな目に二回も合えば普通わかると思うんですけど……」
しかしその言葉に怒りは感じられないのだ。
「ごめんなさい……でも、アーリャが怒ってるようには思えなくて……」
「ええ、俺もどうやら甘いようで……姫様に対する怒りなんてあんな姿の姫様を見てから今の元気な姫様を見たら消えていましたよ」
瀕死の私を見て余程慌てたのだろう。余程不安だったのだろう。余程、怖かったのだろう。
その言葉からはそう、感じられる。
だからこその発言なことはすぐにわかった。
「ところで……私そんなぼろぼろだった……?」
この世界の医療は主に魔法だ。
各属性それぞれ、治療専用の魔法というものが存在していて、基本誰でも使うことができる。
ただ、その全ての上位互換であるのが聖魔法、つまり私だった。
あまり、回復系は得意ではないというのもあるけど、これでも自分に対して治癒を使ったはずだ。
だというのに、効いていないということになってしまう。
だとしたら、もっとしっかりと勉強をしないといけないらしい。
「はい、まぁ何で生きているんだっていう量の怪我であることは確かでした」
「そっかぁ……」
私は、これでも自分はそこそこなんでもできると思っていた。
自惚れていたといわれるかもしれないけど、実際なんでもできた。
だから、今回そう言われたのは結構なショックだった。
「それでも、姫様が生きていて、本当に良かった。後であの人たちにもお礼、言ってきてくださいね」
扉の向こうにいる人たちの方へと首を傾ける。
当然、彼らもここにいる皆も命の恩人だ。
どれだけ謝礼をすれば、この気持ちが伝わるのだろうか。
「わかった―――それでアーリャ、お話をしましょうか――――」
一つ深呼吸をして、話題を持ち出す。
その言葉を聞いた途端、アーリャもため息を漏らしたかと思うと、顔つきが変わる。
「本当に姫様はわかりやすいですね。それじゃ、姫様が話したいお話でも一つ……」




