嘘吐きは一人じゃない
全て吐露してから、私はなんてことを言ってしまったんだと、そう後悔する。
だって、目の前にはアーリャだっているのだ。
それなのに……私は。
そう思い、慌てて口を手で塞ぎ、謝罪を述べようとする。
が、その言葉は先に口を開いたアーリャによって止められる。
「姫様……」
その言葉は、叱責するものだと思った。
びくっと一瞬肩を震わせた私は、しかしそうではないと感じる。
その言葉に込められたのは慈しみの心だった。
「……アーリャ?」
なんでそんな風に言うんだと、疑問しか沸かない。
どう考えても、そんなことになるはずがない。
しかし、その考えはアーリャの行動によって完璧に打ち砕かれる。
アーリャは私の傍までやってくると、叩かれると思った私の身体を優しく抱きしめた。
「えっ……?」
訳がわからなかった。何が起こっているのか、まったく見当もつかない。
けれど、その身体は温かく、頼りがいがあり、そして優しかった。
「すみません姫様。実は、全部聞いていたんです」
そして、その次に飛び出してきたその言葉に、私は情けない声を上げてしまう。
「ふぇっ……?」
目を点にして、ぼーっとしてしまう私に、アーリャはそのまま続けていく。
「実はさっきまでのは全部仕組んでいたことなんです。皆さんに、手伝っていただいて……」
そう言って、後ろにいる皆の方へと順々に向いていく。
皆して、頭を掻いたり、舌を出したり、謝罪したりとそれぞれに個性を出しながら、私の方へと顔を向けている。
「えっ、えっ……どういうこと……?」
訳が分からずに混乱していると、それ以上に混乱している人が抗議の声を上げる。
「ちょっと待て!? お前らなんか知ってるみたいに言っているけど、俺もなにも聞かされていないぞっ!?」
私なんかよりよっぽど取り乱し、それでいて慌てているのはチーニヤだった。
そしてそこでようやく私も事態を理解することになる。
「私の方から、説明したしましょうか」
どうどうと混乱しているチーニヤを宥めながらアーリャは話を続けていく。
「チーニヤ様はずっと姫様の看病をしていただいたのですが、その間に俺たちの中で秘密にお話をさせていただいておりまして、そのためお二人のみ状況を理解していないのです」
「はぁっ!?」っと聞かされていなかったチーニヤは文句を言っているけど、言いたいのは私もだ。
「実は、互いに情報交換は済んでいたのですよ、そのあとのお話も」
笑いながらにそういうアーリャを問い詰めてやりたい気持ちと、恥ずかしさで顔が灼けそうなほどになる羞恥心で訳が分からなくなってしまっていた。
「それは、つまり――?」
「はいっ、いい叫びでしたよ姫様っ!!」
にこやかな笑顔がこれ以上腹立たしいと思ったことはなかった。
こういった恥ずかしいことは作者が実際に味わったので本当に辛い。
この気持ちわかる人は同志だ。




