渾身の一撃
「姫さ……まぁぁあああああ!!!????」
唐突に部屋へと入っては叫び始めた彼は、私の両親と仲の良い家柄で、よくこのお城にも来る私の唯一の幼馴染ポジション。名前はアレクセイ・ソコロフ。私は普段からアーリャと呼んでいる。
アーリャは朱色の髪を短く、綺麗にまとめ、その美形と言わざる終えない顔を常に崩すことはない。将来はしっかりとした私の護衛になるらしく、今は剣術、魔術の練習を欠かさず、騎士としての腕も認められていた。
この国では十五で成人を迎えるため、もうアーリャは成人間近とされる。
私とは六つも離れているため普段から大人びた印象を持つ彼は、今までに見たこともないほどに慌てて手を顔の前でブンブンと振っていた。
「……? どうしたのアーリャ?」
私はいつもなら見ることはないアーリャの姿に疑問を覚え、何かあったのかと彼に尋ねる。
「ど、どうしたのと言われましても、いや、これは俺のミスですね、姫様の部屋に許可もなく入るなんて……死んで詫びます」
そういうと彼はいきなり、腰に携えていた片手剣を抜き取り、自身の首元に突き立てる。
アーリャがいきなりしようとしたことに頭が追い付かないながらも、止めなきゃという意志が沸き上がり、すぐさま止めに入る。
「な、なにやってるのアーリャ!? いますぐその手を降ろして!!」
「し、しかし……」
「いいから降ろしなさい! 私の言うことを聞いて!!」
自分の中で納得がいっていないのか、剣を降ろして鞘に納めるけど、こちらに目を合わせようとはしてくれない。というか全力でこちらを見るのを避けていた。
「いきなりどうしたの? アーリャ? あなたがあんなことをするなんて……」
「いえ、その、姫様、もしかしてお気づきになられていないのですか?」
「……? 何に?」
依然、床に座り、目を背け続ける彼に私は前かがみになりながら質問を繰り返す。
彼がさっきから何を言っているのか理解ができない。
「いえ、そのご自分の服をご覧になっていただければ、と」
「服?」
アーリャは一体何を言っているんだろう。確かに、ネコとの競争で少しほどけていたりするけど、別に変ったことなんて……。
下を見て見ると綺麗な、肌がむき出しになって見えた。
まだ幼いため、成長していない胸や、子供体系なままのお腹、綺麗な形を保ったみずみずしい足、その全てが露わになっていた。
「ふぇ……!?」
え、なんで!? なんで服が消えてるの? さっきまで着ていたはず。それは間違いないだとしたら……。
さっきまでのは全部アーリャに!?
先ほどまでのアーリャの意味不明な行動を理解し、一つの結論に至る。
「ねぇアーリャ?」
「は、はい姫様、って姫様? あの、お顔が怖いのですが……」
「あら、私の顔が怖いなんてひどいことを言うのね?」
「いえ、もちろん美しいですが、そうではなくて、あの……ひ、姫様?」
「知ってる? 人の記憶っていうのは見てすぐのものは、短期記憶って言ってね?」
「知っておりますが、なぜ今そのお話を……されるんでしょうか……」
一歩、また一歩と彼に近づいていく。
彼は私の護衛として頑張っているが、実際のところ、様々な恩恵もあって、鍛錬も欠かしたことがない私は、彼に何かで負けたことがないのだ。たとえそれが剣術であっても。
「いえ、心配しないで、アーリャ痛い思いはしなくていいよ、一撃で決めるから、怖い思いも大丈夫よ、問題ないから。だから、大人しくしててね」
「待って、待ってください姫様、姫様!!??」
「お休みアーリャ」
私の全身全霊の一撃を頭へと叩き込み、鈍い音と強い衝撃波と共に私の幼馴染、アーリャは成すすべもなく地に伏すこととなった。
年の差が約二倍ほどありますが全ステータス勝ってますこの姫