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お姫様転生  作者:
一章
67/78

全てを出し切って

累計PV20000行きました。ありがとうございます。

 喉が枯れていた。

 声はもう出ない。

 空を見上げていた。

 石でできた空を。

 息はとうに乱れていた。

 おかげで心臓がばくばくだ。

 血液が足りなくて、頭も回らない。

 私は、暗い石で囲われた空間で一人。

 笑みを浮かべたまま。そこに倒れていた。


 私の出来得る限りの全てを注ぎ込んだ。知恵、魔法、血液その全てを。

 殺させない、ただその一心に私の身体は動いていた。

 止血をし、止まった心臓を動かし、魔法で再生能力を上げる。それだけではない、魔法を使い疑似的に血液を回し、脈が止まることだけは阻止し続けた。その間、一切魔法を止めることなく。

 血液がまるで足りなかった。

 だから、私は”彼”となり、その血液を致死量と呼ばれる全身の三分の一を彼に明け渡した。

 それでも足りるかどうかは微妙だった。

 魔法で疑似的に血液を回せても、臓器が動いてくれなくちゃ意味がなかった。

 そこからは、胸骨圧迫と人工呼吸の繰り返しだった。

 彼自身に生きる意志がなくちゃ達成することができない。

 だから、私はただひたすらに待っていた。彼が目覚めるのを。

 魔力なんて足りてるはずがなかった。

 心臓が痛くなった。締め付けるような痛みは身体の危険信号なのだろう。

 でも、そんなこと関係なかった。私は、魔法を行使するのを止めることはなかった。


 私が倒れるのとほぼ同時。

 彼の心臓はドクン、ドクンと脈動を再開させる。

 なんとか命を保つことができたと、そう確信した私は、安堵したまま意識を身体から放すこととなる。

 ひんやりと冷たい石でできた床はなんとも寝心地が悪かった。




















◇◇◇


 意識を取り戻したのは、強い衝撃によるもの。

 胸の部分を殴られるくらいの勢いで押され、私は軽く喀血をして、咽ながら目を覚ました。


「がっ……!?」


 嗚咽が止まらず、その場で腹を抱えて悶絶していると、酷い耳鳴りと頭痛に襲われる。

 痛みに耐えながらも、周りを確認しようとすると、あまり、見かけることのない天井だった。

 眠っている場所も恐らく、ベッド。

 おかしい、私は確かに床で眠っていたはず。

 状況がわからず、堪らず起き上がると、そこにあったのは、私を囲む多数の人影。

 一部の大人を除きその全員を私は知っていた。

 チーニヤ、シーニー、アルヴィナ、ルフィナ、そしてパーシと……。


「姫様。お話をお聞かせ願いましょうか……」


 朱色の綺麗な髪を短く纏めた、私のずっと前から知っているその人。

 私の幼馴染で、私だけの騎士。

 アレクセイ・ソコロフ。

 つまるところアーリャ、その人だったのだから。

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