夢見心地
「パーシ……そう、良い名前ね……っ」
喋る度に喉を掻っ切られるような痛みに襲われる。
しかし、私はそれでも喋るのを止めない。
「パーシはさ、何かしたいことはある?」
私が何かを話すごとに、目の前にいるパーシは私のことを心配そうに見つめる。
しかし、それでも話すのを止めない私に対して、諦めか何かでも覚えたのだろう。そのまま彼女は応える。
「特にこれといってないけど……そうだ、久しぶりに教会の皆に会いたいな。私、元々教会に居てね……?」
せめてもの抵抗か、私にこれ以上喋らせないように彼女はそのまま、自身のことを話し始める。
ああ、もう、本当に優しい子なんだなぁ。
私はいつの間にか目を伏せ、ただ、彼女のその声を聴いていた。
どれくらい経ったのだろう。
私が再び目を開けると、そこには私の顔を覗き込むようにしていたパーシの姿があった。
「……なに……をして?」
「黒い靄が掛かってよく見えないけど、それでも、綺麗な顔をしているなぁって思って」
つまり私の顔を見ていたという。
いや、今はそんなことより――――。
「ねぇ、私どれくらい寝てた……?」
「どうだろ、結構ぐっすりと。時間感覚なんてもうとっくに壊れちゃったから……」
彼女は口角を上げ、しっかりと笑ってそういう。
なんで、笑いながらそんなことが言うの……。それは、普通ではない。そして、笑いごとにするのもいけない筈なんだ。
まだ、身体は痛む。というか、あんな無茶をしたんだ。全治一体何日か、私には想像もつかない。
けれど、身体はさきほどよりもしっかりと動くようになっていた。
壁に手を着きながら、何とか立ち上がって見せる。
「少し、肩を貸してくれる? 待たせちゃってごめんね。ここから出ようか」
「もう大丈夫なの?」
肩を貸してくれながら、彼女はそう問う。
大丈夫かと言われれば、勿論ノーだ。でも、これ以上時間をかけるわけにもいかない。そもそも、この時間に見つからなかったこと自体が奇跡のようなものなのだから。
「大丈夫。行きましょう」
私より少し体躯の小さい少女に抱えられながら、一歩ずつ進んでいく。
もはや、見つかっただけで終わりの満身創痍の状態だ。秘策はなくはない。けれど、どこまで通用するかわからないものだ。
ここまで来て失敗なんかして堪るか。
絶対に、なんとかして見せる。
「パーシ。あなたのことを絶対、外まで連れて行ってあげるからね」
「今、連れて行ってるの私だけどね」
少しかっこつけながら言った台詞をそう返されると、なんとも恥ずかしい。
私が口にした言葉は、約束でもなんでもない。でも、私自身への戒めのようなものだった。




