生きている
身体が大きく揺さぶられる。
あれ、私なにしてたんだっけ。今は、一体。
重たい瞼をゆっくりと開くと、そこに広がるのは暗闇。しかし、その中で少し茶色い髪と肩が目に入ってくる。
状況的にみて、私は目の前の人に担がれているのだろう。
頭が痛い。いや、全身が痛くて、張り裂けそうだ。そのせいか頭も働かない。
ここは一体どこで、目の前の少女は……。
ぼやける思考の中、必死にそう考えていると、私が目覚めたのに気付いたのか。目の前の人が話しかけてくる。
「よかった! 目を覚ましたんだ。大丈夫?」
姿はよく見えないけど、目の前の人はどうやら私を心配しているらしい。
返事をしようと喉を動かすと、喉から食道、胃。肺に至るまでの全てに激痛が伴う。
「あ”っ”が”っ”あ”!!!」
そのせいで、支えていてくれた目の前の人の身体から崩れ、、私は地面へと落下する。
冷たい石の床へと叩きつけられ、再び激痛に悶えていると、少女は再び声をかける。
「まだ無理そう……ひとまず、ここで休憩を。見つかる可能性の方が高いけど、今のあなたを担いでいくことは厳しいから……」
そう言うと彼女は私の肩を持って、そのまま石壁に凭れかけさせる。
しかし、私は彼女のことを考えている暇さえない。
体中を抑えながら、必死に肩で呼吸をし、酸素を体中に巡らせる。
痛い。なんでこんな痛いんだろう。ここは、一体。私はなんで。
必死に頭を働かせ、考えていく。
ああ、もうくそったれ。痛いよばーか。
誰に言っているのか、頭でなかで存在しない何かにそう文句を垂れながら、必死に目を凝らす。
ああ、そうだ。私は目の前の少女を助けに来たんだ。
思い出した。それなのに、私ったら心配かけさせて、一体何をやっているんだろう。
「ふーっ、ふーっ、ああ……痛いなぁ。――――ねぇあなたさ、名前なんて言うの?」
必死に、灼けそうな喉を無理やり行使して彼女にそう告げる。
気を紛らわせるわけではない、その方が痛くなるだけだし。ただ、彼女のことが知りたくなったのだ。
私のことを見捨てずに助けてくれる。そんな優しい彼女。私が助けてあげると決めた彼女。
そんな彼女のことを私は何にも知らないから。
「名前……!? 今はそんなことを言ってる場合じゃ……!?」
「お願い。教えて……?」
彼女の姿を見るための目はほとんど機能していない。
彼女の声を聴く耳はまだ動いてる。
彼女に気持ちを伝える口は、痛いけど、動く。
だからこそ、私は今彼女と対話することを望んでいる。
「……私の名前はパーシ。あなたに助けられて、あなたを助けて見せる人よ」




