小さな少女
またもや別視点になります。
何が起きたのかわからなかった。
ただ、わたしは全てに諦めていた。
痛い、辛い、苦しい、悲しい、なんでわたしばっかり。
毎日そんなことを考えては嘆いていた。
▽
私は平民の生まれだった。
特にこれといって、言うこともないような。普通の、そこらへんの一般的な町娘だった。
両親はとても優しく。友達にも、家にも恵まれている方で、毎日とても楽しく暮らせていた。
”あの日”までは。
いつものように遊びから帰った時のこと。
家に帰ろうと、足を動かしていると、家の方向から何か、喧騒が聞こえた。
なんだろうと思って、少し駆け足でそこまで向かうと、顔を隠した集団がそこにいた。
家から少し離れたところから見ていると、そのうちの一人にバレてしまい、追いかけまわされ。
訳も分からず、ただ逃げ回っていたけど、所詮子供の足。
大人の体力と歩幅に敵うはずがなかった。
随分と逃げ回り、自分でもどこかわからないようなところで捕まった私は、そのまま意識を失った。
気づいたら、私は教会に居た。
話を聞くと、それはどうやらお金目当ての強盗集団だったらしい。
お金持ちの家は警備が強くて、狙うには適さないらしく、そこそこお金を持っている家が狙われるのだという。
被害は金銭全てと、両親。
初めて私は、家も、家族もいない存在となった。
そこからしばらくは教会でお世話になった。私と同じように親が死んでしまった子供や、親に捨てられた子供、一人家出してきた子供もいた。
皆優しく、悲しくはあったけど、とても楽しくもある時間だった。
そんな生活を続けていたある日、とある貴族から、私を迎え入れるというお声が掛かった。
私は、今更家なんていらないと、そう断ろうとしたけど、同時に教会側もお金が厳しいことを知っていた。
そして、私はその貴族に、召使いとして雇われることになった。
皆とても優しく、私よりも少し上の年齢のこどもがいることもあり、楽しい生活を送れていた。
いつからだろう。
ご主人様はどうやら、いろいろと大変らしく、日に日に目に疲れが見えていた。
どうにかしようと奮闘したけど、私ではどうしようもなかった。
いずれご主人様は私に暴力するようになっていた。
でも、私はご主人様が泣きながら私のことを殴っているのを見て、抵抗することはできなくなっていた。ご主人様は優しいお人なはずなんだ。きっと今は疲れているんだ。
その一心で私はそれを耐え続けた。
それでも、ご主人様の状況は悪くなるばかりだった。
ご主人様は私を見てくれなくなった。私に暴行するときさえも、私のことを。
気づいたらこうなっていた。私はどこで間違えたのだろう。一体何がいけなかったんだろう。
わからないよ。誰も何も教えてくれないもの。
痛いよ。叩かないで。辛いよ。暗いよ。寂しいよ。ねぇ、私のことを見てよ。
私は、怒ってないよ。ご主人様。また、私のことを一緒に働かせてよ。また、一緒に笑いたいよ。
だから、私が悪いのなら謝るよ。何回でも、何をしてでも。
だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから。
ねぇ許してよ。




