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お姫様転生  作者:
一章
56/78

小さな少女

またもや別視点になります。

 何が起きたのかわからなかった。

 ただ、わたしは全てに諦めていた。

 痛い、辛い、苦しい、悲しい、なんでわたしばっかり。

 毎日そんなことを考えては嘆いていた。


 ▽


 私は平民の生まれだった。

 特にこれといって、言うこともないような。普通の、そこらへんの一般的な町娘だった。

 両親はとても優しく。友達にも、家にも恵まれている方で、毎日とても楽しく暮らせていた。

 ”あの日”までは。

 いつものように遊びから帰った時のこと。

 家に帰ろうと、足を動かしていると、家の方向から何か、喧騒が聞こえた。

 なんだろうと思って、少し駆け足でそこまで向かうと、顔を隠した集団がそこにいた。

 家から少し離れたところから見ていると、そのうちの一人にバレてしまい、追いかけまわされ。

 訳も分からず、ただ逃げ回っていたけど、所詮子供の足。

 大人の体力と歩幅に敵うはずがなかった。

 随分と逃げ回り、自分でもどこかわからないようなところで捕まった私は、そのまま意識を失った。


 気づいたら、私は教会に居た。

 話を聞くと、それはどうやらお金目当ての強盗集団だったらしい。

 お金持ちの家は警備が強くて、狙うには適さないらしく、そこそこお金を持っている家が狙われるのだという。

 被害は金銭全てと、両親。

 初めて私は、家も、家族もいない存在となった。

 そこからしばらくは教会でお世話になった。私と同じように親が死んでしまった子供や、親に捨てられた子供、一人家出してきた子供もいた。

 皆優しく、悲しくはあったけど、とても楽しくもある時間だった。

 そんな生活を続けていたある日、とある貴族から、私を迎え入れるというお声が掛かった。

 私は、今更家なんていらないと、そう断ろうとしたけど、同時に教会側もお金が厳しいことを知っていた。


 そして、私はその貴族に、召使いとして雇われることになった。

 皆とても優しく、私よりも少し上の年齢のこどもがいることもあり、楽しい生活を送れていた。

 いつからだろう。

 ご主人様はどうやら、いろいろと大変らしく、日に日に目に疲れが見えていた。

 どうにかしようと奮闘したけど、私ではどうしようもなかった。

 いずれご主人様は私に暴力するようになっていた。

 でも、私はご主人様が泣きながら私のことを殴っているのを見て、抵抗することはできなくなっていた。ご主人様は優しいお人なはずなんだ。きっと今は疲れているんだ。

 その一心で私はそれを耐え続けた。

 それでも、ご主人様の状況は悪くなるばかりだった。

 ご主人様は私を見てくれなくなった。私に暴行するときさえも、私のことを。


 気づいたらこうなっていた。私はどこで間違えたのだろう。一体何がいけなかったんだろう。

 わからないよ。誰も何も教えてくれないもの。

 痛いよ。叩かないで。辛いよ。暗いよ。寂しいよ。ねぇ、私のことを見てよ。

 私は、怒ってないよ。ご主人様。また、私のことを一緒に働かせてよ。また、一緒に笑いたいよ。

 だから、私が悪いのなら謝るよ。何回でも、何をしてでも。

 だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから。

 ねぇ許してよ。

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