叫び
私の身体が檻に触れる。
その瞬間、身体の中を隈なく何かが通り抜ける感覚と共に全身を焼け焦がすような痛みが襲い掛かる。
覚悟をしていたとはいえ、何が起きたのかもわからない、瞬きをする暇すら与えられない中での、耐えることしかできない絶望的な苦痛。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ”」
意識が吹っ飛ぶかもしれないその感覚を耐えるためか、いや、そんなことを考えてなんていられなかった。ただ、ひたすらに私は喉が壊れるほどに叫び、狂っていた。
身体は痺れてしまい、動きそうにない上に、手が勝手に檻を強く締めるため、離れることも叶わない。
いや、違う。元から放す気なんてなかった。そうだ、私がここで倒れたら、目の前の子は助からない。
それに気づいた私の身体は、勝手に動いていた。まだ、意識はある。
それなら、やることは一つだけ。
「うっ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ”っ”っ”っ”っ”っ”っ”っ”っ”っ”!!!!!!!!!!!!!!!!」
灼けるような痛みでもはや、感覚が麻痺してきてしまっている両手を、力強く引っ張り上げる。
周りなんて見えていない。
でも、私の手の中になかには確かに檻があるのだ。見えなくても、問題ない。
筋肉が硬直と弛緩を繰り返す。今私は本当に力を入れられているのかさえ、わからない。
ただ、わかることは、このままでいると、確実に私は死ぬということだ。
死にたくない。こんなところで死んでたまるか。まだ誰も助けていない。まだ何も言えてない。
「――――んじゃうっ――――――――して――おね――――っ!!!!」
目の前にいる少女が叫んで何かを伝えようとしていた。
でも、何言ってるか聞こえない。そうか、心配かけちゃってるのかな。
大丈夫。今、助けてあげるからね。
私は必死に笑顔を作ろうとしていたと思う。それが伝わっているかなんて、いやそもそも作れてすらいないかも。
――――身体が壊れていく音が聞こえる。まだ手は動く。
――――感覚が無くなってきた。まだ力は入る。
――――足の力が抜け、崩れてしまう。まだ手は繋がっている。
――――頭が、回らない。まだ心は折れていない。
――――まだあきらめるわけには……いかない。
もう駄目だと思った。周りどころか、自分すらわからなかった。
それでもあきらめきらない私は、絶叫を上げ最後の力を振り絞る。
「なああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ふっと、意識が途絶えた。
聞こえたのは、泣き、叫んでいる少女の声と。
小さな金属音だった。




