檻
多分、この場所を知っているのは、ズロー本人だけなのだろう。
それはつまり、ここにくるのもズローのみということになる。それなら、まだ少しは余裕があるかもしれない。少なくとも、ズローの姿を屋敷の中で見てはいない。
もしかしたら、ここの奥にいるかもしれないけど、それならむしろそれだけどうにかすればいい。
私は暗い道の中を、下、天井など、隅々まで確認しながらそう考える。
まだ、大丈夫。だけど、いつまで大丈夫かはわからない。
なるべく早いに越したことはないはず。早く、見つけないと。
触れて、見て、怪しいものがないかを探索するけど、まったくそういったものは見つからない。
そもそも、ここの通路にあるのかもわからない以上、かなり難易度が高く思える。
だけど、今はそれに賭けるしかない。
その一心でひたすらに探っていると、石壁の中に、一つ。穴が開いているのを見つけた。
「穴……? たまたま開いていただけかもしれないけど、とりあえず、調べるしか……」
でも、真っ暗な中、調べる方法なんて、指を入れるくらいしかないよね……。
なんか、嫌だなぁ……。
そうは思うけど、それでは進まないと、一思いに指を突っ込んでみる。
すると、中で何かにあたった感触を覚える。
これは、正解だったかもしれないと思い、強く押すと、音を反響させながら、石壁が横に開いていくのを見ることができた。
「ほんとうにあったなんて……」
動き出した壁を見て驚きを隠せないでいた私は、しばらく眺めたあと、我に返り、すぐに頭を振って、そのまま壁の向こうへと進んでいく。
壁の先に足を運ぶと、冷たい感触が足を覆う。
「ひゃっ……!?」
思わず声が漏れてしまい、すぐに口を塞いで下を見てみると、どうやら、床一面に、水が敷かれているようだった。
これでは音を隠すことはできないなぁと思いながら、仕方がなくそのまま進んでいくと、少し開けた場所に出た。
明るさに変わりはないけど、少し広くなったことで、若干見やすくなったように感じる。とはいっても本当に多少で、ほぼ変わりはない。
それでも、そのおかげで、私は横の存在に気づくことができた。
通路の左側、そこには鉄格子があった。
中の様子はほとんど見ることができないけど、もしかしたら、誰かいるのかもしれない。
そう思い、私は意を決して声を上げてみる。
「……っ。誰か、いない……!?」
しかし、返答はなく、しばらく静寂が続く。冷たい足を我慢しながら、それでも。と何か反応があるのを待っていると、何かが動いた音と共に声が聞こえる。
「誰か、そこにいるの……?」




