決断と意志
少し告知をば。
作者が本日短編を二つほど上げたので、ついで程度に見て行ってもらえればと思います。
建物からは少し離れた物陰。そこに私達四人は再び集まっていた。
その顔は皆物々しく、周りの空気もそれと呼応しているようだった。
その顔を見ただけで全員すぐに理解しているだろう。
目的の子供は見つからず、今回の任務が失敗で終わろうとしていることを。想定していなかったわけじゃない。でも、実際にこんなことにならないと、わからないことだってある。
とにかく、今はチーニヤの指示を待つことしかできなかった。
「…………」
皆、その意見は一致しているようで、チーニヤの方を見つめたままその口を開くことはない。
最も理解していて、最もそのことを承知している当の本人は、しかして、その口を開くことはなかった。
この場で留まることがどれだけ危険か、ここですべてが決まるその一言がどれだけ重いか。
私には想像することしかできない。
その、全てを背負っている目の前の、多少、年が上なだけのその少年に、全てを託している私たちはどれだけ愚かなのだろうか。
本来だったら皆で考え、皆でその答えを導きだすべきなことくらいは考えなくてもわかっていた。
しかし、わかっていてもそんな易々とできるものでないことは、直面しないとわからないだろう。
事実私は、腹が決まっているのにも関わらず、その責任を全てチーニヤに背負わせようと、そうなることは分かっているのに、したくなんてないのに、それを防ぐ術を知っているのに……その口を開くことはできないのだから。
「黒……ここであなたが何を言おうと、私たちがあなたを恨むことはない。私たちは、あなたの意見に従うから……」
そんな中、一人。優しくも辛い、そんな言葉をチーニヤへと向ける。
私にはできなかった、一緒にその責任を負うよと声を上げるのはアルヴィナだった。
ああ、ほんとうに、羨ましい。そして、妬ましい。
「俺もだ。約束する」
それを聞き、シーニーも強く、その意思を見せる。
私に聞くことはできないけど、きっと、ルフィナも同じ意見なのだろう。
だからこそ、私は、何も言うことができなかった。
彼の顔を、その仕草を見てまで何か言うことができなかった。だって――――。
それでも、チーニヤに掛かる重荷はその重量を変えた。そのようだった。
チーニヤは重たい、開くことさえ困難であろうその口をゆっくりと動かす。
「…………今回の作戦は失敗だ。やり直しも厳しいだろう……。俺の力不足だ。皆の安全も考えて、直ちに帰還をしようと思う……異論はないなっ……」
異論の声を上げる者はいなかった。
皆、そんなことを最も思い、最も許せず。最も異論を上げたいであろうチーニヤが言っているのだから、それに異論を唱えるなんてことはできなかったのだろう。
◇◇◇
そうして、影たちは再び夜の世界へと消えるために、ルフィナと合流して帰還する。
そうしているはずだった。
ふと声を上げたのは――ルフィナだった。
「あれ……イリーナ……はどこにいるんです……?」
その影の中に、イリーナらしき姿が見当たらなかった。
見ればすぐに気づくような違いだった。明らかに数が足りていなかったのだから。
しかし、イリーナはその最後方。一番後ろをついてくるようにしていた。
だからこそ、気づくことができなかった。
「…………えっ」
彼女が一人、その意思を歪めていなかったことを。




