暗号名
「う、うーん……?」
私たちがなんでもないことを話している間、ずっと足蹴にされていたシーニーがアルヴィナからの強烈な一撃を再び喰らうと、ようやく起き上がる。
「やっと起きた。さっさと起きなさいよ、もう」
頭を押さえながらも、状況が理解できていないようで、シーニーは私たちのことを順にみる。
「俺、一体なんで寝てたんだ……なにか怖い夢を見ていたような気も……」
「あんたが馬鹿やって、勝手に寝てたのよ。ほら、いいから起きたのなら、こっち来なさい」
覚えていないことをいいことに、真実を言うつもりはないみたいだった。
アルヴィナ、シーニーに対する当たりが強いよね……。
指示された通り、シーニーはベッドを降りると、壁に凭れかかるようにしながら、私たちと話のしやすい場所へと着く。
簡単に、シーニーの眠っていた間にした話を済ませると、次の話へと移る。
「それじゃ、次はイリーナの呼び方を決めようか、といっても多分、もう決まってるようなものだけどね」
「呼び方って?」
普通にさっきまで名前で呼んでいたのに、いきなりそんなことを言われて、少しだけ戸惑ってしまう。
「作戦を行う時に、名前で呼び合うのはまずいだろう? だから、コードネームのようなものをつけるんだ」
「ああ、なるほどね」
「まず俺たちの呼び名の方を教えようか、俺が黒、アルヴィナが白、シーニーが青、ルフィナが赤。これだけ聞けば何を表してるかわかるんじゃない?」
「……色、かな」
「正解、まぁ、そんなわけで君だと、綺麗な金色の髪かこないだのドレスの深紅色あたりから取るのがよさそうかな」
なるほど、確かにそれならわかりやすいし、よさそう。
でも、深紅だとルフィナと被っちゃいそうだし……。
「金色でいい、その方がわかりやすいでしょ?」
「うん、その方が助かるよ、金だと、少しつまらないかな……金。でどうだい?」
「好きに呼んでもらって結構よ、呼ぶのは私じゃないから」
「確かに、それもそうか、それじゃとりあえずイリーナ、君は金で決定な。皆いいよね?」
「「「異議なーしっ!」」」
シーニーはつまらなさそうにしながらだったけど、皆それでいい、ということだった。
あだ名のようなものをつけてもらったことさえ初めてだった私は、ほんの少しだけ、嬉しい気持ちを胸に抱えていた。




