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お姫様転生  作者:
一章
34/78

させない


「さて、それじゃあ、皆、地図を見てくれ」


 チーニヤは簡素な机の上に置かれた地図を指さすと、説明を始めていく。


「見ての通り、この屋敷は二階建てのかなり大きな建物だ。そこで、とりあえず、俺たちは二階を、アルヴィナとイリーナには一階の探索をしてもらいたい」


「了解」


「部屋の説明をしていこう。一階は、玄関ホール、リビング、台所、トイレ、浴場、物置。それとズローの自室がある。恐らく、ズローの部屋は難易度が高いと思われるから、窓から除くだけしかできないと思う。もし、そこにいるのなら多少強引でも、俺が向かおう」


「よく、そんな情報が手に入ったよね……?」


「教会は色んなところと繋がってるからね。情報には強いんだよ」


「そう、よくわからないけど、そういうことにしておく」


「うん。そうしてくれると助かるよ。んで、まぁシーニー寝てるけど、二階は、ズローの妻の部屋と、息子の部屋。あとはお偉いさんがよく集まる広間と、仕事部屋、トイレと書斎だね」


「ほんとうに、随分と大きいのね……?」


 アルヴィナは部屋の地図を見て、説明を聞きながらにそう、静かにつぶやく。

 お城と比べたらかなり小さいと思うんだけど、確かに男爵ってだけあって、随分と広い家に住んでいるのは間違いなかった。

 しかも、この上、警備員までいるとなるのだ、普通に考えて探索している暇なんてほとんどなく、ミスすらも許されない。

 こんなにも難しそうなことだというのに、皆、怖気づいたりすることはなかった。

 ただ、一人、私以外。


「怖くはないの……?」


「ん?」


 ぽつりとそんな言葉が漏れてしまっていた。


「捕まったらどうなるかわからないんだよ? 私が何かやらかすかもしれない。想定よりも警備員が多かったら? 屋敷の中にも警備員が徘徊しているかもしてない。それなのに、なんであなたたちはそんな堂々と、立っていられるの?」


 一度漏れた言葉に続いて、ダムが決壊したように、私の口からはそんな言葉が次々と溢れていった。

 決して、皆を不安にさせたかったわけでも、やめさせたかったわけでもなかった。

 ただ、知りたかったのだ。


「決まってるだろ?」


「何が……っ!」


「困ってる子供がいるんだ。俺たちが助けなきゃ、一生助からないかもしれない。それこそ、一生が終わってしまうかもしれないんだよ。だから、俺たちはいくんだ。それに、俺だって怖いよ。でもさ、その子供はきっと、その何十倍も、怖いんだ。こうしている今だって、助けを求めているかもしれない。そうだろ?」


 一切、曇りのない顔でチーニヤは言葉を紡いでいく。

 ただ、そこに困ってる人がいるから。とそれだけで助けるには十分な理由だと、たとえそれで自分がどうなろうと、いかなくてはならないんだと、彼はそう言う。

 しかし、そこからは、自己犠牲の精神は感じられなかった。


「だからといって、自分がどうなってもいいの……?」


「どうにかなる気はない。ここにいる皆危険に晒す気はない。絶対にそんなことはさせない。そのために俺がいるんだ」


 チーニヤからはどうにかしなくちゃという意思は感じられなかった。

 ただ、どうにかするんだ。という決意がそこにあるのみ。


「だから、さ怖かったら言ってくれ、会ったばかりで何を言ってるんだって思われるかもしれないけど、俺が、どうにかしてみせるよ……」


 その言葉は、とても優しく。それでいて、痛かった。

 私の中でぐるぐると悩んでいたことが全部吹っ切れるようだった。


「そう、チーニヤ。あなたすごいのね……」


「ああ、俺はこの盗賊団リーダーのチーニヤだからなっ!」



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