そして夢へと堕ちていく
夜、陽もすっかり沈んでしまい、王都を囲うカーテンのように靡く、虹色の結界があたりを照らし、暗き世界に、月以外で明かりを灯す、そのものが姿を現す時間。
私は夕食を食べ終え、ひと眠り。時間になるまでに少しでも仮眠を取れるようにと、服も変えずにベッドに横になっていた。
私はふわふわとした意識の中、先ほど起きたことをひたすら繰り返して、考えていた。
「アーリャ……」
アーリャのことは嫌いではない。むしろ大好きだ。
だからこそ、私は私を許すことができなかった。許しては行けなかった。
私は、ただ今の関係が崩れるのが怖かった。互いに好意を抱いていることくらい、互いに理解している。
だというのに、今までアーリャが何も言ってこなかったのも、私があんなことをしたのも、全部、長年一緒に居た私達には理解できているのだろう。
「きっと、アーリャはまた素知らぬ顔で私の前に姿を現すんだろうな……」
そして、私もきっと何事もなかったかのように接するしかないんだろう。
そんなことを考えてはひたすらに後悔の念に刈られ続ける。
なんであの時、肯定することができなかったんだろう、お父様もお母様も、きっとアーリャが相手なら、一つ返事とまではいかなくても、納得してくれるだろう。
なんであの時、私はアーリャの顔を見ていることができなかったんだろう。いつも見ていたいと思っていたはずなのに。
なんでアーリャが帰ろうとしたのを引き留めれなかったんだろう。決まっている。怖かったからだ。
私は、意気地なしだ。
アーリャは私のことを、きっとずっと考えて、そのうえで、私をあそこに誘ったんだろう。
それがどうだ、自分のことしか考えない、こんな私は、アーリャの気持ちなんてまったくわからない。
今、一体アーリャがどれだけ苦しいか、今後もどれだけその苦しみを抱えさせるのか、私なんかには、到底考えが及ぶものではなかった。
「アーリャに会ったら、私は一体どんな顔をすればいいんだろう」
どんな顔ができるというのだろう。
そんなことばかりが頭の中を過る。
謝る?
ううん。だめだ、それだけはやっちゃだめだ。だって、それはアーリャの気持ちを踏みにじった私の気持ちまでもを否定している。それはつまり、それに納得したアーリャさえも侮辱しているのと同じだ。
そんなことやっていいはずもない。
だからやっぱり、いつも通りの日常に戻ることしかできないのだろう。
本当に、こんな私なんて、大っ嫌い。
なんで、私はこんなにも醜いんだろう。




