身体検査
スキルについては、かなり最新の機械を使ったものだったけど、身体測定はその全てを人の手で行う。
ただ、私の身体に触れていい人って時点で限られてくるため、基本は、知っている人としか行わせてもらえない。
大事にされているのは分かるけど、やりすぎじゃないかな……?
「それじゃあ、俺は別の部屋でやるので、姫様はそちらの部屋に」
城の中のとある部屋の前に来ると、アーリャはそういって、私を誘導する。
「本当に一緒じゃなくていいの、アーリャ?」
「いい加減にしないと襲うぞ、こら」
そういって頭に一発チョップを喰らう。
私からこんなこと言うの、アーリャくらいだし、こんなことをして許されるのもアーリャくらいなものだろうに……本当にもったいない、自分で言うのも恥ずかしいけど、これでも身体は十歳とは思えない程度に自信があるというのに。
「ちぇー、それじゃねアーリャ」
「変なことしなけりゃ俺がこんなことする必要ないんですから、しっかりしてくださいよ姫様」
アーリャは叩いた私の頭をさすると、そのままくるっと後ろを向いて、歩き出してしまう。
何か小声で言ったように聞こえたけど、その内容までは聞き取れなかった。
アーリャでからかい終わった私は、そのまま目の前の扉を開けて、中へと入っていく。
「失礼します」
中に入ると、そこにはオレーシャ先生が白衣で椅子に座っていた。
「先ほどぶりですね、イリーナさん。今回、あなたの検査役を押し付けられました。オレーシャです」
「先生、その押し付けられたっていうのは私、少し傷つくのですが……」
「仕方ないじゃないですか、イリーナさんの美貌は有名ですからね。それはもう、女性でも惹かれるくらいには、そんな身体に触れあうとか無理って人が多いんです。なので、最終的に私に」
「そんなこと自体、初耳なんですけど……」
そりゃ、いろんな貴族から求婚はされまくっていますけど、全部断ってますし。
男の人ならともかく、女の人からモテたことはなかったとおもうんだけど……。
「まぁ、そんなことはいいでしょう? さっそく初めていきましょうか」
「はい。よろしくお願いします」
そうして、検査、並びに測定を一つ一つ行っていく。
まず、身長、体重を測るということで、私は、着ていたドレスを籠の中に畳んで入れて、白色のレースのたくさんついた下着姿になる。
その姿は、男の人が見たら、辛抱できなくなるんじゃないかというほどに年齢に分不相応な身体をしていて、大人びていた。
しかし、そんな綺麗な身体をしているというのに、下着は子供趣味のもので、その身体との対比に男どころか、女の人ですら魅了するもので間違いなかった。
わざわざ下着姿になるのは、魔法をかけて測っていくからだった。魔法の対象に服が含まれてしまうと、結果が変わってしまうこともあるため、しっかりとしないといけないみたい。
身長は手でそのまま測るだけ、背伸びしてみても、頭を押されて戻された。身長は結局百四十二だった。体重は乙女の秘密……。
そのままバスト、ウェスト、ヒップの三つを計っていく。ここら辺は、魔法で一瞬で測ることができるらしく、私は立っているだけだった。
結果はもちろん秘密だけど、去年より成長していて、心の中でガッツポーズを決める。
他にもいろいろと検査をして、終わるころにはすっかり疲れ切ってしまっていた。
「お疲れ様です。イリーナさん、その恰好でいたら冷えてしまいますよ」
私は、終わったと同時に、はだけた下着姿で天井を眺めていた。
毎年やってるけど、項目がおかしいくらいに多く、単なる検査だというのに、なんでこんな疲れるんだろう。と思うくらいに毎回疲れてしまう。
「イリーナさんがそんな恰好でいるから、性的な目で見るかたがいるんじゃないですか?」
ふと、オレーシャ先生が私を見ながらそう言う。
「オレーシャ先生もそう思ったのですか……?」
オレーシャ先生が私のことを見ているその目は、決して、そんな目ではないと思った私はそう尋ねる。
「いえ、素敵だとは思いますけど、私にそんな趣味はないですから、幻滅しましたか?」
「まさか、そう言って貰えて、もっと先生を好きになれそうです」
「それはよかったです。とりあえず、手伝ってあげますから、ドレスを着てしまいましょう」
「ありがとうございます。先生」
私は起き上がると、オレーシャ先生と一緒にドレスを着ていく。
今日だけで、オレーシャ先生のことをもっと知れた気がして少し嬉しくなっていた。
はい。ふざけすぎました。完全に趣味です。反省はしている、後悔はしていない。




