三年で
目が覚めたら、既にお昼の時間直前だった。
思ったよりもぐっすりと眠れてしまって、眠気もかなり取れていた。
よほどリラックスしてしまっていたのか、口元から涎が垂れてしまっているのに気づき、慌てて、手で拭き取ると、周りを確認する。
オレーシャ先生は未だに枕を両手でしっかりと抱えて眠っていた。
起こした方がいいのかな、と思いながらも今日の私は、急いでご飯を食べなきゃいけなかったことを思いだして、そのまま部屋を後にすることにした。
「姫様、こんにちは。おや、少し髪が乱れております」
廊下に出ると、アーリャが立っていた。
アーリャは今年でもう十六歳になる。騎士として認められ、今では部隊を率いる小隊長にまで成り上がったらしい。
見た目も、三年前と比べ、大人らしく、きりっとした顔立ちに、見上げないといけないくらいの身長。で、外ではよく貴族から求婚されているくらいの大人気らしい。
「ああ、アーリャいいところに、あなたも今日一緒に測るんでしょ?」
「少しはしっかりとした口調で喋ろうとかないんですか。姫様のが測り終わったら、ということでしたが……」
実は、今日は私の誕生日の一日後、ということで私のスキルの確認や身体検査などそういったことを行う。
これは子供のころからだけど、それと一緒にアーリャもついでに測っちゃうのだ。
なんでも、昔の私がそうじゃなきゃ嫌だ。と駄々をこねていたという。
私にそんな記憶はないので、それは間違っているけど。
「一緒に測ればいいじゃん?」
「いや、スキルはともかく、身体検査に男が同伴は駄目だと、毎年言ってるじゃないですか……」
「私は気にしないよ?」
「俺が気にします。てか姫様も気にしてくださいよ……」
「冗談だよ、私だってこれでも純粋な乙女だしー。アーリャなら問題ないかなって思っただけだよ」
「はぁ、ほんとうに姫様は……そういえば、姫様はもう昼食は済まされましたか?」
そんな会話をしていると、アーリャは突然何かを思いついたように、して私に尋ねてくる。
「んーまだだけど」
「でしたら、一緒に向かいましょうか。俺も先ほどまで稽古をしていたのでまだなんですよ。姫様はこの時間は勉強でしたでしょうし」
「そ、そうだね? いやー勉強って疲れるからねー」
「……? まぁ、それでは行きましょうか」
「うん、ほら騎士様、かっこよくエスコートしてってよ」
そういって、アーリャの方へと左手を差し出す。
「……」
そういうとアーリャは、まーた面倒くさいこと言い出したよ……。とでも言いたげな顔をこちらに向けて硬直してしまう。
「流石にさ、失礼だとは思わないの? ねぇ、私これでもちゃんとした姫だよ……?」
「姫だっていうならもう少ししっかりしてくださいよ、じゃないとっ!」
アーリャは手を掴むと、グイっと自身の方へと引き寄せ、私を抱える。
不意にされたせいで、私は抵抗する暇なく、気づいたらアーリャに包まれていた。
「ア、アーリャ……っ!?」
「ほら、行きますよっ姫様」
そのまま私の腰と足を支えて持ち上げ、いわゆるお姫様抱っこの形になったままアーリャは何事もなかったかのように歩き出す。
「ちょ、ちょっとアーリャっ! 降ろして、降ろしてよっ……!!!」
ここは城内でいつ誰に見られるかもわからないこともあってか、私は恥ずかしくなって、その場でジタバタと暴れるけど、アーリャの力に私はすっかり勝てなくなってしまっていた。
どれだけ暴れても、まったくもって意味はなかった。
「ほんとに姫様は軽いですね。そんなに暴れては危ないので、しっかりと掴まってくださいよ」
余裕綽々のアーリャに苛立ちを覚えても、前と違って、戦闘においてはすっかり勝てなくなってしまった自分を、ただ、恨むしかできなかった。
アーリャのイケメンっぷりをもっとしっかり表現したい。




