その名が指すものは
話続いているわけではない箇所です。一応の第一話はこれになるのかな?
目が覚めたら、知らない場所に居た。
ひたすらに何もない真っ白で平面な世界、私はそこに立っていた。
「お気づきのようですね、・・さん」
酷いノイズと共に後ろから声が聞こえてくる。
声に応じ、振り返るとそこには私が立っていた。
地味な黒髪を長く伸ばし、目まで覆いつくしている前髪、低い身長に、骨の形がところどころ見えるくらいの細身な身体。この姿は紛れもなく私だった。
「どうやら、状況があまりよくないみたいですね、・・さん聞こえますか?」
そう呼ぶ声は右から左に流れるようにして頭の中を通り過ぎていく。
あまり意識がしっかりしていなく、ボーっとしてしまっているみたい……。
さっきまで何をしていたのか、自分が一体誰なのかまで全然思い出すことができない、それにここは一体……。
「色々とショックが多すぎたようですね……聞こえてはいるようですので、簡単にご説明いたします。あなたは先ほど、地球での生命活動を終え、ここへとやってきました」
目の前にいる私は、淡々と顔色一つ変えずにそう言い放つ。
頭の働いていない私でもすぐにわかった。そうか、私は死んでしまったのか。
「じきに記憶も蘇ってくるでしょう。ショックによる一時的なものだと思いますから……。さて、ここからが本題です。実は死んでしまった方の中である条件に該当した方だけにお願いしたいことがあるんです」
目の前にいる私は喋ることができない私の反応を見ながら話を進めていく。
「そのお願いというのが、生まれる世界の変更なんです。本来ならそのまま地球で転生するのですが、魂の関係上、それができなくなってしまっているんです。そこで、特別に私たちが直接出向いて、こうしてお願いするんです」
……お願いと言われても、私は今、全然考えれないし。
喋ることも叶わないというのに、何を言っているんだろう……。
せめて喋れるようにならないと……。
そもそもなんで私は喋れないんだろう……?
さっきまでより全然頭は働いているみたいだし、もしかしたら喋れるんじゃないかな。
「もちろんただでとは言いません。特別にいくつか恩恵を与えて、転生してもらう。といった形になります。そこまで強い恩恵は与えられませんが、違う世界でも暮らしに困ることはないと思います」
「その……恩恵というのは……?」
必死に喉から声を絞り出してみた結果、なんとかなった。
しかし、喉が苦しいし、結構辛いなこれ。
声を出したのを見て、目の前の私は目を見開いていた。突然声を出したからかな……。
「声が出るようになったんですね。よかったです。それじゃあお話を続けましょう。どうやらしっかりと聞こえていたようですから、恩恵は簡単に言ってしまえば、あなただけの能力のような、そんなものです。案外なんでもできますよ、空が飛べたり、瞬間移動ができたり、透明になれたりもしちゃいます」
目の前の私はそんな夢物語のようなことを楽しそうにしながら言ってみせた。
でも、本当に叶うなら、それは色々とできて楽しそうだな……。
「なんでもいいんですか?」
「はい! あんまりたくさんだったり世界滅ぼせそうなのは無理ですけど……」
……どうせ夢物語なんだから、私の本音を言ってしまっても何も問題はないだろう。
「それなら…………」
◇◇◇
今まで何人かこうして様々な世界に送ってきましたけど、まさか、力ではなく可愛くなりたい。なんてことを言い出すとは……。
まぁ、あれはあれで面白いから別にいいです。
久々に笑ってしまいましたから、特別サービスしちゃいました。あとで上司に怒られないといいんですけど……。
「なにはともあれ、ご武運を祈っていますよ。茉莉さん……」