模擬試合
「お二人とも始める前に、ルールの説明をしましょう」
「「はいっ」」
二人のちょうど間に入り、戦闘態勢を済ませた私たちにグレン先生はそう言って話し始めた。
「基本なんでもありの勝負です。ただ、一応として、まず魔法の使用は禁じます。これは魔法戦ではありませんから、続いて、互いにですが、髪を掴むのはやめましょう。これは男女で差がでてしまうからです。もちろん、実践ではそんなことはいってられませんが、これは模擬戦ですから、ここまでは良いですか?」
「大丈夫です」
「はい」
「よろしい、それでは最後に、勝敗はリタイアと明らかな一撃が入った場合、またこの庭の芝の中からでてしまったら、ということにします。お二人とも手加減せず、お願いしますね」
それだけ言うと先生はそのまま、庭から出て私たちを眺め始めた。
「アーリャ、私本気でいくから、怪我しないようにね」
「そんな舐めていられるのも今のうちですよ、姫様、俺こっちの方が得意ですから」
それだけ言うと、互いに構えを取り始める。私は特に変哲のない斜め姿勢での構えなのに対して、アーリャは両手をまっすぐしたに降ろし、立っているだけだった。
「……? 構えなくていいの?」
「大丈夫ですよ、これが俺の構えですので」
私のことを目から逃がしはしないといわんばかりの、目つきで顔が本気なのは伝わるけど、それじゃなにもできないんじゃ……?
「そういうことなら行かせてもらうからね!!」
私は勢いよく足を蹴り、無防備に構えているアーリャへの鳩尾へと拳を振りかぶる。
たったそれだけの動作だが、毎日の鍛錬、恩恵による身体能力の向上のおかげでとてもこの年とは思えない速さ、力が出ていた。
しかし、その拳が当たることはなかった。
アーリャはバランスを崩すことなく、上半身を後ろに折り曲げ、その拳を躱していたのだ。
「なっ!?」
当たらなかったことに気づいた私はすぐさま体勢を整えようと地面を蹴ったと同時。
そのままの体勢から私の鳩尾にアーリャの膝が勢いよくめり込んできていた。
幸い、後ろに飛んで威力を減らすことができたが、体勢も崩れ、呼吸も乱れてしまった。
「ふーっ……なにその動き……まさかそんなに動けたとは思わなかったよ……」
「言ったじゃないですか、俺剣より拳のが得意なんですよ。それにしても本当に姫様はお強い、あと少し遅れてたら一撃で終わってましたね……」
……なにそれは、私煽られているの?
いや、それもアーリャの策か何かかもしれない、ここは冷静にいかないと。
「それにしても追い打ちはしないの? アーリャ、わざわざ私が呼吸する暇与えちゃ駄目でしょ?」
「そんな倒れながらも全力で俺のこと睨み続けている人相手に突っ込みたくなかったもので、それに俺の戦闘スタイルとは異なってきますから」
アーリャは次こそしっかりと構えるものの自らこちらへ突っ込んできたりをすることはないようだった。
なるほど、面倒くさいなぁ、もう。
でも、アーリャのことなんて気にしてる場合じゃない、私は私のスタイルでいかないと。
「アーリャが追い付かないくらいにやるしか、なさそうだからね!!」
私は再び地面を蹴って、そのままの勢いで大きく足を振り上げ、アーリャの側頭部目掛けて蹴りを入れる。
しかし、それが駄目だった。
アーリャは私の攻撃をよけることなく頭で受けると、私の足を掴む。
「ふえっ!?」
急に足を掴まれ困惑していると足から強い力を掛けられ、私の身体が宙に浮くと共に、投げ飛ばされた。
慌てて、地面につくと同時、回転しながら受け身を取って、なんとか衝撃を緩和する。
「いきなり投げるとか、正気!?」
「はい、これが一番簡単そうだったので」
アーリャはニコニコと笑顔のまま無防備に私の前へと歩いてきた。
さっきからアーリャは私のことを舐めてかかっている、という事実に苛立ちを覚えた私はすぐさま起き上がって、アーリャに殴りかかろうとすると。
「姫様、好きですよ」
そういったアーリャは私のことを軽く押した。
アーリャが突然、試合中だというのに変なことを言い出したせいで一瞬、硬直してしまった私は、その手によって一歩、後退してしまっていた。
「いきなり何を!!」
「終了ー!! 今回の勝者はアレクセイさんです」
終了の合図で、周りを確認した私は、すぐさまその理由に気づいた。
私はアーリャの手によって庭から一歩外に出てしまっていたのだから。
「惜しかったですね、姫様、今回は俺の勝ちのようです」
誇らしげにそういうアーリャの顔を全力で殴ってやりたかった。
戦闘はあまり得意ではないのですが頑張って書きました。
少しはよくできてたらいいな。
ステータスが高い=勝てるではないのです。
ステータスはあくまでステータスですから。




