からかい
あのあとはアーリャの協力もあって、できることは増えていったし、何よりも楽しい日が続いた。
といっても、服の謎が解けたり、なんか面白いことになったりくらいだった。
服については、どうやら服着た状態でイメージするとしっかり変身できるみたいだった。最初のは、私に戻ることを意識していたせいであんなことになったみたい。
なんか面白いことっていうのは、今、この現状のこと。
「アーリャっ! すごいすごい、見て、見てっ!?」
「見えてます、見えてますけど、なんでそんなことに!?」
私は興奮しながら、アーリャに頭の上を指しながら迫っていた。
アーリャは必死に目を逸らし、後退しながら顔を真っ赤にさせていた。
そんな状況を作り出した謎のもの、私の指の先には器用に動く、金色の猫の耳が生えていたのだった。
◇◇◇
「にゃーん、どお、これ可愛くない!?」
手を招かせるようなあざといポーズをしながらアーリャに問いかける。
もちろん驚きもあるし、なぜこうなった!? とも思ったけど。
まず何よりも、なにこれ可愛いとしか出てこなかった。
「あ、はいとても可愛らしいですよ、姫様」
しかし、テンションが高くなった私とは違ってアーリャは素っ気ない生返事を返すのみ。
しかもこっちを向いてすらくれない……。
「ちゃんとみてよー、ほらほらネコ耳に尻尾までできちゃったんだよ?」
そういうと、これまた金色の長くふさふさな尻尾をドレスの下から通すようにして出す。
完璧じゃん、こんな使い方があったなんて、無茶苦茶使えるよ、これ!!
「いえ、その、とても可愛らしいです。……ていいますか、そういうことをしないでください、ドレスが上がってしまっていますよ!? はしたないです姫様!!」
「えーいいじゃんこれくらい、そんなことよりほら、これ尻尾自分で動かせるんだよー」
私は尻尾を左右にぶんぶんと揺らし、遊んでいた。
どうやら、感覚とかまでしっかりしているみたいで、尻尾が生えるとこんな感じなんだ、とかがわかって、色々と楽しくなってきちゃった。
「下着が見えたらどうするんですか!? 姫様は自覚が足りません!! 俺だって一応男ですよ!?」
「見えてもアーリャだし大丈夫だよ。アーリャに押し倒されることはないだろうからね」
パンツを見ただけで、自分の地位を全て捨てるような真似するような人はいないだろうから。
アーリャなら押し倒されてもなんとかなるしね。
「そういう問題ではっ……」
「そんなに見たいの? アーリャったらこんな小さい子が好きな変態なの?」
そう言いながら、ドレスを両手でつかんで持ち上げ、笑みを浮かべる。
「俺からしたらそこまで年は変わらないじゃないですか!! ってそうじゃなくて、俺をからかうのやめてください!!」
そう、アーリャは”否定”をせずにいるのに気が付いていないんだろうな、と胸のうちで楽しみながらも手をドレスから放す。
「アーリャの反応がいいから悪いんだよー、とりあえず、満足したからいいや」
「はぁ……まったく、こんなところ誰かに見られたらどうするんですか……」
「この部屋に無断で入るのなんて、お父様か、お母様くらいだから大丈夫だよ」
そういうことじゃないんだよ、とでも言いたげな顔をしたままのアーリャを無視して、私はいつもの姿に戻る。
「ともかく、話を戻しますよ姫様、今回のを見た感じ、一部だけを変えることもできるって認識でよさそうですね」
「んーそうみたいだねー」
私はネコに顔を埋めながら、返事をする。
自分に生えるのもいいけど、やっぱこのもふもふは本物じゃないとねぇ……。
「ここまでくると、本当にその力がなんなのかわからなくなってきますよ……」
「なんなんだろうね?」
「俺に聞かないでください」
「そうだね、アーリャが知ってたらびっくりだよ」
そんな他愛もない会話を済ませ、今日のところはアーリャと別れ、私も床についた。
いろいろとわからないことが多かったときはちょっと大変だったけど、ここまで自分の意思でできるならむしろ楽しくなってきちゃった。
最近は退屈だったけど、こんな日が続いてくれて、とっても楽しい。
そういえば、明日はなんか、武術の練習を少し実践っぽくするって言ってたなぁ、私、実践なんてする必要あるのかなぁ。
なんにしろ、今日はもう疲れちゃった。――――おやすみなさい。
ネコ耳尻尾です。いちゃつかせたかっただけです。




