主人公、穴に落ちる
最初はちょっとした違和感だった。
何が変わったとか、何処が変とか、そういうのじゃなくて、本当に小さな、ともすれば見逃してしまいそうなほどに微かな違和感で。
気のせいか、そう思い、目の前の幼馴染に目を向ける。
「…?」
目の前の彼女が動かない。
まるで時でも止まってしまったかのように微動だにしない彼女に、どうしたのか?と声をかけようとした時、周りに変化が起きた。
「ちょっ、なに、これ、え?教室が伸びてって、あ!待って!」
彼女がどんどん離れていってしまう。
追いつかないと!訳もわからず、ひたすら彼女を追いかけようと手を伸ばし足を進めようとした。けれど、動かない。
「うう、なんで!どうして!」
必死に手を伸ばす。けれどその努力は無駄に終わってしまう。
離れていく彼女はそのまま小さくなっていき。
そして見えなくなってしまった。
立て続けに起こる常識の範疇を超えた出来事に目を回していると、突然背後から引っ張られる感覚がする。
いや、引っ張られるというより、"後ろに落下している"というのが正しいかもしれない。
――まずい。
直感的にそう判断し、何か、掴めるもの…と辺りに目を巡らせるが見つからない。
何も出来ないまま後ろに落ちて、落ちて、自分自身の体も教室同様引き伸ばされ、頭の中も何も考えられなくなっていく。
次第に”思考が思考でなくなり”、”記憶が記憶でなくなり”、”感情が別の何かに変わり”、そして最後に、意識が遠ざかっていく。
遠ざかる意識の中、先程消えてしまった彼女の最後を思い浮かべる。
向こうへ消えてしまうその時、確かに彼女も手を伸ばしていた。
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――星は流れた。
幾条もの光が幾重にも幾重にも重なり。
重なった光は無数に反射し、無限となり、やがて最後にある一点に収束する。
降り注いだ光はそれぞれ別の輝きを放ち、”意思を持つかのように”その主張を強めていく。
その光の正体は――
また、もう一度。
短くてすみません・・・これから少しずつ長くしていきます