心霊スポット巡り
旅行に行こう。そんな唐突な提案に友人は快く受けてくれた。
なぜ旅行に行く話になったのかは覚えていないが、とある県の心霊スポットをリストアップし、マッピングし、心霊スポットの場所と何か共通点や規則性がないか漠然と調査していたので、旅行はその地図を元に企画することとなった。
20箇所近くを2日で回る無茶なスケジュールだったが、車で友人と二人旅と言うのは初めてだったので、心が踊った。
今回はその旅行の中で、とある神社に訪れた時の話だ。
その神社は古くから達磨を祀っているという神社で、近年に殺人事件が有ったなどと、心霊スポットとして噂になるほどには有名なところであった。その神社にたどり着いたのは日が暮れ、もう懐中電灯を使わないと、歩けない程暗くなっている時分であった。
近くに街頭はなく、時折高速で車が走ってくるライトで周辺が見える。心霊スポットと言う割には暗いだけで、薄気味悪い印象は無かった。
私と友人は心霊スポットに恐怖や幽霊などの遭遇を求めているのではなく。噂という形で広がっている恐怖体験を過去の歴史と照らし合わせて感慨に浸るといった、肝試しとは違う目的で来ていたため、入ることには固執する事無く、その場の近くに行くことだけでも目的は果たされたようなものだった。
まず私は懐中電灯を持って、参拝が出来るか確認しに行った。だが鳥居の前から奥を照らしてもそこには闇が広がるだけで、とても入れるとは言いがたかった。
ここは無理そうだから、今度は昼間に来ようと友人に提案し、友人は自分も見てくると懐中電灯を携え鳥居まで進んでいった。
彼は鳥居前で一礼すると入ること無く、そのまま戻ってきて、次の場所まで行くプランを立てる事となった。
車を走らせ夕食ができる場所を捜し、ファミリーレストランに入り、一服。心霊スポットに肝試しとして行っていなくても、重い空気などが溜まると良くないので明るい場所で一息つけるのが旅行の鉄則としている。
「女が居たんだがお前は見たか?」
明るい空気の中、彼は先程の神社で目撃した事柄を話し始めた。
神社に入ろうと鳥居の前まで行った所、奥に女が立っていて、嫌な顔をしながら来るなと言っていたそうだ。
私が鳥居前まで行ったときにはそんなことはなかったので、私が行ったときと彼が行った時の差異をお互いに考察し合う。
結論としては、
私は神社に入れるか確認するために行ったので『神社に入ろうとしていなかった』
彼は神社に入ることを前提として進んで行ったので『神社に入ろうとしていた』
私が入ろうとしていたら彼女に会えたかもしれないが、入らないで欲しいと意志を示している所に無理やり行くのも気が引ける。
長いことあそこに居たから、入ろうとしているか見分けられる様になったのか、意志を読まれているのか、調査したいことは山ほどあるのだが、無粋な事はしたくないのであの神社にもう行くことは無いだろう。
心霊スポット巡りの別のエピソードはまた今度お話します。