表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽りの復活  作者: ペーパードライブ
6/10

盲点


「ここは、どこだ」


 ある男が起き上がる。そこは、暗いところであった。


「あれ、あなた」


 女も近くにいたようで、その男に話しかける。呼び方から察するに夫婦であるのだろうか。


「なぜ、僕はあの時死んだはずでは……」


 男は深刻な雰囲気を醸し出しつつ、疑問を呈していた。

「でも、いま私たちは生きているじゃない。過去はどうであれ、ならそれでいいじゃない」

「ああ……」


 女は嬉しそうに夫に話しかける。それを受けて、男も、うちに残る疑問を残しながらも、女に合わせ、その場ですぐに笑顔を作り出した。


「そういえばここ、何か変なにおいがすると思わない?」

「確かに、これは異常だな」


 男は、地面に手をついて、立ち上がろうとする。すると、彼の手のひらには、冷たいが、地面ではない、二区間の伝わる感触が伝わってきた。その感覚を引き起こすものを確認すべく、彼はゆっくりと、そこに視線を当てる。しかし、そこは暗い洞窟の中のようだ。シルエットが一部見えるだけで、招待まではつかむことはできない。


「とりあえず、ここから出よう。ここは、異常だ」

「そうね」


 男と女は一緒になってその場から動く。足には、さっき感じたような感覚が伝わってくる。しばらく歩くとすぐに扉を発見したので、それを押し、扉を開く。外からの光が洞窟内を照らし出し、彼ら二人の顔が明らかになる。


 その男と女の顔には、どこか見覚えがあった。そう、あれは、隆の朝食の時、食卓に座っていた……。男に至っては、至道と沢木たちの研究所内にあった写真に、若かりし頃の至道と一緒に映りこんでいた……。


「しかし、惜しい人材をなくしましたね。架谷さんなら、この先、人類に貢献してくれたでしょうに」


 沢木が写真を見ながら放った言葉。そう、その男と女は、架谷なのだ。至道が始末したはずの架谷。

 外の明かりによって、彼らは、洞窟内の凄惨な光景を目にする。


「なんだ、これは……」

「え……」


 そこには、無数の死体が転がっていた。それらは全員白衣を身にまとったまま絶命している。


「斎藤、三波、加江戸……。ここは、死体遺棄所といったところか、なんてむごいことを、こんなことをするのは、あいつをおいてほかにない!」


 女の方は目の前の光景を目にして、身を震わせながら、その場に座り込んでいた。その洞窟内に遺棄されていた死体は、すべて、体のどこかに拳銃を打ち込まれた形跡があった。そして、架谷夫妻の心臓付近にも銃で撃たれたかのような形跡として、白衣に穴が開き、そこを中心に、血が大量に付着していた。男の方は、死体の方へ駆け寄り、かつての仲間の死を悼んでいる。


「夕佳、この状況を見て、わかるな、僕たちは間違いなく一回殺されている。至道に。これは、夢でも幻想でもない、まぎれもない事実だ」

「え、そんなこと急に言われても……、そうだ、隆は……、隆がどこにもいないわ!」


 はっとしたように、男は目を見張る。しかし、それも一瞬のことで、すぐに、真剣なまなざしに戻り、床に訴えかける。


「そのことだけど、まだ希望はある」

「ほんと?」

「ああ、ぼくたちが生き返ったことが意味することは、ここにいるみんなが生き返っていないのは不可解だけど、僕たちだけは、まぎれもなく生き返っている」

「まさか?!」

「そのまさかだ。至道は、TBMを完成させ、使用した可能性が高い」


「とりあえず、ここから出よう」

「そうね、慎也さん」


 架谷慎也の言葉に同意の意を示す架谷夕佳。


「ここは、夢現の施設だ。しかし、わざわざ死体に見張りがついているとは考えにくい。しかし、おそらく、この施設は研究所からどれほど離れているかは知らないが、夢現の敷地内にあるはずだ。こんな、死体だらけの場所、見つかってしまえば、大ごとだからな。ここを抜けた後、監視カメラや、見張りがついている可能性は捨てきれない。慎重に行こう」


 慎也は、死体を踏んでしまわないように足元に神経を注いで歩く。夕佳の方は、まだ動揺から抜け出せていないらしく、うまく立ち上がることができていない。


「大丈夫か、立てるか」


 慎也は、夕佳の方に行き、しゃがんでから、夕佳の右腕を自分の肩に回す。そして、夕佳を支えるようにして、二人で立ち上がる。


「ありがとう……」


夕佳はぐったりとしたようなテンションで力なく足を動かし、前に進む。


「よいしょ」


 慎也たちは、扉の前にたどり着くと、慎也が、夕佳を支えたままの体勢で、左手を使って扉を押し開ける。

「とりあえずは外に出たぞ」


 外に出て、ゆっくりとしゃがみ、夕佳の右腕を自分の肩から外す慎也。そして、立ち上がり、開いたままの扉を引いて閉じる。


「あの部屋の外で長居するのは、彼らに見つかるリスクがあって危険だ。すぐこの場から動きたいんだけど、歩ける?」


 慎也は再び、先程の体勢を取ろうと、夕佳の前でしゃがんで、彼女の右腕を、自分の肩にかけようとする。


「大丈夫、もう、一人で歩けるから」


 夕佳は、慎也に向って、ほんの少し微笑んで、自力で立ち上がる。顔にはあまり血が通っていないようで、白っぽくなっており、立ち上がってからも、時折足元をふらつかせていた。


「やっぱり、だいじょうぶじゃないよ。ほら、つかまって」


 慎也は夕佳の右斜め前に立ち、自分の肩に手を腕をかけるように促す。しかし、夕佳は右手を開いた状態で胸の高さにあげ、「大丈夫だから」といい、それを断る。


「きつくなったら、いうんだよ」

 二人は、歩き出す。



「侵入者が現れたようです」

「なに?」


 至道が驚いたように身を乗り出して画面を見る。


「これは、架谷!? なぜ、確かに奴らは始末したはず。ということは」

「TBMですか」


 沢木が口を挟むように言った。


「そうだ、なぜかは知らんが原因はそれしかない」

「始末するのがよいかと」

「いや、待て、生け捕りにしよう。私に考えがある」

「分かりました。では、念のため、いったんTBMを解除して、部下を動員して、彼らを囲みましょう」

「そうだな、しかし、部下にTBMの存在がばれてしまう恐れがある。ここは、我々二人で

秘密裏にやつらを捕獲したいところだな」

「そうですね、しかし、我々は、体を動かすことに関しては素人ですからね。ここでの最悪の事態は、彼らを取り逃がしてしまうこと。TBMの存在を知っている者は、すべてこちら側に引き込んでおかなければ、命取りになるかもしれません」

「それもそうだな。では、即座にTBMを解除、その後、速やかに実動部隊を招集し、架谷を捕獲するよう指示」

「はい、では、TBM解除に急いで向かいましょう」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ