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5.帝国奪還大作戦

 女探偵、アマゾノ・ヒサエ……元は、某国で諜報員として働いていた彼女が、職を辞し、自らの祖国に帰ってきて開いたのが、アマゾノ探偵事務所である。『元諜報員』という触れ込みに挽かれて、ここには多くの依頼人が訪れる。今日も一組の男女がやって来た……

「キャロル社の社長、ウカイ・チヨタカの弱みを掴んで欲しい。」

 二人のうち、男の方……長身の外国人がそう言った。ヒサエは、口にくわえたタバコにライターで火を点け、フゥーと煙を吐くと詳しい事情を話すように言った。


 それより数日前のこと。突如鳴らされたチャイムの音に呼ばれて、ミホは玄関へと向った。そして、急かすように打ち鳴らされるドアを開くと、そこには、高そうなスーツを着込んだ男が立っていた。見覚えのない男である。

「コジマ・ミホ君だね?」

「えぇ、そうですけど……えっと、どちら様ですか?」

「これは失礼。私はキャロル社の社長をしている、ウカイと言う者です。今日は、ここの土地のことで話をしに来たんですよ。」

 ひょっとして、「この土地を売ってくれ」とか、そう言う話だろうか? ミホはそう考えると、首を横に振ってそれを断った。この家は確かに、ミホとブルボンしかいないが、彼女の思い出がつまった大切な家なのである。しかし、そんなミホの気持ちを嘲笑うかのように、ウカイと名乗るその男は話を続けた。

「いやいや、君は出て行かなきゃいけないんだよ。」

「へ……?」

 「妙な事を言うものだ」と、首を傾げるミホの前に、ウカイは数枚の紙を差し出した。小難しくて良く分からないが、どうやらこの土地に関するものらしい・・・

「これは、ここの土地の登記簿の写しだよ。ここを見てごらん……ここは、土地の所有者の名義を書く所だ。書いてある字が読めるかな?」

「キャロル社……って、何で? 確かお父さんが、私の名義に変更していったはずなのに……」

「何言ってるんだ? この登記移転は、うちの会社と君の代理人との間で正式に行われたものなんだ。知らない訳ないだろう?」

 ウカイがそう言ってニヤリと笑うと、後からもう一人の男が出てきた。その男は、持っていたカバンからまた一枚の紙を取り出して、それをミホに見せた。『委任状』と書いてあり、最後にミホの署名と印鑑が押してある。これまた小難しくて良く分からなかったが、どうやら、この見ず知らずの男に、ミホがこの土地に関する全権限を与えたことになっているらしい。

「そんな……こんなのに判を押した覚えはありません!」

「でも、その署名も印も本物だろう? だったらそれは正当な書類だよ。ってことで、しばらく猶予期間をあげるから、その間に出ていってね。」

 それだけ言うと、ウカイは表に停めてあった黒い高級車に乗り込み、砂埃を巻き上げながら行ってしまった。

 困ったことになってしまった……ミホは考えた。自分はあの書類に署名をし、押印しただろうか? しかし、いくら考えてもミホには覚えがなかった。とりあえず、一人で悩んでいてもらちが明かないことに気付き、ミホはブルボンに相談することにした。

「貴様、最近何かのアンケートとか、署名に答えた覚えは無いか?」

 開口一番、ブルボンはそう聞いてきた。すると、ミホはその数日前のことを思い出した。そう言えば、『恵まれない子供達への支援に関する署名』というものに、サインをし、印鑑も押した……

「馬鹿め、それは罠だ。おそらく、署名欄に細工がしてあったのだろう。」

「詳しいですね……」

「昔、同じ手口で土地を奪ったことがある。」

「それって、人としてどうなんですか?」

「やかましい! まったく、神聖なる帝国領地を何だと思っているんだ……」

 とにかく、権利が向こうにある以上、二人は出ていくほかない。ブルボンは、なんとかウカイに登記の名義を戻させねばと、あれこれ方策を考えた……


「で、私にウカイの弱みを調べさせ、それをネタに彼を脅して、登記を戻させようって訳ね?」

 二人の話を聞き終えると、ヒサエはまたタバコの煙を吐いて言った。向い側のソファーでは、ブルボンが踏ん反り返っている。

「そう言うことだ。分かったら、さっさと行け!」

「ちょっと陛下、もう少し、頼む立場としてあるべき態度を取りましょうよ……」

 ミホは、ちゃんとするようブルボンに言った。しかし、ブルボンはまったく態度を改めようとしない。そんな様子を見て、溜息をつきつつ、ヒサエは灰皿にタバコの先をぐりぐりと押し当てた。

「別に良いよ……私は、金だけ貰えればそれで良いからね。」

「それじゃあ、引き受けてくれるんですか?」

「あぁ、一週間後にまた来な。それまでには、何かしら掴んでやるよ。」

 そう言って、ヒサエは二本目のタバコに火をつけた……


 それから一週間後、二人は再びアマゾノ探偵事務所を訪れた。部屋に入ると、先にソファーに座りタバコを吸っているヒサエと、そして、テーブルに置かれたレコーダーが目に入った。何か掴めたのだろうか? 期待と不安が入り混じる中、二人がソファーに腰掛けると、ヒサエは黙ってレコーダーの再生ボタンを押した。

『社長、お母様からお電話です。』

『マ……おふくろから? 分かった。私的な話になると思うから、少し席を外してもらえるかな?』

『かしこまりました。』

 聞こえてきたのは、これといって変わったことのない、社長と秘書の普通の会話。これは、ヒサエがキャロル社の社長室に忍び込んで録音してきたものだ。息を呑んで、ミホとブルボンは聞こえてくる音声に耳を傾ける。すると、それからは予想だにしなかった言葉が聞こえてきた。

『あ、ママ? うん、僕ちゃんと働いてるよ……え? うん、仕事も順調だよ。今度ね、ホテルを建てるんだ。建てたらママをスイートルームに泊めてあげるね。うん……じゃあねママ、バイバ〜イ。』

 ガチャッと電話を切る音……それが聞こえたのと同時に、ヒサエは停止ボタンを押した。どうもウカイという男は、大のマザコンらしい。

「他にも録音はしたけど、弱みと言えそうなのはこれぐらいだったよ。」

「フン、十分だ……しかし……」

 レコーダーを手に、ニヤリと笑いつつ、ブルボンはヒサエの目を見て続けた。

「貴様には、もう一つ仕事を頼みたい。」

「なんだい?」

 ヒサエに、もう一つの依頼を伝えると、ブルボンとミホは事務所を後にした。


 その三日後、ミホとブルボンはキャロル社の社長室にいた。二人と、そしてウカイの目の前には例のレコーダーが置かれ、社長室での一部始終の音声を流している。レコーダーについた、デジタルパネルの再生時間表示が進むにつれ、ウカイの顔色は悪くなっていく。そして問題の部分が終わると、ブルボンはレコーダーの停止ボタンを押した。

「マザコンの分際で、我が帝国の領土を侵害しようとは、ふざけおって……」

「このことをバラされたくなかったら、私達に土地の権利を返してください!」

 ミホとブルボンはウカイに詰め寄った。冷汗を一杯にかいて、うつむいたままのウカイ……しかし、彼は突然顔を上げると、ニヤリと笑った。

「バラす? ハハッ……バラせば良いさ! 別にマザコンがバレたくらいじゃ、何とも思わないさ! 何を言われても、ママが守ってくれるからね……それで、他に言うことは? ご用件が無いようでしたら、お引取りいただけますか? 何しろ、僕は忙しい身でね……」

 開き直り、勝ち誇ったようにそう言い放つと、ウカイは椅子にドッカリと腰掛けて二人の顔を見た。しかし、ウカイの予想に反して、二人はまだニヤニヤと笑っていた。「何だ?」と不審に思い、目をキョロキョロと泳がせるウカイ。それを尻目に、ブルボンがパチンと指を鳴らすと、社長室の扉が開かれ、そこからヒサエと、もう一人の女性が入ってきた。

「ま、ママ!」

「チヨちゃん! この人達に土地の権利を返して上げなさい!」

 そう、それはウカイの母であった。守ってくれるはずのママがミホ達の味方をしている……目の前の光景に、ウカイは完全に動揺してしまった。

「でもママ、こいつらの土地を手に入れたら、そこにホテルが建つんだよ? ママをスイートに泊めてあげるんだよ?」

「人様に迷惑をかけてまですることじゃありません!」

「だって……」

「もう! 悪い子はお尻ペンペンですよ!」

「分かったよ! 返す、返すよ! だからペンペンしないでぇ……」

 右手を振りかぶるママに怯え、椅子から転げ落ちたウカイ。どうやら一件落着らしい……ミホは、安堵と疲れの大きな溜息をついた。それと同時に、「もう、迂闊な署名と押印はやめよう」と、心に誓うのであった。すると、そんなミホの所にヒサエが笑いながらやって来た。

「お疲れ。なんとか土地が取り戻せて良かったね。」

「ははは……ヒサエさんのおかげです。」

「なに、私は金のためにやっただけだよ……ってことでコレ、今回の報酬の請求書だから。月末までに、私の口座に振り込んでおいてね。」

 ミホの前に差し出された請求書。しかし、それを見てミホの顔は凍りついた。とてもミホに払える額ではない。しかし、元々「探偵に頼もう」と言い出したのはブルボンである。ブルボンが、ちゃんとお金を用意しているのかもしれない……そう思って、ミホはブルボンに請求書を渡した。しかし、それを受け取って見たブルボンも、同じく顔が凍りついてしまった。

「ミホが払うんだろ?」

「探偵に頼もうって言ったの、陛下じゃないですか!」

「まさか……払えないってんじゃないだろうね?」

 突然のどす黒い声に二人が振り返ると、そこにはタバコ三本を同時に吸いながら、額に血管を浮き立たせるヒサエがいた。ヒサエは二人の顔をジロジロと見比べると、全ての事情を察し、ギュッとタバコのフィルターを噛み締めて怒りを露にした。そして、「そう言うことならば」と、クルッと体を反転させ、今度は、母親にお説教されているウカイの方を見た。

「ちょいと、あんちゃん! 悪いけど、登記の名義は私に変更してちょうだい。」

「そ、そんな!」

 すがりつくミホとブルボン。しかし、ヒサエはそんな二人をギロリとにらみつけると、タバコの煙を吹きかけた。

「あぁ? 金払ったら戻してやるよ……払わなかったら、売っ払っちまうからね!」


 ブルボン帝国の領土が二人の手元に戻るのは、まだまだ先の話である……



続く




ってことで第5話でした

登記・・・

難しい言葉ですが土地の権利だと思って下さい。

ちょっと違いますけど・・・・・・それで十分です。

何だか難しいこと言ってやがんなー

ぐらいに思っていただければ結構です。


話は変わりますが皆さんのお腹まわりはどうですか?

私は正月ずっとごろごろしていたので

贅肉だらけになりました^^;

ビューティフル・マイ・ボディ!

カム・バ〜ック!


運動しよ・・・・・・本当に・・・


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